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3人
公園に、爽やかで明るい歌声が響く。 まだ日差しが柔らかい午前中、施設内にある 小さな公園には、 わずかだけれど熱心なファンが 集まっていた。 桃・赤・黄__3C(スリーカラーズ)と呼ばれる 新人アイドルの3人は、もうすぐ開催される 新人ライブに向けて、 日々ファンを増やすためのミニライブを 行っていた。
黄
歌い終わったあと黄が笑顔で手を振ると、 ファン達は嬉しそうに拍手をした。
赤
赤が満足そうに言った。
黄
黄が、前にも来てくれたファンの1人を指さした。
桃
桃はにこっと笑うと、そのファンの子に向かって お礼を言いに駆け出した。 そんな真っ直ぐで素直なところが、 桃の一番の魅力だった。 _____そんな時だった。
_視線。 何かに、見られている。 そう感じた瞬間、桃はふと木陰のほうを見た。 木々の隙間に、誰かの姿がある。 影に溶けるように立っていたその人物は、瞬きもせずに、じっとこちらを見ていた。
桃
不思議な存在感。 白く透き通るような肌、整った顔立ち。 けれど、どこか人間らしさを感じない。 冷たく、感情の読めないその瞳に、 桃は思わず息を呑んだ。 ライブが終わり、少しの拍手と共に空気が緩んだその瞬間、桃は小さく言った。
桃
赤
赤が驚いた顔をする。
黄
桃
桃は笑って誤魔化しながら、 木陰のほうへと足を向けた。 ____そこに、いた。
さっきと変わらず、 影の中で立ち尽くしているその子。 桃が近づいても、一歩も動かない。 表情も、変わらない。
青
桃
沈黙。 少しの間を置いて、ようやく、彼は口を開いた。
青
かすかな声。 機械のような、でもどこか柔らかい声だった。 そして次に発せられた言葉は、 桃の胸を少しだけざわつかせた。
青
桃
桃が言葉を返す前に、 ふっとその子は背を向けて歩き出した。 振り返らず、声もなく、 そのまま姿を消していく。
桃
名前も、何も聞けなかった。 けれど、その子の目に映っていた“何か”が、 どうしても忘れられない。
桃
桃が戻ると、赤と黄が心配そうに近づいてきた。
赤
桃
桃は、少し考え込むように言う。
桃
黄
桃は空を見上げて、そっと呟いた。
桃