奈良泰晴、旧名二楽泰晴
もともと母は名家の当主の愛人だった 正妻が病で亡くなり、 後妻として母は二楽家に入った
正妻の子供達はもちろん歓迎しなかった 母も俺も周りから嫌な目で見られる日々が続いた
でも、母はまだ良かった 愛してくれる当主がいたから
俺は母にも当主にも、兄弟にも 愛されはしなかった
案の定、兄弟達は俺と母を呪った
呪われた子供など面倒だと思われたのだろう
俺は六歳で涼風家へ使用人として売られた
呪われた子供が御三家に売られるということは珍しくはなかった
だから周りにも同じような境遇の者が 山ほどいた
周りにはこの状況に嘆く者もいた 毎晩のように泣く者もいた
俺にはわからなかった 愛されたことがないから 愛されないことを嘆けなかった
俺は生きたいとも死にたいとも思わない やれと言われたことをただ忠実に淡々とこなすだけ
意味もわからず、考えず 感情を持たずに
俺はよく働いた だから出世するようになった
そして、俺が涼風家で働き始めてから二年が経った頃、
涼風家に三つ子が生まれた
その話は当然俺たちのような下働きのところにも聞こえてきたが、
その頃はまだ、関係ないと思っていた
真子
宙
海
陸
そのちょうど半年後ほどに俺は宙様らの専属使用人となった
今までの使用人は彼らを見分けることができなかったらしく、
上司はとにかく使える使用人を出せと当主様と奥様に言われていたそうだ
きっと俺も最初は期待されていなかっただろうが、
初めて当主様にお会いしたとき、
初対面の俺に当主様が仰られたことを覚えてる
「特別な子をよこしたね」
その言葉の真意はわからない
とにかくその瞬間から俺の人生は転機を遂げた
すぐに“高等の証”を与えられた
雑用はなく、前よりも何倍もいい生活をするようになった
俺自身も前とは少し変わった
自分のことも人のこともけして共感することはなかった
でも、彼らは違った
成長の過程を全て見てきたからだろうか
痛みを理解することができた
蓮
陸
蓮
宙
蓮
蓮
蓮
宙
海
真子
海
宙
真子
宙
真子
宙
どんどんと宙様の心が暗くなっていくのを感じた
彼らは宙様をまるで無いもののように扱うが、俺にはそれがわからなかった
奥様や旦那様に愛されないのならその他の人間が愛して差し上げればいいじゃないか
例えば、、、俺とか
宙様はお人好しがすぎる
何か埋めるものを差し上げなくてはならないと、そう、、、思った
宙
奈良
宙
奈良
宙
奈良
奈良
宙
宙
奈良
宙
宙
奈良
宙
奈良
宙
奈良
宙
奈良
宙
奈良
宙
宙
奈良
奈良
宙
宙様にとって愛してくれる家族のような存在になって差し上げたかった
そうでなくとも、少しでも優しくして、傷を癒して差し上げたかった
「兄貴みたいだな」
奈良
〜終〜
コメント
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奈良……スパイかもって疑ってごめんよ……。