桜が咲き始めたころ… 俺は病院にいた
結弦(ゆずる)
暇だな…
結弦(ゆずる)
ロビーにでも行くか。
なんとか車椅子に乗り、エレベーターへ向かった。
結弦(ゆずる)
車椅子に乗り降りするだけでも、結構苦労するんだよな…
ロビーへ着くと受付に2人の女性がいた。 親子だろうか。
結弦(ゆずる)
(入院、するのかな、可愛い人だな)
結弦(ゆずる)
(…って、変態じゃあるまいし…)
結弦(ゆずる)
(第一、あの子が俺の部屋の近くに来るかどうかすら分からないのに。)
もんもんと考えながら、小さな本棚にある漫画を取り出した。
明日香(あすか)
(……暇、だな)
明日香(あすか)
(お母さんと受付の人、色々話しているけれど、全く聞こえない。)
明日香(あすか)
(普通に聞こえたら、病院なんて来なくていいのに。)
今言った通り、私は耳が聞こえない。
だから、手話や紙に書いて話をしている。
明日香(あすか)
(…あ、)
車椅子に乗って漫画を読んでいる男性を見つけた。
明日香(あすか)
(同い年くらいかな…足の病気?)
母
⦅トントン、⦆
明日香(あすか)
!
肩を優しく叩かれ、話が終わったのだと悟った。
明日香(あすか)
⦅なんて言ってたの?⦆
母
⦅明日から入院だから、支度しておいてって⦆
明日香(あすか)
⦅分かった、帰ったら支度しておくよ。⦆
明日香(あすか)
(紙に書いて話すのも、相手にとっては楽なんだろうけど、やっぱり私にとっては、手話の方が楽だな)
その事を小学校の時に伝えたら、納得してくれたようで、今では家族皆、手話を覚えている。
母
⦅会計、済ませてくるから、車に行ってて⦆
明日香(あすか)
⦅分かった。⦆
お母さんに車の鍵をもらって、ロビーを抜けた
明日香(あすか)
(明日から…入院か…)
明日香(あすか)
(きっと暇だろうから、暇つぶし出来るよう、色々準備しておこう。)