僕は今日も本殿に来た。
どうやら今日は、向日葵を生けているらしい。 気まぐれだろうか。
剣持
がっくん
伏見ガク
何?
剣持
なんか、がっくんって向日葵似合うよね
伏見ガク
そう?あんまり言われた事ないわ…
剣持
逆になんて言われんの
伏見ガク
う〜ん、あんまり覚えてないや
伏見ガク
でも…
思い出したくない事だろう。
だから、鮮明な記憶を、あえて涙で濁らせている。
剣持
…まぁ長く生きてたら、忘れちゃうよね
伏見ガク
…うん、そう、そう。
伏見ガク
とーやさんは、なんて言うか…百合とか似合いそう。
伏見ガク
花言葉とかも…ね
剣持
ふ〜ん…百合かぁ…
剣持
あっ、じゃあ
伏見ガク
ん?何処行くん
剣持
いや…勉強しに…ア゛!
剣持
ッ!ア゛ァっ!!
伏見ガク
とーやさん?
伏見ガク
とーやさん!
「とーやさんっ!」
夜の帳が下りる頃
伏見ガク
…
伏見ガク
とーやさん…
剣持
ねぇ…がっくん
伏見ガク
っ!!
伏見ガク
とーやさんっ!
思いっきり抱きつくと、神の面影はそこになく_
まるで幼児の様に泣き喚いた
伏見ガク
よかった…生きてて…
剣持
がっくん…ごめんね
剣持
ずっと言わなかったんだけどね…
剣持
僕ね…
剣持
がっくんと居るの…っ、駄目なんだ…
伏見ガク
なんで…なの?
剣持
僕の家、妖怪を倒す__剣士の家なんだけど、
剣持
その…呪いで!…妖怪といると…寿命が…縮むんだ…
剣持
数年前、来た時も、妖怪かどうか確かめる為に来たんだ…
剣持
でも、それからがっくんと一緒にいたいって思ったから、知りたくなかった…
剣持
昨日久しぶりに実家に行ったら、父さんに、
「お前、妖怪と居るだろ」って…言われて…
「お前、妖怪と居るだろ」って…言われて…
剣持
それで…もう死んじゃうんだって…
伏見ガク
!?俺が…原因なら…俺、離れてもいいから…
剣持
がっくんが離れてよくても、僕が離れたくないよ…
剣持
最期の願いでさ、これ…
彼の掌には、少し古びた指輪があった。
剣持
こんな指輪しか用意出来ないし、馬鹿馬鹿しいかもしれないけど
剣持
こんなに脆いけど
剣持
こんなに、こんなに、駄目な僕だけど
剣持
それでも、来世も、一生一緒に、いていいです…か?
涙を浮かべて、とーやさんは今までの余裕を無くしていた。
それが、病による物か、はたまた心の昂りによる物か。
俺はそれを知ることはできない。
伏見ガク
…今まで沢山の死体に触れてきた。好きな人ですら…死なせてしまう…
伏見ガク
もうこんなに…汚くなっちゃった俺だけど
伏見ガク
それでもいいのなら、
長髪で隠れていても、その涙の光は眩い。
それは悲しみと、嬉しさを意味している様だ。
少なくとも、僕の眼には彼の涙の全てが悲しさ故とは思えない。
伏見ガク
ありがとう、とーやさん
剣持
狐様と一生一緒にいれるって…はは、僕罪人だね…
震えた声で、震えた手で、不器用でも、
彼の綺麗な指に、指輪をはめる事が出来た。
剣持
僕の来世と、その来世に逢えた時まで、大事にしてくれますか?
伏見ガク
はい、もちろん。
伏見ガク
来世、その来世まで、俺が君に逢える時、その後も、永遠の愛を誓ってくれますか?
剣持
はい、誓います。
僕はがっくんの髪をベールの様に手で分けると、
最期のキスをした。
僕の最愛で最高の呪いだ。
剣持
ありがとう。がっくん。
剣持
愛して…ます