等級発表が終わり、 私は寮に帰った。
獅子崎里桜
さっき夏油が言ってたけど
あれ、マジなのかな
あれ、マジなのかな
私は おぞましい 雰囲気の呪霊玉に 目を向ける。 黒くツヤのある、 お世辞にも小さいとは 言えない塊。
─これを食べるのか。
人間の負の感情から 生まれたモノを 食べられるわけがない。 だが取り込まないと 呪霊とは戦えない。
獅子崎里桜
………嫌だなぁ
獅子崎里桜
でも食べるしかないか
私は意を決して それを手に取り、 口に入れた。
獅子崎里桜
ぐっっ……!?
酷い味だった。 これは食べるもの ではない。
──私、死ぬ? こんなの無理 だめだ 飲み込むな まずい 吐いちゃう 痛い 助けて 死にたくない 嫌だ
獅子崎里桜
っが……ぅぐっ
私は嗚咽を 漏らしながら 飲み込んだ。 あまりの不味さに 涙がにじむ。
途端に吐き気が 襲ってきた。
びしゃ、と 鈍い音が口から 吐き出される。
はあはあと 息を荒げながら 目の前にある 現実を知る。
これから私は これをずっと 味わわなければ ならないの? …私だけ? …夏油も同じ? 辛い、辛い、辛い。
獅子崎里桜
もう、やだ
五条悟
おーい里桜ー
五条悟
いるかー?いるよなー
五条悟
おじゃましまぁーす
五条悟
………は…?
五条悟
なん、ど、どうした
五条悟
具合が悪いなら俺が─
五条は私の目の前に 転がっている呪霊玉を 見て、言葉を失っていた。
五条悟
こ、これ
五条悟
取り込んだ、のか?
獅子崎里桜
……うん。後は多分
雑魚呪霊ばっかだから、
食わなくていいかな
雑魚呪霊ばっかだから、
食わなくていいかな
五条悟
……おう
五条悟
………
獅子崎里桜
…はは、後処理は
自分でやるからさ
自分でやるからさ
獅子崎里桜
……五条
獅子崎里桜
なんでお前が
泣いてんだよ
泣いてんだよ
顔を上げたら、 五条は泣いていた。
五条悟
……さっき、
傑の部屋にも
行ったんだ
傑の部屋にも
行ったんだ
五条悟
そしたら、お前と
同じ顔で
同じ顔で
五条悟
吐きながらコレ
飲み込んでた
飲み込んでた
五条悟
俺さ、友達とか初めてで
なんもわかんねぇけど
なんもわかんねぇけど
五条悟
なんか
五条悟
傑もお前も、いつか
いなくなるんじゃねーか、
って思っちゃって
いなくなるんじゃねーか、
って思っちゃって
五条悟
いつか限界が来て、
なんも言わねーで
どっか行っちゃうんじゃ
ないかって
なんも言わねーで
どっか行っちゃうんじゃ
ないかって
獅子崎里桜
…そっか
獅子崎里桜
心配すんな
獅子崎里桜
夏油も私も…
いなくならないよ
いなくならないよ
獅子崎里桜
その内慣れる、多分
五条悟
…なんかあったら
絶対に言えよ
絶対に言えよ
五条悟
俺じゃなくて、傑でも
硝子でもいいから
硝子でもいいから
獅子崎里桜
……うん
獅子崎里桜
ありがと、五条
五条悟
…るっせ
五条悟
早く掃除しろ
獅子崎里桜
はいはい
コレに耐えられれば ゆくゆくは昇級 できるかもしれない。 私の目標は冥さんだ。 ここで折れたら 冥さんに顔を 合わせられない。
始まったばかりの 高専生活。 これから思いっきり 楽しもう。