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第1話 - あ

2023年12月06日

#恋愛

結城　真矢

アヤネ

お姉ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど...

シオリ

私が許せる範囲のお願いなら聞いてあげるけど

アヤネ

許せる範囲なのかは分からないけど...

アヤネ

あのさ、今日彼と家に行くかもしれないから、私の部屋片づけてほしいんだよね

シオリ

は！？何で私があんたの部屋を片付けないといけないの！？

シオリ

召し使いじゃないんだけど！

シオリ

自分が何言ってんのか、分かってんの？

アヤネ

分かってるよ

アヤネ

でも、今日は大学でグループ発表の準備があって抜けられないし...

アヤネ

お姉ちゃんに頼むしかないな、って思ったの

シオリ

あんたさ、いい加減にしなさいよ

シオリ

っていうか、普段から綺麗にしてればいい話じゃないの？

シオリ

なんでそんなにすぐに散らかるのか...意味わかんないんだけど

シオリ

どんな生活したら、そんな風になるわけ？

アヤネ

いや、どんな、って...

アヤネ

普通の生活してるだけなんだけど

シオリ

普通のレベルが違うんじゃないの？

シオリ

この前の金曜日なんて、ひどかったじゃん

アヤネ

あれはさ...しょうがなかったんだよ

アヤネ

サークルの飲み会で帰ってきたら、思った以上に回ってて...

シオリ

それで、廊下に食べてきたもの、吐いた、ってわけ？

アヤネ

本当に、それはごめん...

アヤネ

申し訳ない、って思ってるよ

シオリ

本当に思ってる？

シオリ

私が掃除するのに、どんだけかかったの思ってんの！？

アヤネ

迷惑かけたことは本当に申し訳ないと思ってるよ

アヤネ

私も、あそこまでなるなんて...考えてなかったからさ

シオリ

お酒弱いことは、シオリも分かってんでしょ

シオリ

自分で飲む量は制御できるようになってよ

アヤネ

制御できるようになったら、苦労しないって

アヤネ

ほら、その場のノリで飲んじゃうこともあるでしょ？

シオリ

そういうのを無くして、って言ってるんじゃん

シオリ

ノリとか理由にされちゃ困る

アヤネ

でも、自分だけ断ったらすぐにその場の雰囲気とか、ムードとか悪くなるじゃん

シオリ

そんなの、どうでもいいでしょ？

シオリ

もう大学2年生なんだし、ハメ外しすぎるのもほどほどにしなさいよ

アヤネ

少しくらいハメ外して楽しめるのが、大学生の特権じゃん

アヤネ

今を楽しまないで、いつ楽しむの？

シオリ

あのさ、自分だけが嫌な思いするだけならいいけど、そうじゃないでしょ？

シオリ

一緒に住んでる私がどれだけ迷惑してるか、あんた分かってる？

アヤネ

ほんと、口うるさいんだから

アヤネ

そんなんだから、友達も少ないんだよ

シオリ

別に、友達の数が多くなくたっていいもん

シオリ

信頼できる友達が数人いれば、私には十分なの

アヤネ

なんか、悲しいねー

アヤネ

そんなの、ただの強がりでしかないくせに

シオリ

とにかく！これからは自分の部屋の片づけくらいは自分でして！

シオリ

今回は許すけど、次はないんだからね

~3日後～

シオリ

アヤネ、あんた、あがった洗濯物いつまで放置しとくの？

アヤネ

あ～

アヤネ

持って行こうと思ってるんだけどね

アヤネ

なかなか、手が空いてる時がないんだよね

シオリ

手が空いてる時、って...

シオリ

昨日は家にいたじゃん

シオリ

なんでその時に持って行かなかったの？

アヤネ

そういう手が空いてる、って意味じゃなくてね

アヤネ

両手に荷物がなくて、持てないってこと

シオリ

は？バカじゃないの？

シオリ

別に、そんなに広い家じゃないんだから、

シオリ

またリビングに戻ってくればいいだけの話でしょ？

アヤネ

いやーそれは毎回思うことなんだけど...

