テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
青塚
紫乃
つい1週間前にスマホでのやりとりを思い出して、青塚は肩を竦めた。 そして今日は約束の日。だが、生憎と予定がある。それにしても、何かと実家に帰ってこいと煩い妹にはもういい加減うんざりだった。
青塚
青塚
思わずブツブツと呟きながらポケットから鍵を取り出し、アパートの自室の鍵を開けようとする。が、何故か鍵は開いていた。 今日学校に行くとき、時間ギリギリだったので焦っていたから忘れたのだろうか?
青塚
いや、そんなはずはない。何かと几帳面な人間、むしろ心配性だとさえ言われるのに学校に遅れそうなくらいで鍵をかけ忘れるなんてことがあるだろうか。
青塚
盗まれるものでもあっただろうかと思いながらも、慎重にドアノブを回す。玄関に入ると、見覚えのないローファーが綺麗に揃えられて置かれていた。サイズからして、女物のようだった。
青塚
大学に入ってから付き合いだした恋人のものではない、と思う。そもそもまだ家に招いたことすらない。というより、今日初めて来るのだ、恋人が。さっき連絡した感じではまだ向かっている最中だ。じゃあ、いったい誰なのか。何となく察しがついてはきたが、それでも用心に用心を重ねて靴箱に立てかけてあったビニール傘を手に取る。こんな物で戦えるわけないだろうが、無いよりはマシだろう。
青塚
居間の半分を占めるベッドの上で胡座をかいた妹の紫乃の姿を見て、青塚は思いっきりため息をついた。さすがに家にまで侵入してくるとは恐れいった。
紫乃
青塚
紫乃
青塚
問答無用な紫乃の口調に青塚は口を閉じるしかできなった。だが、恋人のことを思い出して自身を奮い立たせた。
青塚
紫乃
青塚
紫乃
青塚
紫乃
青塚
思わず素で言ってしまった青塚を紫乃が睨んだ。
紫乃
青塚
紫乃
青塚
紫乃
紫乃は本当に誰かに電話をかけはじめた。まさか本当にいるのか? 妹の人となりをよく知る青塚にはにわかに信じられなかった。
紫乃
青塚
嫌な予感というやつがにじりにじりと寄ってきている。玄関のチャイムが鳴り、紫乃が招き入れた相手を見て頭を抱えた。
青塚
紫乃
紫乃の後ろに立つ強面なお兄さんはまるで、外からの射光も相まって守護神のようだった。
妹はとにかく、尋常じゃないレベルで常識が欠如していた。いや、常識というよりも人を疑うことを知らないというか、世間のことを知らなすぎるというか。これもひとえに親が蝶よ花よと育てたのが原因だろう。なので妹が悪いというわけでは決してないのだがいつも彼女が招き寄せる出来事で今までどれだけ苦労をしてきたか……
思考が突風のように吹き荒れている中、青塚は無意識に土下座をしようと前かがみに姿勢を変えていた。
青塚
妹の為に土下座をした回数を頭の中で更新し、青塚は本気で泣きたくなった。
暁音
彼女の声がした。最悪のタイミングである。床に押し付けた額は一生、上げられる気がしなかった。
青塚
3人だけとなった部屋の中で、青塚の声がやたらと響く。先ほどの強面のお兄さんは意外にも簡単に退散していった。青塚の土下座があまりにも哀れだったからか。とにかく、自尊心がズタズタになっただけで済んだ。だけ、なのかは微妙なところだが。
紫乃
青塚
紫乃
暁音
遂には彼女にまで宥められる始末。先ほどからみっともない姿しか見せていないことに青塚は内心焦っていた。
紫乃
青塚
暁音
青塚
思わず間抜けな声を上げた青塚だったが、彼女は何も言わない。先日、告白して付き合うことになったのは自分の妄想だったのか?
紫乃
暁音
紫乃