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第1話 - あ

2023年09月29日

#恋愛

結城　真矢

シズカ

タクヤ、今月は帰ってこないんだっけ？

シズカ

いつもなら、月末に実家に来てくれていたけど…。

タクヤ

シズカ、いつも子育てをまかせっきりでゴメンな。

タクヤ

今月は、そっちに帰るのはむずかしいかもしれない。

タクヤ

色々と仕事が立て込んでてさ…。

シズカ

そう。こっちは特に問題ないわ。

シズカ

モモカも、ウチの父や母に可愛がられてるから、ご機嫌なの。

シズカ

地元の友達と、ママ友付き合いもしているしね。

シズカ

子育ての先輩がたくさんいるから、今のところは大丈夫よ。

タクヤ

そうか。それなら安心だ。

タクヤ

いつもありがとう。

シズカ

いいのよ、なにも気にしなくて。

シズカ

ところで、今度はいつ帰ってくる？

タクヤ

来月の半ばころには、単身赴任先から帰るよ。

シズカ

そう。

シズカ

じゃあ、帰る時はかならず連絡をちょうだいね。

シズカ

私も、色々と予定があるから。

タクヤ

ああ、わかった。

シズカ

急に言われると予定が狂っちゃうことがあるからね。

シズカ

それじゃ、またね。

シズカ

お仕事頑張って。

タクヤ

うん。分かったよ。

～1か月後～

タクヤ

シズカ、ちょっと話があるんだ。

シズカ

なに？いま忙しいんだけど。

シズカ

やっとモモカが寝たから、爪の手入れでもしようと思ってたのに。

タクヤ

それは悪かった。

タクヤ

実は俺の知り合いから聞いた話なんだが。

タクヤ

最近、俺の会社の後輩のゴロウと仲が良いらしいな。

タクヤ

アイツも半年前に結婚したばかりなんだが。

タクヤ

地元のショッピングセンターで一緒に歩いている姿を、

タクヤ

何度も見かけたそうだ。

シズカ

え？なんのこと？

シズカ

私、なにも知らないよ。

タクヤ

本当に心当たりがないのか？

タクヤ

じゃあ、この写真はなんだ。

タクヤ

～画像送信～

タクヤ

シズカとゴロウが一緒に歩いているようにしか見えないんだけど。

タクヤ

しかも、ココをゴロウに抱っこさせてるよな。

タクヤ

まるでゴロウが、ココのパパみたいじゃないか！

シズカ

やだ、これは誤解よ！

タクヤ

え、誤解？

タクヤ

どういう意味？

シズカ

だって、1人で買い物に行くのって大変なんだもの。

シズカ

たまたま、ゴロウさんが休日なんの予定もないっていうから、

シズカ

ちょっとお願いして、車を出してもらったの。

シズカ

私、ペーパードライバーでしょ。

タクヤ

ああ、そうだね。

シズカ

自分で運転するのは怖いって言ったら、

シズカ

ゴロウさんが「じゃあ僕が車を出しますよって言ってくれたの。」

タクヤ

だからってゴロウに休日つき合わせることもないだろう。

タクヤ

向こうは新婚なんだぞ。

タクヤ

車を出してもらいたいのなら、お義父さんかお義母さんに頼めばいい話じゃないか？

タクヤ

しかもココの面倒まで見てもらってさ。

タクヤ

俺も気分が悪いよ。

シズカ

ごめんねぇ、タクヤが単身赴任中だから、つい心細くってさ。

シズカ

誰かを頼りたくなっちゃったんだよね。

シズカ

だって、パパは多いほうが便利でしょ！

タクヤ

はあ？なんだそりゃ。

タクヤ

ココのパパは俺一人で十分だろう。

シズカ

そうは言っても、あなた当分は単身赴任が続くじゃない。

シズカ

それまで私、ずっと1人で子育てしていろっていうの？

タクヤ

だから、そうなると君が困るだろうから

タクヤ

俺の赴任先について来てほしいって言ったのに…。

シズカ

誰も知り合いがいない土地なんて、余計に不安よ。