アヤネ

一回部屋に行ったら、ベッドに入りたくなるじゃん？

アヤネ

それで、ベッドに寝転がったらしばらくは起き上がりたくないじゃん

シオリ

そんなの、あんたの都合でしょ？

シオリ

私にそんな理由で家事を押し付けないでよ！

アヤネ

押し付けてるわけじゃないじゃん

アヤネ

私だって、やれる限りはやってるつもりだよ？

シオリ

やってるつもりでしょ？

シオリ

全然足りないし、ほとんど私がやってるじゃん

シオリ

それ、分かってる？

アヤネ

ほんと、お姉ちゃんにはいつも感謝してるし、申し訳ないとは思ってるよ

シオリ

思ってんの？ほんとに？

アヤネ

ほんとだってば

アヤネ

この前、部屋の掃除頼んだ時も、すごいきれいになってたし

アヤネ

さすが、きれい好きのお姉ちゃんだよ！

シオリ

あんた、調子に乗るのもいい加減にしといてよ

シオリ

もう、あんなお願いは一生聞かないんだからね

アヤネ

分かってる、って

アヤネ

っていうか、それこの前も聞いたことだから

シオリ

分かってないだろうな、って思ったから念押しで言ったんじゃん

アヤネ

私のこと、そんなに信用してないの？

シオリ

してないよ

シオリ

昨日の夜に言っておいたリビングに脱ぎっぱなしにしてある靴下も、そのままだったじゃん

シオリ

そんな奴のこと、誰が信用できると思うの？

アヤネ

あれ？私、靴下そのままにしてたっけ？

アヤネ

記憶にないな～

シオリ

それ、口癖になってるよね

シオリ

「記憶にないそんなこと言ってたっけ？って...」

シオリ

そうやってしらばっくれて、何でも私に押し付けようとしてくるんでしょ

アヤネ

そんなんじゃないよ

アヤネ

私も、本当は家事とかやろうと思ってるの

アヤネ

でも、タイミングが悪かったり、

アヤネ

気づいたらお姉ちゃんがやってたりするから...

アヤネ

だから、しょうがないでしょ？

シオリ

何でも、しょうがないで片づけないで

シオリ

だから、私はいやだぅたんだよ

シオリ

アヤネと同棲だなんて

アヤネ

そんなこと、今更言ったってしょうがないじゃん

アヤネ

家賃節約になるし、それがお姉ちゃんにとってメリットでしょ？

シオリ

最初はそうやって思ってたけど、1人で暮らしてた時の方がよっぽどラクだった！

シオリ

今までやってた歌詞にプラスして、アヤノの世話係もしないといけないんだもん

アヤネ

そんな、世話係なんて...

アヤネ

私、そんなにお姉ちゃんに世話妬いてもらってる？

シオリ

私は十分、アヤノの世話妬いてると思うんだけど

シオリ

あんた、自覚ないの？

アヤネ

あのさ、料理とか作ってくれてるのはありがたいけど、

アヤネ

そんなの自己満足でしょ？

シオリ

なんでそうなんの？

アヤネ

だって、ご飯は作ってあるから食べるだけで、

アヤネ

私だって自分で作ろうと思えばつくれるもん

アヤネ

だから、勝手に自分1人で自分だけが損してる、みたいな言い方しないでよ

シオリ

そんな風にいうなんて、思ってなかった...

シオリ

マジで、呆れたわ

アヤネ

それはこっちのセリフ～

アヤネ

お姉ちゃんにそんなに見下されるほど、私ダメじゃないけど

シオリ

ダメなのかどうかは...私が決めることでしょ

シオリ

あと、今週の土曜日私の友達読んで一緒にご飯食べる予定だから、

シオリ

その時までには自分のものとか、リビングに置いとかないでよ

シオリ

いいね？

アヤネ

はいはいー分かったよ

シオリ

本当に分かってんの？

シオリ

これで片付いてなかったら、私部屋に入るからね

～日曜日の朝～

アヤネ

ねえ、お姉ちゃん！

シオリ

何？どうしたの？

アヤネ

お姉ちゃん、まさか私の部屋にあった私のお気に入りのアクセサリー...

アヤネ

捨てちゃったの？

シオリ

え？あのハート柄のクリップのこと？

アヤネ

そう、それ！

シオリ

あれはこの前アヤネに掃除を頼まれたときに捨てたんだよ

アヤネ

は！？何で勝手に捨てんの？

シオリ

だって、私が見つけた時にすでに踏んずけられて割れてたよ

アヤネ

え？割れてた？

シオリ

この前、アヤネの彼氏が来るから、って言われて掃除を押し付けられたときのこと

シオリ

まさか、あんなに足の踏み場がないほど散らかってるなんて、思ってなくてさ

シオリ

想像以上の汚さで、びっくりしちゃった

アヤネ

あっ、

アヤネ

そういえば少し前に、何か毛布の上から踏んじゃった、って思ったんだよね

アヤネ

もしかしてあれだったのかな？

シオリ

そうなんじゃない？

シオリ

気づかなかったなんて、よっぽどだね

シオリ

脚の神経まで鈍くなってんの？

アヤネ

そんなんじゃないって！

アヤネ

あの時は、バイトで急いでたからそんな確認してる暇なんてなかったの

シオリ

あっそ

シオリ

まあ、部屋が汚いと大事なものも壊しちゃう、って学んだでしょ？

シオリ

そんなんだから、大事なアイポッドもトイレに流しちゃうんだって

アヤネ

え？

アヤネ

お姉ちゃん、今なんて言った？

シオリ

え？だから...

