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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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君が走る度に歓声が聞こえる

甲高くてちょっと苦手だけど

皆、君が好きで 声をあげてるんだ

君は知ってるのかな

    

キャーッ、敬紀くーん!!

(やっぱ敬紀くんは人気者だなぁ…)

群がる女子達を見ながら 少し呆れた

なんだか 囲いみたいで怖くない?

だから、私は歓声なんかあげない

(君を思ってることには変わりないけどね。)

胸の内でこっそり君を思う

それが不器用な私の 恋の仕方だから

パァンッ

アンカーのゴールを 告げるピストル

クラスメイト

やったー!一位だ!

クラスメイト

さすが敬紀!

口々にあがる賞賛の声

それに合わせて私も拍手をした

これくらいなら…良いよね…?

(一位を喜んでるだけだもん…ね)

自分に言い聞かせて

ちょっと笑った

空が赤く染まって

カラスの鳴き声が 足を急かす帰り道

残暑があるせいか 私の首筋には汗が滲んだ

それにしても…

あっつ…

思わず呟くと

 

そうだと思った

後ろからの声と共に 冷たい感触が首に走る

ひょえぇっ?!

敬紀くん

あ、こっち向いた

振り向くと やわらかく笑った敬紀くん

その手にはソーダの缶

やば…汗でベタベタの顔 なんて見られたくないよっ!

必死で見られないように俯いても

君には意味がなかった

敬紀くん

はいっ!

敬紀くん

差し入れ!

顔を覗き込んで ニカッ、と笑う彼

半ば強引に缶を 押し付けられた

……ありがと。

敬紀くん

どーも。

蓋を開けると シュワッ、と私の好きな音

口に入れるとほんのり 甘い味が鼻に抜けた

…美味しい

敬紀くん

でしょ?

敬紀くん

それ、好きなんだよね

缶を指差しながら君が笑った

「微炭酸ソーダ」缶に書かれた 6文字を見つめて

しっかりと名前を覚える

私も、好き。

敬紀くん

……良かった。

このソーダも、君もね。

そんな言葉を

言いそうになって ちょっと焦って

甘い微炭酸の二杯目と共に 飲み込んだ

敬紀くん

敬紀くん

俺さ、アンカーじゃん。

……うん

急に話し出す敬紀くん

ちょっと焦りながらも 言葉を返す

敬紀くん

だから、さ

敬紀くん

頑張りたくてさ。

……うん

遠くを見る目は輝いていて

どこかせつなそうだった

敬紀くん

選抜リレーで一位取ったら、告白するんだ。

へぇー……

敬紀くん

なんて

敬紀くん

ごめん、こんな話

恥ずかしかったのか 頭を掻いて笑っていた

ううん、頑張ってね

応援、してる。

私も慌てて笑顔を作った

炭酸の泡みたいに すぐに弾けて消えそうな笑顔を

敬紀くん

俺、こっちだから

私の家と反対方面を指差した君

そっか。

またね、バイバイ。

ぎこちなく手を振って 私達は別れた

ゔぁぁぁぁぁぁ………

声にならない叫びを枕に沈める

さっきから自分の最低さと 葛藤していた

ああああ!!

もう、なんなの?!

自分のこと好きだと知らないのを いいことに!

なんで告白の予定とかぁぁぁ!!

ずるいよ……

思わず、枕に顔を背けて呟く

君から貰った 残り少ない缶が目に入る

お返ししなきゃな…

でも、あんなこと言われたら 会いたくないよ…

勝手に失恋したみたいじゃん…

そう言いながら少し涙が滲む

これでもまだ好きとか

未練がましすぎる…

……ばかっ

小さく叫んで

再度枕に突っ伏した

体育祭当日

私は少しだけ浮かない気持ちで 個人種目をこなした

(あの日からずっとこれじゃん…)

(早くけじめつけろ、っての。)

あの炭酸は気が抜けたはずなのに

この恋の気は抜けなくて

サイダー色の空が 嘲笑うように見下げていた

放送

次は、選抜リレーです

ボーッとした頭に 放送席からの声

敬紀くんのファン達が 立ち上がった

(やっぱ敬紀くんは人気だなぁ)

あの中に敬紀くんの 好きな人もいるのかな

私も一緒になって 応援してれば良かったかな

なんで素直に 応援してないんだろう

(あぁー!もー!)

襲いかかる自己嫌悪

無理矢理笑顔を作って クラスメイトと一緒に手を叩いた

パァンッ

    

わーっ!!

女子の歓声と共に ゴールを告げるピストル

案の定、君は トップでゴールしていた

クラスメイト

さすが敬紀!

クラスメイト

練習よりずっと速くない?!

クラスメイト

すごいよ、敬紀くん!

次々とあがる賞賛の声

(漫画の主人公みたいだね、君は)

祝福と共にそんな事を思って

なんだか皮肉みたいだ、と 自分をまた嫌った

(告白、頑張ってね)

胸の内でそっと呟いた

体育祭が終わって

帰りのホームルームも終わって

丁度君が教室を 出ていく所だった

きっと、これから 告白しにいくんだろう

でも、なんだかそれが悔しくて

教室を一歩出た君を 止めてしまった

……待って!

敬紀くん

えっ…?

驚くように目を丸くする君

咄嗟に掴んだ君の袖

顔が熱いな

真っ赤になってたり しないよね…?!

鳴り止まない心臓を 落ち着かせる為に深呼吸

吸っては吐いて新しい空気が 私を浄化していくみたい

───よし。

君の目を見て

あの日ソーダをくれた 君のように

優しく笑った

頑張ってね!

敬紀くん

え?

告白っ!

弾けるような笑顔を浮かべた君

あの微炭酸に 似合っているなぁ、と

心の隅っこで思った

敬紀くん

うん。

敬紀くん

ありがとう!

弾ける笑顔は崩さずに

軽やかに走り去っていく君

迷いのない、足取りだった

……言えなかったな

私の気持ち知っても、ね

君を困らせるだけなんだよ

きっと

ホットココアの時期には この恋も気が抜けてるだろうから

きっと新しい彼女と君は ココアを飲むだろうから

私の想いと一緒に 飲み込んでほしいなぁ

だから

その時まで

好きだよ

未だ気の抜けない想いが

君に言えなかった想いが

少しだけ、廊下に響いた

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3,733

コメント

80

ユーザー

微炭酸ソーダ美味しそう…←そこじゃない あと、ココアもいいな〜 表現を微炭酸ソーダに例えてていいと思ったヨ👍ぐっど

ユーザー

想う人は主人公…?と思ったけれどそんなに甘くないですよね… みんなのように声援を送ればよかった…と後悔していくのが青春の醍醐味ですよね…!

ユーザー

キュンキュンー!甘々ー!って感じでは無かったですね…取り敢えず失恋させたかったので笑

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