あいつだけは好きにならない

怒涛のレポート・テスト週間を

何とか乗り越えて

単位を無事獲得した俺たちは

長めの春休みを謳歌している

今日はこの四人で配信

なおきりさんがオススメしてくれた

ホラーゲームを

俺の家で挑戦する

配信が始まる

えとさんとのあさんがソファに座り

うりがその前の床に胡座をかく

俺はソファの後ろのベッドで

スマホでやり取りしながら観戦する

怖がりながらも

少しずつゲームが進んでいく

大分怖くなってきた場面で

逃げるように部屋から出ていく

のあさんを

恨みがましく見送る

若干涙目のえとさんが

のそのそとベッドにやって来る

ピタッと寄り添ってくる

可愛っ…

何この可愛い生き物

ぎゅっとしたいのを堪えて

スマホに意識を集中する

俺の枕を抱きしめて

上手く目線を遮り始めた

ごめん、えとさん

でも

怖がる姿が可愛くて

イタズラ心に勝てなかった

えとさんから枕を取り上げて

うりの横に座らせるのあさん

俺の隣に腰を下ろしたのあさんが

意味ありげに笑いかけてくる

俺にだけ聞こえる声で

後ろで赤面しているなんて露知らず

えとさんは悲鳴を上げながら

ゲームと格闘している

えとさんの呼ぶ声に

後ろ髪を引かれながら

廊下で通話する

通話は少し長引いてしまった

リビングの扉を開けると

隣同士で座るえとさんと、うり

自然と寄り添う形になっている

本気でビビるえとさんに

うりが掛ける声は

とても優しくて

お似合いだ、なんて

口が裂けても言いたくない

俺の姿を見つけると

嬉しそうに寄ってくる

のあさんと入れ替わりで

迷わず俺の側に来てくれる

そのことに

さっきまでの靄は消えていく

のあさんが躊躇いなく操作すると

モンスターが急に画面一杯に現れる

急に静かになった隣を覗き見ると

えとさんが…泣いていた

枕に顔を押し付けて

何とか堪えようとしてる姿に

思わず手が伸びた

片手で頭を抱き寄せ

髪を優しく撫でる

ふとこちらを振り返るうりと

目が合った

えとさんを抱き寄せ慰める姿に

一瞬目が見開くが

直後、ふっと笑って

のあさんに代わって

残りはうりがプレイした