シズカ

それなら実家で、両親と一緒に暮らしながら子育てしたほうが良いわ。

タクヤ

親が頼れるなら、よその男を頼る必要は無いだろう？

タクヤ

ちょっと常識がズレてるよ、シズカ。

シズカ

家のことは私に任せっきりのタクヤに言われたくないわよ！

シズカ

そうやって常識をもちだせば、私が黙ると思ってたんでしょ。

シズカ

一緒に働いている時から、そうやってすぐ私を見下してきたんだわ。

タクヤ

いや、見下してるつもりはないよ。

タクヤ

キツイ言いかたをして悪かった。

タクヤ

でもヘンな誤解を招くといけないから、ゴロウを頼るのはやめてくれ。

タクヤ

シズカも、悪い噂が広がったら困るだろう。

シズカ

わかったわ。

シズカ

今度から慎みます。

タクヤ

そんなに怒らないでくれよ。

タクヤ

わかってくれたならいいんだ。

タクヤ

俺は君を信じてる。

シズカ

はいはい。

シズカ

それじゃ、また来月ね。

タクヤ

ああ…。

～翌月～

タクヤ

シズカ、急だけどオレ明日帰るよ。

タクヤ

有給がとれたから。

シズカ

え？なんでそんな急に休むの。

シズカ

こっちにも都合があるんだから、急に帰ってこられても困るんだけど。

シズカ

明日も予定があるし…。

タクヤ

俺もそっちに着くのは夕方だから、昼間は別にいなくても大丈夫だよ。

タクヤ

でもずいぶん慌てているようだけど、

タクヤ

俺が帰るとマズイことでもあるのか？

シズカ

え、なにも無いわよ！

シズカ

このあいだから、私のコトを疑ってばっかりね。

シズカ

信じてくれてるんじゃなかったの？

タクヤ

ああ、信じてるよ。

タクヤ

もうゴロウとは会ってないはずだよな。

タクヤ

シズカとゴロウがホテルに入っていく写真も見せられたんだけど、

タクヤ

ぜんぶ、俺の誤解だよな！

シズカ

え、え？何のこと？

シズカ

私がゴロウさんとホテルに…って。

シズカ

どこからそんな写真が出てきたの！

タクヤ

写真の出どころは言えない。

タクヤ

でも、この画像を見ても、知らないって言えるのか？

タクヤ

～画像送信～

シズカ

こ、これは…！

タクヤ

地元のホテル街で、君とゴロウが歩いている所だ。

タクヤ

真昼間からこんなに堂々と腕を組んで、なにをやってるんだ！？

シズカ

ウソ、なんでこんな写真を持ってるの。

シズカ

こんな場所に知り合いなんているワケないのに。

タクヤ

シズカ、君はオレをナメ過ぎだよ。

タクヤ

なにも知らないと思って、こんな風に堂々と裏切るなんて。

シズカ

違うわ、裏切ってなんていないわよ。

タクヤ

じゃあ、こっちの写真はなんだ？

タクヤ

～画像送信～

タクヤ

ゴロウの家に、君とココが入っていくところだよ。

タクヤ

ゴロウの奥さんが仕事に行っている間に、家に上がりこむなんてな。

タクヤ

一体どういうつもりだ。

タクヤ

しかもココまで巻き込むなんて！

シズカ

ちがうの、誤解よ。

シズカ

ゴロウさんが、奥さんのことで相談があるっていうから

シズカ

お家にお邪魔させてもらっただけよ。

シズカ

お友達の家にいくようなものよ、ヘンなふうに受け取らないで！

タクヤ

あくまでもしらばっくれるつもりだね。

タクヤ

素直に謝ってくれたら、許せるかなと思ったけど。

タクヤ

もう生理的に無理だな。

シズカ

え？無理ってなにが？

タクヤ

実は、赴任先から帰る予定が早まって、来月から本社に戻ることになったんだ。

シズカ

え？そうなの。

シズカ

タクヤ、戻ってくるんだ…。

タクヤ

ガッカリした？

タクヤ

俺が戻ってきたら、浮気相手と会いづらくなるもんな！

シズカ

そ、そんなコトないわよ。

シズカ

戻ってきてくれるのはうれしいわ。

