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倉庫横の通路。
人の気配がない場所で, 蓮音は足を止めた。
一歩。 もう一歩。 それ以上,進めない。
蓮音は,棚に手をつき,俯いた。
蓮音
息を吸おうとして,浅くなる。
胸の奥が,きゅっと縮む。 昨日の距離。 声。 視線。 ──今,触れてはいないのに, 触れたみたいに残っている。
蓮音
そう言い聞かせた。 でも。
指先が,微かに震える。 蓮音は,唇を噛みしめる。
蓮音
昨日,言えなかった言葉。 康平の前では,言えなかった本音。
蓮音
距離を取るつもりだった。 線を引くつもりだった。 なのに。 近づかれるたびに,拒めなかった。
蓮音は,額を棚に軽く預ける。
蓮音
自分の気持ちを,持て余している。 何にも,ぶつけられない。 ──ぶつけたら、戻れなくなる。
足音が,遠くで聞こえた。
蓮音は,慌てて背筋を伸ばす。 深呼吸を一つ。 顔を上げる。
蓮音
そう言い聞かせて, 材料を抱え,実習室へ戻った。