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誘拐

第1話 - 誘拐

2018年11月19日

#ホラー

しおり

愛

いる？大変なの
返事して

愛

お願いお願いお願いお願い

蘭

いるよ。何かあった？大丈夫？

愛

大丈夫じゃない。本当に困ってるの

蘭

なんで？いまどこ？

愛

わからない。誘拐されたみたいなの。

蘭

えっ！？

蘭

警察に連絡しなきゃ。

愛

したわ。でも応答がないの

蘭

そんなのおかしいって。警察を呼び続けなきゃ

愛

ここがどこかわからないの

蘭

今から愛に電話する

愛

絶対ダメ！！！！

愛

音をたてられない。人の気配がするし、変な音も。すごく怖い

蘭

怪我は？

愛

頭に血がついていて、ベタベタしてる。でも大丈夫

愛

怖いんだからね

蘭

私が警察に電話する。その場所を教えて

愛

わからないの。ここで目覚めたから

蘭

そこへはどうやってだどりついたの？

愛

わからない。殴られた

蘭

誰に？

愛

わからない。

蘭

愛が最後に覚えていることは？

愛

運転。

蘭

どこかで停車した？

愛

覚えてない。誰かが叫んでいたのは覚えてる。

蘭

車の事故？

愛

蘭、本当にわからないんだって...

蘭

脳震盪かも

愛

そんなのわかりっこないよ

蘭

わかんないけど

愛

あ！！！誰かの叫び声が聞こえる。おねがい助けて！

蘭

どこなところにいるのか説明して。

愛

地下みたい。壁はむき出し、化学物質のにおいがする

蘭

窓は？

愛

ないわ

蘭

科学工場かもしれない。一番近い工場が町外れにある。

愛

私、ここで死ぬのよね？

蘭

死なない。そんなこと言わないで！

愛

誰か来る！

蘭

隠れられる？

蘭

愛？無事？

蘭

警察に電話しなきゃ

愛

蘭

何があった？

愛

走らないといけなかったの。もう大丈夫。何かが追ってきたけど見えなかった。ただ聞こえただけ

蘭

いまどこ？

愛

わからない。ここの壁は石みたいにざらざら。それで地獄みたいに暑いの。

蘭

タンクはない？樽は？そこにロゴのようなものはついてない？

愛

ないわ

蘭

警察に電話したけど愛の居場所がわからないと派遣できないって。何か手がかりになるものは？

愛

ここはさっきよりも暗い。化学物質のにおいももっときついの。腐った卵みたいで吐きそう

愛

下の方から叫び声が聞こえるわ

蘭

地下二階があるに違いない。階段は？

愛

見えないけど、見てみる

蘭

気をつけて

愛

うわっすごい数の叫び声！ここってなんなの？本当に怖い

蘭

大丈夫だから

愛

何か、ガタガタいってる。音がだんだん大きくなってきた。足元がぐらぐらしてる

蘭

窯とかないの？

愛

ないけど、どんどん熱くなってる

蘭

抜け出す方法を探さなきゃ

蘭

でも気をつけて

愛

昨日はごめんね

蘭

今、そんなことはいいよ

愛

話があるの

蘭

脱出する方法を探さなきゃ

愛

私、死んじゃうなら説明したいの

蘭

やめて。愛は死なない

愛

昨日、蘭に話したいことがあったけど怖くなって

蘭

私が？

愛

ううん。自分に

蘭

そんな話はあとでいいから。逃げる方法を探してっ！！！

愛

ずっと蘭に友達になってほしかった。本当に

蘭

私だって。

愛

でも蘭には近づきすぎてほしくなかった

蘭

なんの話？

愛

私、いい人間じゃないから

蘭

それは違うでしょ。愛はいい子だよ

愛

私のことを知らないからだよ

蘭

お願いだからやめて、いまどこにいるのか把握しなきゃ

愛

私、前の学校でひどいことをしたの。とても話せないようなことを。

蘭

なら言わなくていい

愛

私、昔何人かの女の子と花音っていう子をいじめていたの。彼女は友達もなく、家も貧乏で。なにもできない子だった。ある日、私たちは彼女をロッカーに閉じ込め、火災警報器を鳴らしたの。泣き叫ぶ彼女が発見されたのはその１時間後だった。

蘭

バカないたずらだよ。愛だけがしていることではないでしょ

愛

実は彼女、閉所恐怖症だったの。ロッカーからでたとき、彼女の手はズタズタにきれて、なんとかロッカーから出ようとひっかいたところからは血が流れてた。でも本当にダメージを受けたのは心だった

蘭

本当に気の毒な話だね。ひどい話だけど彼女を殺したってわけじゃない。

愛

でも彼女、自殺したの。２週間後に。ロッカールームで首をつって

蘭

自分を責めちゃいけない。彼女が自殺するなんてわからなかったんだから。

愛

もう予想できた。わかってた

愛

私のせい。私が花音を殺したの

蘭

愛は殺してない

愛

一番悲しいのはね、私たちが子供の頃は親友だったってこと。リカちゃん人形とかで遊んだりしたのに、私は花音を殺してしまった

蘭

愛は殺してない

愛

今自分の身に何が起こってるのかわからないけど、多分その報いなのね

蘭

愛、やめて。あなたは罰を受けてなんかいない。

蘭

私も両親に転校させられたけど、愛は初日から私によくしてくれた。何があったのか話したいけど愛は怖がるだろうし、私を嫌う

愛

蘭を嫌うなんてありえない

蘭

その事で私は地獄に落ちるんだ

愛

やめて、お願いだから。蘭は地獄になんて落ちないわ

愛

とにかく蘭には話せてよかった

蘭

私が愛を探しに行くから、いいよね？

愛

無理だと思うわ

愛

もうここがどこだかわかった気がする

蘭

え？

蘭

ニュースに愛の写真が。

蘭

愛は自動車事故にあったんだ

蘭

そんな...

愛

神様、これは現実じゃないといってください

蘭

ニュースで愛は死亡したって

愛

蘭、お願い。ああ、もう、ここは火に包まれているみたい！

愛

蘭！？助けて！

蘭

愛！何があったの！？

愛

そんな、もう！！とても熱い、痛いわ！！

愛

お願い、蘭、助けて！あの子がやってくる！！！

蘭

誰がやって来るの！？

愛

花音！

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