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凌は家に帰り、自分の部屋のベッドで大の字になって寝ていた。

桐山 凌

はぁ……

明里と喧嘩して1週間近く経つな。

桐山 凌

(アイツ、何も俺に話しかけてこねーし)

桐山 凌

(もう一生、このままなのかよ)

ズキッと心が痛む。

俺がそんな悪いのか?

明里だって、陸と抱き合ってたじゃねーか

浮気だろ、あんなの

桐山 凌

(なのに……)

あんな顔、ぐちゃぐちゃに泣きやがって

俺が完全悪者じゃないか。

桐山 凌

(どうすれば、いいんだよ……)

その時、

コンコンコン、と部屋のドアがノックされた。

南 凪沙

凪沙だよー入っていいー?

桐山 凌

……ああ

桐山 凌

いいよ

凌はムクリとベッドの上に座り込む。

凪沙はドアを開けて部屋の中へと入ってきた。

桐山 凌

何か用か?

南 凪沙

あー……えっとね

凪沙は気まずそうに凌から目を背ける。

桐山 凌

南 凪沙

バ…バレー

南 凪沙

凌ちゃんが高校でもバレー続けてくれて嬉しいの!

桐山 凌

……はぁ?

桐山 凌

(なんなんだ、急に……)

南 凪沙

私もバレーしてたけど、花ノ宮にバレー部ないし

南 凪沙

だから私は中学でバレーやめちゃったしー……

桐山 凌

…そうだな

桐山 凌

でも俺にバレーを教えてくれたのは……

桐山 凌

誰でもない。凪沙だからな

南 凪沙

ー12年前ー

うわぁああ〜〜〜んッ

5歳の凌は大粒の涙を流しながら立っていた。

男の子たち

すぐ泣くなよ、弱虫!

男の子たち

バーカバーカ!

ひぐっ……うぅ……

バカじゃないもん……っ

男の子たち

バカだろー!

男の子たち

バーカバーカ!

うっ……うわぁああんっ

その時、遠くから走ってくる足音が聞こえた。

凪沙

コラぁあああ!!

凪沙

凌ちゃんいじめんなあああ!

凪沙は拳を突き出しながらこちらへ突進してきた。

男の子たち

うわっ!ゴリラだゴリラ!

男の子たち

逃げよーぜ!

凌をいじめていた男の子たちはそそくさと逃げていった。

うぅ……凪沙ちゃん__

凪沙

はぁ……

凪沙

凌ちゃんってホント泣き虫だねー

……凪沙ちゃんはずるいだけだよ

背が大きくて、強そうだもん!

凪沙

ふふっ

凪沙

凌ちゃんは私に比べておチビさんだもんね!

ち、ちがうっ

これから大きくなるんだ!

凪沙

ふーーん

……あれ?

凌はふと凪沙の持つ黄色のボールが目に入った。

なにそのボール?

サッカーボールじゃないよね……

凪沙

これ?

凪沙

バレーボール!

凪沙

お母さんが教えてくれたんだー!

ば、バレー……?

凌の目がキラキラと輝いていた。

凪沙

……

凪沙

凌ちゃんも、やる?

うんっ!

やる!!

ーーー

南 凪沙

……って感じだったよね

桐山 凌

そんな昔のこと覚えてねーよ

南 凪沙

えー?

南 凪沙

私は覚えてるよー!

南 凪沙

凌ちゃん、いっつも泣いてたじゃん!

南 凪沙

あははっ

桐山 凌

うるせー

南 凪沙

あんな泣き虫でチビだったのに

南 凪沙

今や真反対の人間になっちゃったね

桐山 凌

いつまでも弱虫のままじゃいられねぇからな……

南 凪沙

……ははっ

すると凪沙は凌の隣、ベッドの上に腰を下ろした。

桐山 凌

おい__

南 凪沙

2年前のことも覚えてる?

桐山 凌

は?

桐山 凌

中学…3年生の時か

桐山 凌

…覚えてるよ

桐山 凌

父さんと母さんが離婚して__

桐山 凌

俺が……

桐山 凌

精神的に参ってた時だったよな___

ー中学時代ー

桐山 凌

うっせーよ!!

凌の声がキンと体育館に響き渡る。

桐山 凌

…お前に、俺の何がわかんだよ!

水木 陸

…はぁ?

水木 陸

凌、お前が今どれだけチームから孤立してるのか分かってないのか!?

水木 陸

バレーは個人技じゃないんだよ!

水木 陸

凌、もっと皆と連携を取って__

桐山 凌

お前らが…

凌はギュッと拳を握りしめた。

桐山 凌

俺についてこないのが悪いんだろ

水木 陸

水木 陸

いい加減にしろよ……!

