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【高級ホテルへご招待】

夏又平吉

ふふ、任務完了っと…

俺は、義足を修理してもらった後、能力特殊軍警察絡みの事件に、特別捜査本部からハッキングを仕掛けるよう頼まれて、せっかくの休日だというのに朝から休む暇がなかったものだから、今こうして、時間差でドッときた疲労を和らげようとカフェで一服しているところである。 しかし、ここに来るまでずっと立っていたものだから、流石に義足をつけている左脚が痛むなぁ…少し外しておこうか。

早川明智

お久しぶりです。
夏又平吉さん

左脚から義足を外した瞬間、見覚えのある横顔が、耳に口をつけんばかりにして囁いた。

早川明智

お隣失礼しますね

夏又平吉

…ハハァ、まさかこの時を見計らって後をつけてたのかねぇ?
すまないけど、今は気分じゃないんだ

早川明智

別に攻撃するつもりはありません。
せっかくですしお話でもどうです

夏又平吉

さて一体何がお望みだい

早川明智

フフフ、流石に隠し通せないですか。貴方ね、成人連合の奴らに目をつけられてますよ

夏又平吉

へぇ、そうなのかい。それは厄介なこった。
でも君もそこの1人じゃなかったっけね

早川明智

ナアニたとい私たちが犬猿の仲だとしても汚い手は使いません。何より紳士らしくないので

早川明智

と言うより、成人連合の奴らは猿の群れとほぼ同等な奴ばかりです。そんな奴らと一緒にされたくはないのですが

夏又平吉

それでなんで俺は目をつけられてるんだい。その成人連合というやつらにね

早川明智

連合の奴らは、貴方が計画の妨げになるという事で、仲間にする派、抹殺する派とで分かれたみたいですよ

夏又平吉

まぁ俺を仲間にすれば簡単にハッキングやら犯罪は起こせるのは分かるが、簡単に捕まえられるとでも思っているのかねぇ

早川明智

まあそんな事より、貴方と2人きりで、本当の目的である話をしたいのです

早川明智

誰かに聞かれることも一切無い場所で

夏又平吉

フーン、例えば君の家の地下室とかね。いや、それじゃあ俺に住処を教えているようなものか…

君ならホテルの可能性もありえなくもない

早川明智

ウフフ、さすが勘が鋭い。貴方のそういうところが嫌いなのですよ

夏又平吉

ま、いいよ。今日くらいは振り回されてもいいかな

早川明智

では、今夜の22時にこのメモの場所に…。
それでは

彼は席を立って俺にメモを渡した。 彼から手渡されたのは、ご丁寧にタイプライターで打ち込まれた文字で『今夜22時 東京ステーションホテルにてお待ちしております。』と綴られてあった。 あえて随筆で書いて渡さなかった理由はなんとなく分かるような気もする。 俺が、彼の罠に掛かる理由には好奇心が勝るというのもあるが、何より、彼が俺を手中に落とせたと思い込んだ瞬間、俺がその計画を狂わせて逆に、手中に収めるのがとても愉快でたまらない。たとえどんな安易な罠でもすぐに掛かりたくなる、そんな体質なのだ。

夏又平吉

これはまた一段と面白そうな罠を…

【木栖巡査長と秘密の約束】

俺は予定の時刻通りに、東京ステーションホテルの玄関口でイスに座りながら彼を待っていると、誰かに驚いた口調で話しかけられた。

木栖ヨウマ

アレッ…あなたは夏又さんではありませんか!

夏又平吉

君は、巡査長の木栖くん…だったかな?

木栖ヨウマ

は、はい!木栖ヨウマです。
覚えてもらえて光栄です。いやあ奇遇ですね。ところでどなたかを待っていらっしゃるのですか?

夏又平吉

早川明智という人を待っているんだ。

木栖ヨウマ

早川明智って……
あの早川明智ですか(小声)

夏又平吉

アアそうだよ。あの名探偵の早川明智さ。
君こそ、何か用があってここに来たのかな

木栖ヨウマ

ええ。久々の休日を満喫しているところです。久しく会っていない旧友と息抜きついでに旅行をしていまして。それで、この周辺をバスで見物して来たところです

夏又平吉

そうなのかい、それはとても充実した休日だね。
ところで急で申し訳ないのだが、君に頼み事があるんだ。

木栖ヨウマ

夏又さんの頼みなら断れないですし!

