そばにいたい

車を走らせる

無馬に言われていた

「他の組織にあわせるな」

「特に餡ブレラ」

ルカを預かる条件

何があったのか

理由は聞けなかった

無馬がきかせなかった

ルカには秘密があることは

花屋との態度の変化から

なんとなく気づいた

ゆっくり

知ればいいと思った

でも

車を停める

仮面を外す

彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃだった

泣いてる？

私、泣いてるの？

言われて頬を触るまで

泣いてることなんて気づかなかった

あの時

あの男の声

あの男の顔を見た時

急に胸が締め付けられ

息が止まるような感覚に襲われ

目の前が真っ暗になった

私の体なのに

制御できなくて

急に悲しくなったような

変な感覚に陥った

乗っ取られたような

不安

世界に1人ぼっちになったような

恐怖

彼にしがみつく

自分が消えてしまわないように

繋ぎ止めて欲しくて

指先の感覚がなくなる

こわい

怖い

消えたくない

指先が冷たくなる

全身から体温がなくなる

彼の熱が唇から伝わる

そこだけ自分の存在が戻った感覚

アジト

繋いだままの手を離せないでいる

嘘をついた

いや

自分でもよく分からない

違う国のある組織にいたこと

任務を失敗して

記憶を消された期間があること