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うお笑
静かな午後の古典部室は、いつものように埃っぽい空気と古い木の匂いに満ちていた。窓から差し込む陽光が、鉱物標本のガラスケースに淡く反射し、部室全体を薄い金色に染めている。机の上には千反田えるが丁寧に揃えた文集の束が置かれ、福部里志の置いていった参考書が一冊だけ斜めに倒れていた。伊原摩耶花の裁縫道具は引き出しに収まり、俺の存在などまるで感じさせないほど、すべてが静止していた。 俺はいつものように、一人窓際の椅子に腰を下ろして本を開く。ページをめくる音だけが、かすかに響く。やらなくていいことはしない。やらなきゃいけないことは手短に。そう決めて生きてきたこの誰も居ない部室で、今日もまた灰色の時間がゆっくりと流れていくはずだった。
福部里志
ガラッと扉が勢いよく開いた。
折木奉太郎
福部里志
いつものように口元に笑みを浮かべ語りかけてくる。
折木奉太郎
いつもより明らかにエネルギーを消費させようとしている。俺を巻き込んで、俺の灰色を無理やりかき回そうとしている。
福部里志
折木奉太郎
俺は文庫本から顔を上げず、里志の言葉を適当に受け流そうとした。だが、あいつは一度話し始めると止まらない。それはまるで雨日に流れる飛騨川の如く…
福部里志
福部里志
俺はしおりを挟み、本を閉じた。こうなると、少しは相手をしないとあいつは引き下がらない。
折木奉太郎
世間一般で言うところの「輝かしい青春」とやらは、俺にとっては過剰な浪費となる。 彼らはなぜ、そうまでして自らの熱量を他人に、あるいは実体のない『思い出』なんてものに捧げたがるのか。 俺は灰色の人生を自ら好んでいる。 何の色もついていない、淡々とした日常。 それこそが、俺にとっての最も合理的で、 最も平穏な生き方だ。
福部里志
里志は肩をすくめて、いつもの皮肉と軽い笑みを浮べる。
少し間を置いてから、彼は続ける。
福部里志
福部里志
福部里志
折木奉太郎
俺は椅子の背もたれに体を預け、天井を仰いだ。里志の言うことは、理屈としては通っている。合理性で割り切れない感情の動き、それこそがきっと、「青春」という名の非効率なエネルギー消費の正体なんだろう。
折木奉太郎
福部里志
里志は少し目を丸くして、笑いながら、軽くうなずく。
福部里志
福部里志
折木奉太郎
福部里志
俺は視線を逸らし、静かに吐き出した。
折木奉太郎
福部里志
福部里志
俺も男子だ……本音を言うと興味がないわけではない。その行為に否定的な想いがあるわけでもない。
けれど、それは俺のモットーではない。
折木奉太郎
薔薇色の青春、学校生活に憧れるのは個人の自由だが、俺は灰色のままで十分だ。
折木奉太郎
里志はにやりと笑う、 何か言いたげそうに、口を開こうとした瞬間――
そのとき、部室のドアが音もなく開いた。 さっきまでの会話が、どれだけ気楽なものだったかを思い知らされる。男子高校生のくだらない談義。 今それが終わった瞬間、俺の前には別の問題が現れる。 もっと現実的で、もっと面倒で、そしてたぶん この先の学校生活にまで影響しかねない種類の問題だ。
正直に言えば、関わりたくない!
千反田える
彼女は少し嬉しそうに微笑みながら、部室の中を見渡す。
伊原摩耶花
福部里志
伊原摩耶花
ため息をつきながら椅子を引く。 そのとき、えるが首をかしげる。
まずい……!
千反田える
彼女の瞳が少しだけ輝く。
千反田える
一歩、机に近づく。 彼女の瞳の奥の好奇心の炎が燃え上がる
千反田える
折木奉太郎
俺君
俺君
俺君
折木奉太郎
福部里志
千反田える
伊原摩耶花
里志、千反田、伊原、「みなさんありがとうございました!」
俺君
千反田える
伊原摩耶花
俺君
本当の本当に終わり
読者