にじさんじ本社――それは、私にとって全く縁のない世界だと思っていた。
けれども、配信事故のせいで、この場所に兄たちと共に足を踏み入れることになるなんて
葛葉
亜蓮、緊張しすぎじゃね?笑
葛葉兄が横目で見てくる
亜蓮
そりゃ緊張するよ!
亜蓮
配信に声が載っただけで怒られにくるんでしょ?
叶
、
私が不安を口にすると、叶兄は少し困ったような顔をした。
叶
まぁ、大丈夫だと思うけど…
叶兄のその曖昧な言葉が、余計に私を不安にさせる。
会議室に通され、待っていると、マネージャーさんが現れた。
マネ
叶さん、葛葉さん、今日はお越しいただきありがとうございます。
と、兄たちに挨拶した後、私の方を向いて少し首をかしげた。
マネ
えっと…妹さん、ですよね?
亜蓮
あ、はい。亜蓮です
亜蓮
叶と葛葉の妹で、一応高校一年生です
慌てて頭を下げる私に、マネージャーさんは柔らかく微笑んだ
マネ
亜蓮さん、ですね。初めまして
マネ
今回の件で少しお話したいことがありまして。
マネ
配信事故の件ですが、視聴者の反応も良く、むしろ盛り上がりました
マネ
特に亜蓮さんの存在に興味を持つ声が多くてですね
亜蓮
え、私?
思わず声が上ずる。私はただ消しゴムを取りに行っただけなのに。
マネ
それで、ご提案なんですが…亜蓮さんもにじさんじゲマズに加入しませんか?
亜蓮
えっ?!
一瞬、時間が止まったように感じた。
亜蓮
ちょっと待って,それって冗談ですよね?
私の声はかすれていた。葛葉兄も思わず吹き出す。
葛葉
いやいや、マジでこいつ下手だって
葛葉
ゲームのセンスねぇから
亜蓮
おい、それどういう意味よ!
私はムッとして睨むが、叶兄が首を振りながら言った
叶
いや、実は、ゲーマーとして亜蓮はかなりレベル高いよ。
亜蓮
は、?
私がきょとんとする間に、叶兄がマネージャーさんにスマホを見せる
そこには私が適当にやっていたゲームのスコア画面や、兄たちと遊んでいたときの記録が写っていた
叶
これ、全部亜蓮が出した記録なんですけど
亜蓮
……え、待って、これ私?
マネージャーさんが目を丸くして笑う
マネ
なるほど、これは素晴らしい
マネ
本人が自覚ないところも含めて面白いですね
亜蓮
でも、配信とかできないし…
弱気になった私に、叶兄は優しく微笑んだ
叶
最初は僕たちがサポートするよ
叶
きっと楽しめると思う
少し迷ったけれど、叶兄の言葉と葛葉兄の笑顔に後押しされ、私はついに決断した。
亜蓮
……わかった。やってみる
マネージャーさんは満足そうに頷く
マネ
では、亜蓮さんのデビュー準備を進めますね
マネ
ようこそ!にじさんじへ
新しい世界の扉が音を立てて開く――その瞬間、私の中に何かが動き出すのを感じた