陸はキッと凌のことを睨んだ。

桐山 凌

水木 陸

お前の家庭事情は知ってる

水木 陸

そのせいでピリついてることも知ってる

桐山 凌

…っ

水木 陸

でも、

水木 陸

そんな私情でプレーに支障が出るやつはチームにいらない

桐山 凌

凌はグイッと陸の襟を掴んだ。

コーチ

おいお前ら!いい加減に__

桐山 凌

何も知らないくせに…!

俺からバレーを奪ったら何が残る?

母さんは家を出ていった

俺のことを捨てたんだ…

そんな俺は、バレー以外何も無い。

陸に…

俺の何がわかるんだよ…!!

桐山 凌

……っ

凌はバッと右の拳を突き上げた。

水木 陸

それを陸に向かって振り下げる。

バァンッ!!

桐山 凌

!?

その時、凌の頭にすごい勢いで飛んできたバレーボールが衝突した。

水木 陸

…え?

桐山 凌

……

凌はバレーボールが飛んできた先に目をやる。

南 凪沙

…はぁっ、はぁ…

凪沙が涙目で2人の様子を見つめていた。

凌はポカンとして陸から手を離す。

桐山 凌

凪沙…

桐山 凌

お前、今俺に__

南 凪沙

2人の声、隣の女バレのコートまで丸聞こえだよ…

桐山 凌

……

桐山 凌

お前まで…俺に説教する気か?

南 凪沙

……っ

すると凪沙は足元に転がっていたバレーボールを手に取り、

バチンッと凌の向かってスパイクを打った。

桐山 凌

…なんだよ!

凌はそれをかわす。

南 凪沙

バレーボールは武器じゃない!!

南 凪沙

相棒なの!

桐山 凌

南 凪沙

私、小さい時パパが死んじゃって__

南 凪沙

私もパパに置いてかれた、捨てられたって思ってた

南 凪沙

でも、バレーと出会えて

南 凪沙

バレーをする時だけ、寂しさを紛らわすことができた

南 凪沙

凌ちゃんは今、バレーを武器として使ってる

桐山 凌

南 凪沙

でも違う!

南 凪沙

バレーボールは人を傷つけるためにあるんじゃない

南 凪沙

自分を守るためにあるんだよ!!

凪沙はそう泣き叫びながら凌に向かってもう一度スパイクを打った。

桐山 凌

……

凌はかわすことなく、ボールは凌の局部に激突した。

南 凪沙

あ……

水木 陸

うわ…

桐山 凌

〜〜〜ッ

凌は痛みで涙目になりながら、その場に跪く。

桐山 凌

いってぇ…

南 凪沙

ごごごごごめ!!

南 凪沙

凌ちゃんの大事なところに当てるつもりじゃなくてっ

水木 陸

あっははは!!

桐山 凌

……陸は後で殺す

桐山 凌

…でもありがとう、凪沙

桐山 凌

お前の1発、なんかガツンときたわ

南 凪沙

凌はフラフラとしながらその場に立ち上がる。

桐山 凌

俺に残ってるのはバレー"だけ"…

桐山 凌

…違うよな

ボロボロになっても、

そんな俺の隣に居続けてくれるのは

なんでもない、"バレー"なんだ。

バレーだけは俺の隣にいてくれる

一緒に戦ってくれる

絶対に俺から離れない"相棒"か…

桐山 凌

ははっ

桐山 凌

陸、早く練習再開すんぞ

水木 陸

…おう!

桐山 凌

…あ、

桐山 凌

あの時の礼。言ってなかったよな

南 凪沙

桐山 凌

ありがとう、凪沙

桐山 凌

凪沙の言葉のお陰で

桐山 凌

俺は今、バレーを続けてる

南 凪沙

あ、…

南 凪沙

あははっ、大袈裟だってば

凪沙は顔を赤くして凌から目を逸らす。

桐山 凌

大袈裟じゃねぇよ

桐山 凌

俺にバレーのきっかけをくれたのも、

桐山 凌

俺にちゃんと説教してくれたのも、

桐山 凌

凪沙だけだ

凌は優しく微笑んだ。

南 凪沙

…!

南 凪沙

……

凪沙は目を丸くし、俯いて黙ってしまった。

桐山 凌

いつもの「あはは」はどうした?

南 凪沙

…そんな余裕、ない

桐山 凌

どういう意味__

凪沙は顔を上げ、じっと凌のことを見つめた。

南 凪沙

私が今からすること、

南 凪沙

許して。

そう言うと凪沙は凌の方にグイッと体を寄せた。

桐山 凌

…はっ?

凪沙は凌の首元に手を回し、ギュッと正面から抱きついた。

桐山 凌

なにすん__

南 凪沙

そのまま凪沙の唇は、凌の首筋に優しく触れた。

桐山 凌

!!

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コメント

5

ユーザー

え、、、、な、凪沙ちゃん、、?

ユーザー

波乱の予感が…

ユーザー

毎日投稿嬉しいです!! でさ、何かこのシーン、明里ちゃんのやろうとしたことと似てるような... 気のせい、かな...??

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