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読切__『幸せに、なろう』 StaRt.
___side.
ずっとずっとずっと
貴方しか見ていなかった
だからずっとずっとずっと
頼られたかった。 甘えられたかった。
貴方が苦しい時、寂しい時、きつい時
思い浮かべるのは俺でありたかった
『う゛っあ゛っ!いだっ、ど、して゛っぇ゛』
目の間に広がる真っ赤な血
涼ちゃんが痙攣して…動かなくなる
これで、一人…
貴方に近づく人が居なくなった
貴方のそばにいるのは俺だけでいいんだ
俺たち二人だけで、幸せに、なろう。
ねえ、元貴
大森元貴side.
小さい頃、自分はなんでもできるって思ってた
一番強くて、かっこよくて、世界を救うヒーローだって
漠然とした想像をしながら、
汚い世界に背中を向けて生きていた
ーーー
音楽が好き
絵を描くことが好き
曲を作ることが好き
歌うことが好き
ギターを弾くのが好き
小さい頃、僕は好きなものに囲まれていた
優しくて綺麗なお母さん
かっこよくて逞しいお父さん
強くて頭がいいお兄ちゃん
それから、毎日飽きずに遊んでいた若井と涼ちゃん。
小さい頃は毎日空き地で日が暮れるまで遊び
家に帰ってあったかいお風呂に入って
いつの間にか並ぶご飯を食べながら
家族に今日あったことを話して
全員でお星様を見たり
トランプしたり
何気ない_日常が続いていた
小さい頃はそれを幸せと呼び
この幸せは決して崩れないって、そう思っていた
鮮やかに蘇る懐かしい瞬間
夏の蒸し暑い夕方
虫取り網と虫籠を持って原っぱを駆け回る小さい子供達
蝉の声と、夕焼け空と、どこからか聞こえる風鈴の音
夏をいっぱいに感じながら
目の前にはいつも
ニコニコ笑う涼ちゃんと 元気に走り回る若井が居た
ーーー
なのになんで今
こんなことに、なってるんだろう
お母さん、お父さん、お兄ちゃん
なんで血まみれで、倒れてるの?
ーーー
僕たちは大人になった
小さい頃の記憶は薄れ、
涼ちゃんと若井とは段々連絡を取り合わなくなり
高校生になった僕は早々に不登校状態に陥った
僕たちはいつだって『死』に憧れていた
だけど、『死』を選ぶことだけはしなかった
ーーー
そこからまた月日がたち、僕たちは日本を代表するバンドになった
偶然出会った若井と涼ちゃんと
酸いも甘いも噛み分けてがむしゃらにやっていた
僕は有難いことにドラマ、映画に出させて頂いて
若井は人気番組のMCを務め、ギターでは個人で雑誌に載り
涼ちゃんはバライティにも引っ張りだこだし、映画にも出ることが決まった
苦しいことも辛いこともあるし
勿論寂しくなることだってある
でもその度に涼ちゃんや家族を、若井を頼って
頑張って、世界にしがみついていた
そんな日常は、今思えば幸せだった
そんな中
涼ちゃんは、
死んだ。
僕は、ソロの仕事をしていたんだ
夏の蝉の声と、風鈴の音
誰かに刺されて、出血多量で
腹部に三箇所、刺し傷があった
犯人は、まだ見つかっていない
涼ちゃんのお葬式の日
僕は泣き腫らして帰ってきた
お母さんとお父さんとお兄ちゃんが待つ、家に
背中を叩いて、慰めて欲しかった
涼ちゃんの体温が恋しかった
とぼとぼと家に帰って、リビングに入ると
なんともえない静けさが、体に絡まった
すごく静かで、落ち着いた雰囲気が、怖かった
M.
M.
電気をつけると
そこには
血まみれの家族がいた
返り血を浴びたパーカーの男の人が、真ん中に立っていた
手には、血のべっとりついた包丁を持っていた
その男は見たことがある背格好をしていて
見たことのあるパーカーで
H.
聴いたことのある声をしていた
その人物は間違いなく
M.
若井滉斗だった
僕の幼馴染で、ミセスのギターで
唯一無二の親友だった
M.
M.
H.
M.
若井は口端だけを吊り上げた
『元貴が悪いんだよ』
若井滉斗side.
ずっとずっとずっと
元貴しか見ていなかった
だからずっとずっとずっと
元貴に頼られたかった。 元貴に甘えられたかった。
元貴が苦しい時、寂しい時、きつい時
思い浮かべるのは俺でありたかった
でも、元貴は違うんだ
涼ちゃんにも、家族にも頼るんだ、元貴は
なんで俺を見てくれないんだろう
俺は、俺は__
ずっと、元貴だけを見てた
じゃあ、どうすればいい?
元貴に近づく奴をみんな殺せばいい
殺しちゃえばいいんだ
そうすれば元貴は
俺だけに頼るよね
でも、
違ったみたい、笑
『最低っ…っでてってよ!もう、…やだよっ…っ!』
可愛い顔を歪ませて 綺麗な声を荒げて俺に怒鳴る元貴
違うんだよ
俺はずっとずっとずっと
元貴を一緒に居たかっただけ
だから、だから、
死ぬ時も、一緒だよ
実はさ、バレたんだ
涼ちゃんを殺したこと。警察に、見つかっちゃった。
ほら、パトカーの音、うっすら聞こえるでしょ?
だから、もう死んじゃおっかなって
俺は笑いながら元貴に近づいて包丁を突き立てる
大丈夫、俺も死ぬから
H.
そう言って、元貴の喉に包丁を突き刺した
最後に見た元貴の顔は、絶望に満ちていた
貴方にそばに最期までいるのは
俺だけでいいんだ
俺たち二人だけで、幸せに、なろう。
ねえ、元貴。
end.
こんにちは 過去最長の話です
不穏系を思いっきり書いた時期があって、 語彙力も無茶苦茶だし、展開も急ピッチです。 予告したくせにまじすいません、土下座します
♡&💬よろしくお願いします
それではまた
追記 関係者募集、『無。』の方にて募集中です。 初コメでもいいので是非是非関係者なって下さい!
コメント
6件
ヤンデレいいよねうん こんなのあったら絶対見るよね
不穏で少し怖くなったんですが、それを上回る面白さを感じました🥹 ヤンデレ系、めっちゃ好きです…!✨️
ひやぁ、、、、、、 💙さんなにしてるんすか、、、、、 でもヤンデレさいこうすぎる、、、 最後喉切ったのって ❤️さんの武器である声も自分の物、、的な感じなのかな、、、? 不穏だいすきだぁ、、、、