ハク
俺が狐の神だ。
ひろと
え……嘘…だろ…。
ひろと
(食べるために…拾いに来たんだ…。餌である俺を…。)
ハク
どうした??顔色悪いぞ。
ひろと
あっ、俺……。
ハク
………。
ひろと
(こういう時に限って、頭回んねぇ…!!)
ハク
言っておくが……
ひろと
嫌だ!!
ハク
?!
ひろと
ごめんなさい…。ごめんなさい…。
ハク
お、おい…。
ひろと
嫌だぁ…。死にたくない…。
ハク
落ち着けよ。
ひろと
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
ハク
おい!いい加減に!!
ひろと
うぁ?!
ハク
……。
ひろと
(な、何だよ…。食べられる…!!)
ハク
どうやら、その反応は俺が狐の神だって事を信じてくれてるようだな。
ひろと
えぇ……。あぁ…。
ひろと
(焦って俺が食べられる事しか考えてなかったけど、嘘の可能性も……。)
ひろと
ち、違うの??
ハク
いいや、本物だ。
ひろと
ほ、本物なんだ……。
ひろと
でも、なんで人間が狐の神って呼ばれるように…??
ハク
これを見ればわかるさ。
ひろと
どういう……ことだ…??
目の前にいたはずのハクが一瞬にして体の小さな白い狐に変身していた
ひろと
(まさか……そういうこと……??)
ハク
………。
ハク
そういう事だ。
ひろと
………。
ハク
まだ怯えてるようだな。
ひろと
狐の神の生贄……だから。
ハク
………。
ハク
言っておくがな、ひろと。
ひろと
な……に??
ハク
俺は人は食らわん。
ひろと
………。
ひろと
そ、そうなの…??
ハク
もちろん。人肉など食したくない。だから、安心をしろ。
ひろと
狐の神は……人間を食べないのか……。
ハク
しかし俺はな、お前を含め14人の生贄を見てきた。
ひろと
そうなんだ…。
ひろと
………。
ひろと
ぜ、全員を?!見てきた?!
ハク
あぁ。
ひろと
生贄の伝統が一番最初に行われたのは1000年も前だけど……??
ハク
あぁ。
ひろと
てことは、1000歳は越してるってこと?!
ハク
あぁ。
ひろと
(何それ……怖い。)
ハク
いいか、村の連中に言っておけ。俺は、山の山菜を採られることに関しては少しも怒っちゃいないと。
ハク
でもな、生贄だ。毎回生贄を山に捨てられるのもこっちが困る。生贄の死体処理などな。
ひろと
ちょ、ちょっと待って。他の生贄は救わなかったの??
ハク
いいや、救えなかった。
ひろと
なんで??
ハク
俺が気づくのが遅かったんだ。だから、熊に襲われてたり、イノシシに襲われてたり、生贄の死に方は様々だった。
ひろと
………。
ひろと
(すごい……恵まれてるな。俺って。生贄になって、村を追放させられて、昨日までは不幸にしか思ってなかった。でも、死ぬ前にハクが救ってくれた。こんなにも恵まれてたんだ。)
ハク
全てあの村長に言っておけ。
ひろと
でも…
ハク
??
ひろと
さっきも言ったでしょ。生贄は村から永久追放されるって。
ハク
そうか、肝心なことを忘れてた……。
ひろと
………。
ハク
………。
ひろと
帰る家無いし……。
ハク
よし。とりあえず、数日間はここに居ろ。
ひろと
(笑ってる……。)
ひろと
あ、ありがとう!!
そして、ハクが数日間と言いつつ長い月日が流れ、来る秋のこと
ひろと
わー、やっぱりこの山の紅葉綺麗だよね。
ハク
そうだな。
ひろと
ハクは俺が来る前、ずっと1人だった??
ハク
そうだ。
ひろと
そっか。
ハク
話せる相手がいて、俺は嬉しいぞ。
ひろと
えぇ…そう……か。ハクが嬉しいなら、俺も嬉しい。
ハク
雨だ……。
ひろと
でも、小雨だな…。日は照ってるのにね。
ハク
あぁ。
ひろと
虹かかるかな??
ハク
どうだろうな。
ひろと
お天気雨。
ハク
なんだそれ。
ひろと
こういう、太陽は出てるのに雨が降ってる時のことを言うんだよ。
ハク
………。
ハク
違う。
ひろと
え??
ハク
違う。
ひろと
じゃあ、なんて言うの??
ハク
狐の嫁入りだ。
ひろと
狐の…嫁入り……。
ハク
あぁ。
ひろと
初めて聞いたな。
ハク
そうなのか。
ひろと
なんか、いい響きだな。狐の嫁入りって。
ハク
………。
ひろと
うわっ!!ちょ、ハク?!///
ひろと
は、離せよ!///
ひろと
(顔……近い………///)
ハク
ひろと。
ひろと
んん………な、何だよぉ…///
ハク
好き…だ。
ひろと
………。///
ひろと
ば、馬鹿じゃないの?!///
ハク
いいや、至って俺は真面目だ。
ひろと
(………。)
ひろと
(相変わらず、表情硬いんだよ…。そんな顔で言われても…。)
ハク
人間は情けなく、残酷で卑怯な生き物だ。
ひろと
え……??
ハク
愛などない。仲間を生贄として見捨てる。
ひろと
それは……。
ハク
しかし、そんな人間から俺は愛を貰った。
ひろと
………。
ハク
お前からだ。1人だった俺と暮らすようになり、俺はお前に惹かれていった。
ひろと
そ、そうだったのか……。///
ハク
なぁ、ひろと。
ひろと
???
ハク
このままずっとここで暮らさないか??
ひろと
………。
ハク
2人きりで。
ひろと
(笑わないし、感情も読めない。正直、愛がないのはどっちだって思う。すこし荒っぽいし、狐だし。神だし。大人しくて、たまに気まづいし。)
ひろと
(だけど優しくて、かっこよくて、頼りになって、俺も大好き。)
ひろと
(いつの間にか俺もハクに引かれてた。)
ハク
………。
ひろと
俺も……。
ひろと
ずっとハクと一緒に居たい……。///
解説
外縁とは、上の画像のようなテラスのような所のことです。
ちなみに、ハクが住んでいた家はこういう木造建築という設定で話を進めていました(普通に前回の話で解説つけて画像貼っとけばよかった😓)