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緊急外来の廊下は 人気がなく静かで 冷たい空気を纏っていた
その落ち着いた空間では 余計なことを考えてしまう
あの光景が 頭に染み付いて離れないのだ
ゆあん
何を思おうと 結局は待つことしか出来ない
震える手を握りしめながら 床に映る非常口のランプを ただじっと見つめていると
バタバタバタ
静かな廊下に 忙しない足音が響いてきた
連絡を受けて駆けつけた 友人たちだ
じゃぱぱ
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあん
ヒロ
ゆあん
ゆあん
ヒロ
バシッ!!
ゆあん
乾いた音が響く
遅れて、自分の左頬に 熱い痛みを感じた
叩かれたのだ
るな
るな
るな
るな
ゆあん
じゃぱぱ
るな
るな
るな
るな
るな
るな
るな
じゃぱぱ
ヒロ
るな
るな
口から出てくる言葉は 徐々に嗚咽へと変わっていく
遂には立っていられなくなり、 膝から崩れ落ちて泣き出してしまった
るな
じゃぱぱ
じゃぱぱ
じゃぱぱ
るな
じゃぱぱ
じゃぱぱ
るな
るな
るな
るな
じゃぱぱ
ヒロ
ヒロ
ヒロ
ゆあん
侮蔑も、労いも、 頭を通ってすり抜けていく
何も考えられなくなっていた
ヒロ
ヒロ
彼もそれを察してか それだけ呟いて それ以降口を開くことはなかった
そうして待つこと数分 手術中のランプが消えた
ガラッ
ゆあん
ヒロ
医師
ヒロ
ゆあん
医師
医師
ゆあん
ヒロ
医師
ヒロ
ヒロ
ヒロ
ゆあん
途端に体全身の力が抜けて その場に座り込む
ヒロ
ゆあん
不安 恐怖 安心
色んな感情がごちゃ混ぜになって ただ頷くことしかできなかった
今まで堪えていた涙腺も一気に緩み ボロボロと涙が落ちる
誰もそれを 咎めたりすることはなかった
案内された部屋の一番奥に 彼女はいた
あちこちから点滴を打たれ、 体の節々には包帯が巻かれて 口元には酸素マスクがつけられていた
彼女は元から肌が白かったことも 相まってその姿は不健康そのもの
胸がきゅっと締め付けられた
ゆあん
ヒロ
ゆあん
じゃぱぱ
るな
るな
るな
じゃぱぱ
じゃぱぱ
るな
ゆあん
人の気配がなくなって 病室はより一層静かになった
指先一つ動かすことですら 激しく神経を使う
ゆあん
全部ゆあんくんのせいだ!!!
ゆあん
そう、これは全て俺のせい
何も間違っていない
絶対に彼女の笑顔を絶やさない、 何があっても守る
そう決めたのに
ゆあん
ゆあん
ゆあん
ゆあん
ゆあん
大切な人を守るどころか 傷つけてしまった
何よりも許し難いことだった
ゆあん
ゆあん
ゆあん
ゆあん
彼女のことが大好き
誰よりも幸せになってほしい
その気持ちは今も変わらない
だからこそ自分は彼女の そばにいてはいけない
ずっと笑顔でいてほしいから
ゆあん
ゆあん
俺はその場で彼女への手紙を書き残し そのまま静かに病室を出た
そしてこれ以降、 俺と彼女が会うことはなかった
過去編終幕