夏又平吉

せっかくの旅行を邪魔したくないのは山々だが、少しの間、君に見張りを頼みたい

木栖ヨウマ

ハア、でもなぜ?このホテルで何か起こるのですか

夏又平吉

詳しくは言えない。あまり人を巻き込みたくはないからね。
多分、君がいてくれた方が、いざと言う時の応援も呼びやすそうだ

夏又平吉

では、10時半頃にまた、ここに来てくれるかい

木栖ヨウマ

了解です。
あはは…夏又さんほどの方となれば、休日も気を休めなさそうですね

夏又平吉

アア気を抜いていたらあっさり殺されてしまうかもしれない…
なんて冗談だ。さて、彼が来たからもう行くよ

夏又平吉

急な頼み事を承諾してくれてありがとうね。
では…

【鉄道ホテルと憧れロマン】

ホテルマンに道を案内され、俺たちの予約していた部屋までたどり着いた。

夏又平吉

素晴らしい建築だ!実は言うと、鉄道ホテルに来るのは初めてなんだよ

夏又平吉

それにしても、ここから眺める夜景はとても綺麗だね

早川明智

2人きりでゆっくりとお話したくてですね。個室なら誰にも聞かれずに済むと思いまして

夏又平吉

そうかい。俺も郷田くんとゆっくり話す機会ができて実に嬉しいよ。
君ならいい部屋を取ってくれていると思っていたんだ

早川明智

本名で呼ばないでいただけます?

夏又平吉

あらごめん。つい昔の癖で♪

早川明智

はぁ…
せっかくならワインでも一杯飲めばどうです

夏又平吉

イヤ結構。毒を仕込まれたらたまったものじゃない

夏又平吉

で、君、早く俺をつかまえてご覧よ。
君の目的は大体分かる。俺もいつでも暇なわけじゃないんだ

早川明智

ウフフ分かっていたのならばなぜ、わざわざ招待に応じたのです

夏又平吉

だってね、鉄道ホテルに来てみたかったんだもの

早川明智

それだけで…?

夏又平吉

うん、そうだよ。
楽しんで悪いかい?

早川明智

い、いえ。貴方はどんな状況でも、ましてやピンチの時でさえも、楽しみに変えてしまいますね。
貴方を恐怖に陥れるのには骨を折りそうです

夏又平吉

あっ、ホラ郷田くん見てご覧!鉄道が通った!ははは素晴らしいね

早川明智

ハァ…全く何度言えば……
だから本名で呼ばないでください。
私も鉄道マニアではありませんから深くは分かりませんけど……

夏又平吉

なんてね。
それで、君がここを選んだ理由、もう一つあるんだろう?
俺をつかまえる以外の理由が

早川明智

東京駅の鉄道ホテル。
江戸川乱歩の『怪人二十面相』で、辻野氏に変装した二十面相が、某国から帰ってきた明智小五郎と対談したところです。
これに少々ロマンがありましてね。貴方を巻き込ませていただきました

夏又平吉

じゃあ計画は、すぐ終わるわけじゃないんだろうね

夏又平吉

アア煙草でも吸って、
君の顔面に煙を吹きかけた方がいいのかな♪

早川明智

ハハハ馬鹿な真似はよしてくださいよ

夏又平吉

…ま、茶番はここまでにしとこうか。
さて、何もしないなら俺は帰るよ。終電がなくなってしまったら困る

早川明智

なぜ?ここで泊まっていけばいいではないですか

夏又平吉

君の招待には応じてあげたし、充分楽しめたからね。どうせ君が俺をここに呼んだのは大事な話があるからではないんだろう?

早川明智

お察しがよろしいようで

夏又平吉

そうかい。あと俺は宿泊が嫌いなんだ。それじゃあ俺は調子が悪いからこれでお暇するよ

早川明智

おっと失礼、足が

ガタンッ_

夏又平吉

ッ…一体何をした

義足をつけている左脚に、 わざと足を引っ掛けて俺を転ばせたようだ。

早川明智

ウフフ、言いそびれてました。
貴方、今朝、義足を修理に出したでしょう。その時に、勝手ながら少々細工させていただきました

夏又平吉

ははぁ、道理で今日は痛むと思ったわけだ。
まさか郷田くんのせいだったなんてね。アアそうか、これが目的だったか

早川明智

受け取った後、不備がないか、よく見ない貴方の方の問題でもありますがね

夏又平吉

それで、こんなことしてどうしたいんだ。俺はどんな手でもつかまりはしないよ

早川明智

ハハハ、どうするもこうするも、貴方を身動きが取れない状態に…

早川明智

…おっと

ガンッ_

早川明智

取らせませんよ。貴方は義足なしでは何もできないのですから、渡すわけがない。
貴方のせいで人生を狂わされたんですからね

夏又平吉

意地が悪いねぇ。
まだそんな昔のことを引きずっているのかい

早川明智

ええ、だから貴方に苦痛を味合わせたいんです。
ホラ、じっとしてください…口が押さえられない…

夏又平吉

その異様に大きいキャリーケースずっと気になっていたけれど、まさかと思うが、俺をその中に閉じ込め…ッ

早川明智

そうですそうです。さて、可哀想な左脚に傷をつけてさせてもらいますよ

ブスッ_

夏又平吉

ッ…!!