タクヤ

今さら信じられない。

タクヤ

ホテルや、ゴロウの家に行った事は認めるんだな？

シズカ

ええ、でも本当に何もしてないわ。

シズカ

ただのお友達よ…。

タクヤ

もういい。

タクヤ

俺はそんなに心が広くないからね。

タクヤ

明日、帰ったら話そう。

タクヤ

なんならお義父さんたちも同席してもいいけど、

タクヤ

こっちは証拠が全て揃っているから、君に不利な話しかないよ。

シズカ

そんな…。

シズカ

ごめんなさい、ただ寂しくて魔がさしただけなの。

シズカ

まだココも小さいし、離婚だけはしないで。

タクヤ

それは君が決めるコトじゃないよ。

タクヤ

シズカが有責者なんだからね。

シズカ

タクヤ、そんなこと言わないで…。

タクヤ

くわしいことは明日な。じゃ。

～1時間後～

タクヤ

こんにちは、ミホさん。

ミホ

奥さんと話せましたか？

タクヤ

はい。

タクヤ

写真の提供、ありがとうございます。

タクヤ

この写真を入手するために、探偵を雇ったんですよね。

タクヤ

お金も相当かけたはずなのに、こうして俺に画像を送って下さってありがとうございます。

ミホ

いいんです。私ひとりじゃ、あの二人と戦えないから。

ミホ

タクヤさんには協力してほしくて、あの写真をお見せしたんですよ。

タクヤ

すみません、俺がふがいないばっかりに。

タクヤ

ミホさんから連絡を受けるまで、あの二人がデキてるとは思いませんでした…。

ミホ

実は、私たちが結婚した直後から、ゴロウの行動があやしくなってきて、

ミホ

ポケットからホテルのレシートが出てきたり、

ミホ

ファミレスのレシートが出てきたりしたんです。

ミホ

ファミレスにいたっては、子供なんて親戚にもいないはずなのに

ミホ

キッズプレートを頼んだコトになってて、おかしいなと思ったんですよ…。

タクヤ

それは、ココの分を頼んだからだろうな。

タクヤ

結婚したばかりのミホさんを放っておいて、

タクヤ

ウチのシズカに手をだしていたとは、絶対にゆるせないな。

ミホ

タクヤさん、私はゴロウと離婚するつもりです。

ミホ

私、まだ25歳だし、子供もいないしね。

ミホ

人生やりなおすなら、早い方がいいですよね。

タクヤ

もちろん、その通りだと思う。

タクヤ

ミホさんは若いし、美人だから

タクヤ

離婚しても、またすぐ幸せになれると思いますよ…。

ミホ

ありがとうございます！

ミホ

そういってもらえると力が湧いてきます。

タクヤ

俺は、子供のコトがあるから慎重に考えようと思う。

タクヤ

ただ、来月から単身赴任を終えて本社に戻るんです。

タクヤ

そうすれば俺の実家も近いし、ココを引き取ることも可能だと思う。

ミホ

そうなんですか！それは良いタイミングかもしれないですね。

ミホ

なにか協力出来るコトがあったら、わたしも力になります。

タクヤ

ありがとう、うれしいよ。

タクヤ

でも、まずはお互いにこの不倫問題をどうにかしよう。

タクヤ

俺は明日、妻の実家に行って話し合いをしてくる。

ミホ

私は、夫あてに内容証明を送りました。

ミホ

今は実家に戻ってきているので、この後のコトは弁護士に任せるつもりです。

タクヤ

そう、お互いに無理しないようにがんばろうね。

ミホ

ええ、引き続きよろしくお願いいたします。

～翌日の夜～

タクヤ

シズカ、今帰ったよ。

タクヤ

大事な話し合いがあるのに、家にいないってどういうことだ？

タクヤ

ココをお義母さんにまかせっきりで、朝から出かけているんだってな。

タクヤ

無責任にもほどがあるぞ！

シズカ

なによ、エラそうに。

シズカ

そんなに怒ってばっかりいたら、モラハラで訴えてやるわよ。

タクヤ

なにを言ってるんだ…。

タクヤ

