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人なんて、信じてもいいものなんて無い
だって、誰もが偽善者なのだから──。
教室に戻ると、山梨が心配そうな顔で駆け寄ってきた。
山梨 晃
体育の授業での出来事を心配してくれているようだ。
山梨は、優しく蒼海の頭を撫でる。
蒼海は、そんな山梨にふっと微笑みかける。
蒼海 白
そう言って、蒼海は自分の席に戻っていく。
しかし、蒼海の頭の中は、先ほど階段で見た月夜のあの表情でいっぱいだった。
もしかしたら、本気で心配してくれたのかもしれない。
偽善者が、あんな顔をするだろうか。
信じて、いいのかもしれない。
月夜に心を開き始めてる始めている自分。
些細なことで簡単に人を信じそうになる自分。
そんな自分自身に、蒼海は嫌気がさしていた。
昼休み、蒼海は山梨と食堂へ向かっていた。
山梨 晃
山梨は小走りで去っていった。
蒼海が前を向いて歩き出そうとすると、後ろから誰かに呼ばれた。
男子生徒
それは、体育の授業が終わって、あの時階段で出会った男子生徒とその友達だった。
彼らは興味深そうに蒼海に近づいてくる。
男子生徒
(またその話題か。いつまでこの話で馬鹿にする気だ)
面倒くさくなり、蒼海はとりあえず笑顔で明るく話す。
しかし、相手が盛り上がるほど気分が沈んでいく。
もう無視して食堂へ向かおうとすると、聞き覚えのある声がした。
月夜 紫苑
そこに立っていたのは、月夜だった。
蒼海が知る月夜は、もっと穏やかで、もっと優しい声をしているはずだった。
男子生徒たちは、月夜の存在に圧倒されて去っていく。
月夜は振り返り、蒼海に近づいてきた。
月夜 紫苑
蒼海 白
月夜の優しい態度に、蒼海は不意に涙がこぼれた。
止まらなかった。
気づけば、月夜に抱きついていた。
月夜 紫苑
食堂のすぐそばにある休憩室
月夜は涙で目の下が赤くなった蒼海に、自販機で買ったばかりの缶コーヒーを差し出した。
蒼海は小さく頷き、それを受け取る。
飲まずに手に持っていると、缶は冷たくなっていく。
月夜 紫苑
月夜 紫苑
その突然な言葉に、何故か蒼海は腹が立った。
蒼海 白
蒼海 白
蒼海 白
蒼海 白
蒼海 白
涙が再び溢れてくる
月夜 紫苑
月夜 紫苑
蒼海 白
蒼海 白
月夜 紫苑
月夜の頬が赤く染まっていく。
蒼海は、そんな月夜を不思議そうに見つめた。
月夜 紫苑
突然の告白に、蒼海は目を見開く。
蒼海 白
月夜 紫苑
月夜は唇を噛み締め、蒼海に近づいて腕を掴んだ。
その手は温かく、人を信じられない蒼海の心を落ち着かせた。
月夜は、戸惑う蒼海に徐々に顔を近づけてくる。
今にも鼻が触れ合いそうだ。
そのとき、後ろから誰かの走る足音が聞こえた。
山梨 晃
晃だった。
晃は、蒼海の腕を掴む月夜を睨みつける。
蒼海の目の下が赤くなっているのを見て、さらに月夜を睨みつけた。
山梨 晃
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