早川明智

アアやっとだ!
アハハ、太ももから血潮が溢れ出ている。しかも憎い相手の脚から!歪んだ表情も実に最高だ!

早川明智

ナアどうだ。痛いか。苦しいか。私は貴様のその容姿端麗な姿すらも憎いよ!ホラ、いつもの憎たらしい笑顔はどうした!もっと歪んだ表情を見せてくれ!

まずい。いっぱい食わされた。 いつもの俺らしくない。今日はなにかと調子が悪い。 いや、今はそれどころではない。早く玄関口まで逃げなくては…

夏又平吉

そっちこそッ…俺が何も企てていないとでも思ったかい?

早川明智

ッ…靴ベラを武器にするなんて、それで私に敵うとでも?

夏又平吉

よそ見は禁物♪

パンッ_

俺は胸ポケットに右手を突っ込んで 小型拳銃(ワルサーPPK)を取り出し、彼に狙いを定め一寸の迷いなく右肩を撃ち抜いた。

早川明智

なるほど……

早川明智

ウフフ残念ながら、私は明智小五郎ではありません。ですから、病室で推理ごっこなんて不必要なのです

夏又平吉

さすがは痛みすらも愛する快楽殺人魔さん♪

夏又平吉

アア君は今、悪魔のような顔をしているよ。全く、紳士にそぐわない不気味な顔だ

早川明智

ところで、そんな余裕をこいて貴方正気ですか?ここに安全な逃げ道はないのですよ。逃げたところで、どうせ私に追いつかれるのですからね

夏又平吉

“安全”…?ハハハハハ、ならば“危険”な逃げ道ならあるはずだッ

失敗すれば地獄行きだ。 いや、このまま彼の思うままにされてもどっちにしろ地獄だ。 でも俺がここから逃げれたとしても、この建物に爆弾でも仕掛けてあったらより多くの被害者を出してしまう可能性もありえなくもない… 仕方ない…一か八かだ!

夏又平吉

俺の、最悪の予感が外れることを祈るよ

脚の至る所の関節に銃弾を命中させ、彼の動きを鈍らせた。すぐさま、彼が落とした折り畳みナイフをズボンのポケットにしまって、壁際に蹴り飛ばされた自前の義足をつけ、玄関口の見える廊下に飛び出して、無客のエレベーターに駆け込んだ。

早川明智

待てッ…!!

【夜に溶け込むホテル】

夏又平吉

畜生ッ…

太ももから絶え間なく溢れ出す鮮血の赤が、床を華やかに染め上げ、エレベーターの中いっぱいに、鉄の香りで包んでいった。

ホテリエ

お客様大丈夫ですか!?

エレベーターの前を通りかかったホテリエの方が、たまたま俺に気づいた様子で、慌てながら調子を尋ねた。

夏又平吉

すまない。俺は警察側の人だから安心して聞いてくれ。
玄関口に木栖ヨウマという人がいるはずだ。名前を呼んで探して来てくれるかい。
それと、紐類ももらえるかな

ホテリエ

分かりました。今すぐお持ちして、木栖様をお呼びいたします

少しめまいがしてきた。もしも彼が早く追いついてきたらどうする。逆に彼が逃げていたらどうする。 まず、井口たちを呼ぼうか。 いや、ここまで距離が遠いからすぐに来れはしないな。 さすがに警察を呼ぼう… 俺は、冷えた手で警察に電話をかけた。

夏又平吉

さすがは高級ホテルのホテリエだ。行動が早い…

木栖ヨウマ

夏又さんッ!!
何がありました!

夏又平吉

君、早川明智の顔を知っているね?

木栖ヨウマ

はい。
先程、すれ違い様にお目にかかりましたが

夏又平吉

先程…?
待て、それじゃああの部屋から脱走したと言うことか…
まずい、ますます、まずい…変装でもされたら困るぞ……

木栖ヨウマ

先ずは自分の体を気にしてくださいよ!貴方が死なれたら、私も、お仲間も、警察も悲しみます…

木栖ヨウマ

すいません。今は止血帯がなくて応急処置になりますが…

夏又平吉

工事用のロープか…。
すまないね。今回は俺の失策だった…。

ガチャン_

木栖ヨウマ

次はなんだ!

夏又平吉

きっとブレーカーを落としたんだ…
恐らく館内全部のね…

木栖ヨウマ

クソッ、休日に限ってこんな目に遭う…

夏又平吉

大丈夫、非常用のライトがついているはず。
外に出られないことはないよ…

木栖ヨウマ

ですが、夏又さんは…っ

夏又平吉

いま意識を保つので精一杯だ。
君は他の客の安全に尽くしてくれ

夏又平吉

電話したから、もうじき警察も救急隊も来るはずさ

井口と愉快な仲間たちシリーズ

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