まあ、もう戻ってこなくていいよ。

タクヤ

会うとお互いに興奮するだけだから、LINEで話し合おう。

シズカ

いいわよ。

タクヤ

今、もしかしたらゴロウも一緒か？

シズカ

それは…。

タクヤ

そこにいるんだな？

タクヤ

じゃあ、一緒に聞いてもらう。

シズカ

え、なにを。

タクヤ

離婚の条件だ。

シズカ

離婚の条件？本当に別れる気？

シズカ

ココはどうするの？まだ2歳なのよ。

シズカ

私たちが離婚したら、ココがかわいそうよ。

タクヤ

なにを言ってるんだ。

タクヤ

先に裏切ったのはシズカだよ？

タクヤ

まるで俺が悪いみたいに言うんじゃないよ。

シズカ

べつにそんなつもりじゃないけど。

タクヤ

いいか。まずココは俺が引き取る。

シズカ

え？

タクヤ

それから、君には慰謝料300万円を請求する。

シズカ

な、なんですって？

タクヤ

ゴロウにも請求したいところだが、

タクヤ

彼には奥さんからあらためて話があるだろう。

タクヤ

W不倫になるから、不倫相手への慰謝料は相殺になるということだ。

タクヤ

だから慰謝料は、俺は君にだけ請求する。

シズカ

そんな！

タクヤ

ああ、ゴロウに伝えておけよ。

タクヤ

お前の奥さんのミホさんも、絶対に許さないと言っていた。

タクヤ

責任を取らせるまで逃さないぞ。

シズカ

え、怖い。

タクヤ

いや、むしろ優しいやり方だと思うぞ。

タクヤ

俺は来月から本社に戻って、実家の助けも借りるコトができる。

タクヤ

子育てに関してはなにも心配は要らない。

タクヤ

君は、慰謝料さえ払えば自由になれるんだぞ？

シズカ

やめて、そんな言いかた…。

シズカ

私はタクヤと別れたくないわ。

タクヤ

おいおいwwゴロウの目の前でそれを言うかね。

タクヤ

俺はシズカとやり直す気はない。

タクヤ

ココも、このまま俺が連れて帰る。

タクヤ

会社には、しばらく有給を使うと伝えてあるから、

タクヤ

離婚の準備をさせてもらうよ！

シズカ

え、まって！ココまで連れて行かないで。

タクヤ

ココは俺の子でもある。

タクヤ

お義母さま達にも話しをつけてあるんだ。

タクヤ

シズカが申し訳ないコトをしたって平謝りだったよ。

タクヤ

親不孝もいいところだな…。

シズカ

そんな。お母さんたちまでタクヤの味方を…。

タクヤ

まあ、当然のことだよ。

タクヤ

内容証明も送ったから、よく読んでおけよ。

タクヤ

じゃ、ゴロウと仲良くな！

シズカ

ちょっとタクヤ、私は納得してないよ。

シズカ

別れるなんて嫌よ。

シズカ

もう浮気なんてしないよ…！

～後日談～

タクヤ

あれから、俺とシズカは正式に離婚しました。

タクヤ

娘のココの親権も、無事に俺がとる事ができ、

タクヤ

慰謝料も分割ではありますが、きちんと払わせることを約束しました。

タクヤ

ココの養育費も払ってもらいます。

タクヤ

いままで専業主婦だったシズカは、その為に働きに出ているそうです。

タクヤ

俺は本社に戻り、実家の助けも借りながら子育てと仕事を頑張っています。

タクヤ

ミホさんとゴロウも、時を同じくして離婚しました。

タクヤ

ゴロウとシズカは、慰謝料を払うハメになったのはお互いのせいだと

タクヤ

責任のなすり合いしした挙句に、破局したそうです。

タクヤ

シズカから復縁を求めるメールがしつこく届きましたが、

タクヤ

完全に無視してやり過ごしました。

タクヤ

これからは、シングルファーザーとして、

タクヤ

がんばって娘を育てていきたいと思います。

タクヤ

聞いて下さってありがとうございました。

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