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それは、今よりも少し昔のこと。 ある村に、1人の少女がいた。少女の名は篠原葛香。村八分にあっている少女であり、その日も高校から帰宅していた。行方が途絶えた兄の形見のガラケーを、肌身離さず今日も持ち歩いていた。
篠原葛香
しばし歩き、葛香は帰路の途中、不意に死への意識が浮かび上がってきた。今までの重荷の糸がプツリと突然切れたのだろう。ふと、村の禁忌とされている、森の奥深くへと足が向かっていく。足取りは軽く、しかし、辺りは薄暗くなっていく。
それからしばらく歩くと、小さな神社が葛香の前に佇んでいた。鳥居や稲荷は埃をかぶり、掃除ひとつされておらず、その姿はまるで、誰からも忘れ去られてしまった、寂しい存在のように思えた。葛香はその薄暗い神社に向け、鳥居をくぐり、歩いていく。
篠原葛香
篠原葛香
葛香は稲荷像の前で屈み、強く願う。両手を合わせ、これ以上にないくらい、希望を掴もうとする。
…しかし、いくら経っても、そんな希望は掴めることはなかった。葛香の目は濁り、霞んでいく。禁忌と呼ばれるその森の中を恐れる心も、いつかの日に置いてきてしまった。それほど、今は死を強く望んでいるのだった。
篠原葛香
…
……
その時のことだった