シオリ

お酒飲んで酔いつぶれたら意識はっきりしないのは分かってるのに、

シオリ

たくさん飲んだせいで酔いつぶれたから、

シオリ

アイポッドが耳から落ちでも瞬時に反応できなかったんでしょ

アヤネ

え...

アヤネ

今朝、起きた時にアイポッドもないな、って思ってたら

アヤネ

え？トイレに落ちた、ってどういうこと？

シオリ

あれ？それも覚えてないの？

シオリ

昨日、アヤネが酔っぱらってトイレに行った時に、

シオリ

アヤネの大きな声が聞こえたから、トイレまで行ってみたら...

シオリ

うっかりイヤホンを水の中に落としちゃった、って...

シオリ

トイレで大声で泣いてたじゃん

シオリ

私、びっくりして何事かと思ったよ

アヤネ

え...そんな...

アヤネ

あれ、すごい高かったのに！

アヤネ

どうしよう！

シオリ

どうしよう、って言われてもそんなの知らないよ

シオリ

っていうか、昨日何杯飲んできたの？

シオリ

相当酔ってたと思うんだけど

アヤネ

え...それも覚えてない...

シオリ

ほんとに...情けないな

シオリ

そんな情けないアヤネを今日1日家に残しとくのは心配だけど、

シオリ

私今日は夜、ご飯いらないから

シオリ

自分で作るか、外で食べるかしてきてね

アヤネ

えっ？お姉ちゃんが？

アヤネ

なんで？

シオリ

今日はデートだから、ご飯いらないの

アヤネ

デート！？

アヤネ

えっ？お姉ちゃん彼氏なんかいたの？

アヤネ

何年付き合ってんの！？

シオリ

えーと、大学１年生の秋からだから...

シオリ

もう２年くらいになるのかな

アヤネ

お姉ちゃんに彼氏なんて...全然知らなかった

アヤネ

そんな彼氏いるなんて、何にも言わなかったじゃん

シオリ

だって、聞かれなかったし

アヤネ

でも、全然そんなデート行く雰囲気出したことなかったじゃん

シオリ

だいたいアヤネが朝からバイトある日に、私があとで出かけたり、

シオリ

あとはアヤネが11時くらいまで寝てて、私が後から出かける時が多いから

アヤネ

え～うそ...

アヤネ

私もまだ彼氏なんてできたことないのに...

アヤネ

すごい、ショック...

シオリ

あのさ、彼氏欲しいならまず中身をちゃんとしたほうがいいんじゃない？

アヤネ

外ではちゃんとしてるよ！

アヤネ

髪もちゃんと巻いて、メイクだってしてるんだから

シオリ

そうだとしても、家でだらしないと外でそれが急に出たりするんだよ

シオリ

例えば、汚い鞄の中身見られたり...

シオリ

メイクの直しする時に、洗ってないメイク道具の中身が見られたり...

シオリ

そういうこと、今までにもあったんじゃないの？

アヤネ

う...それを言われると、なかったとは言えない...

シオリ

ほら、やっぱり

シオリ

きっと、みんなそういうところを見てアヤネが女子として終わってるやつ、

シオリ

って思ってきたんじゃない？

アヤネ

私、そんな風に思われたくない...！

シオリ

じゃあ、今からでもちゃんと女子力磨くために、しっかり家事から手伝って

アヤネ

え？家事？

シオリ

そっ

シオリ

じゃあ、早起きの習慣をつけるのもかねて、朝の洗濯ものと洗い物、

シオリ

そこはマストで、明日からよろしくね

アヤネ

え！？そんないきなり...きついよ

シオリ

期限決めてすぐにやらないと、いつまでたってもやらないでしょ？

シオリ

よろしくね！

～後日談～

シオリ

アヤネは少しずつ、早起きできるようになり、私が課した家事をこなしてくれました

シオリ

先日の飲み会で何かやらかしたのか、その後アヤネは全然飲み会に誘われていないようです

シオリ

少し、外で飲むことを自粛し、内面から磨く努力をしよう、と反省したようでした

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結城　真矢

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