疲れた。 疲れてしまった。
グループから追い出されて、会社から追い出されて、拾われたと思ったら裏切られて、一人になって
スタッフもリスナーも、皆どこかよそよそしい。あの時みたいに、はっきり言ってくれる人も、どこにも居ない。なら、
もう、いいよね。
夏を乗り切るつもりだった。
もっと歌って、踊って、喋って、生きて。
いつか、一人だけで武道館に立ってやろう。
そう思っていた。
駅への道を歩く。
街は灰色で、道行く人も、ただ口を動かしているだけの金魚の様に見えた。
本当に自分が疲れているんだと実感させられる。
でも、そんな自分を慰めてくれる人間なんて居ない。
怖がりな僕は、誰かに助けを求めることも出来ない。
死へまた一歩、進んでいくことしか出来ない。
改札を通る。
大切なものは全部置いてきた。
財布とスマホはテーブルの見える位置において、
鍵は弟の家のポストの中に。
与奪達にはかなり多めの食事と水を置いてきたから、きっと大丈夫。
心残りは沢山あるけれど、きっと何もかも叶わない。
誰も、僕がいなくなったって悲しまない。
だから。
黄色い線を超える。
軽く前に跳ぶ。
レールの掠れる音が、やけにゆっくりと響いた。
痛い。
でも、街が何となく、綺麗だ。
バンッ
なんだか、ザワザワとしている。
空気では分かるけれど、音一つ聞こえない。
そういえば、今は夕方なんだっけ。
だから、こんなに人がいるんだ。
皆が、僕を見てる。
でも、もう僕は助からない。
至る所から血が出てるし、視界も段々とぼんやりしてきた。
いくら早く運ばれても、もう遅いだろう。
ああ、こんな所で終わるんだ、僕。
もっと歌いたかった。
もっと話したかった。
誰でもいいから聞いて欲しかった。
辛いって分かって欲しかった。
もっと優しくしたかった。
もっと色々出来たら良かった。
ゲームとか、台本読みとか、運動とか、勉強とか、もっと出来る人でいたかった。
もっと、騎士Aにいたかった。
もっと皆でゲームしたかった。
もっと皆でバカみたいな動画を撮って
もっと皆で凄い歌みたを撮って
もっと皆で人を喜ばせて
ライブをして
CDを出して
テレビに出て
もっと
もっと
もっと
もっと
もっと
あれ、僕、なんで泣いてるんだろう。
もう、何もかも遅いんだから…泣いちゃ、いけないのに…
あはは……
…最期まで、一人だな…僕は………
「ゆきむッッッ!!!!!」
音のない世界で、唯一その声だけがはっきり聞こえた。
「ゆきむッ!!まだッ!!まだ死なないでッ!!待って!!」
「俺を…っ、俺をッ!!一人にしないでッ!!」
…一人にしたのはどっちだよと言いたい。
それでも、ここにいるのはお前だけで。
どちらも裏切ったのはお前だけで。
…はは、馬鹿だなぁ
悲しくなんてない。
だけど、もし、生まれ変われるのなら
どうか
透過
ま た 会 い ま し ょ う
「 」
「ゆきむッ?!ゆきむッ!!!
It was a very nice June.
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