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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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数ヵ月前

7月。

暑くて、蝉が煩くて、良いことが ない筈の夏。

それでも、夏服に変わる!とか、些細なことが幸せで。

私の誕生日の月でもあるから。

だから、私は夏が好き。

誕生日の日、君は、クラス全員がいる 前で、堂々と言った。

「好きです!付き合ってください!」

ヒューヒューって、冷やかしの声が 遠くから聞こえる。

けど、そんなことは気にならない くらい、吃驚してた。

「良いよ…。私も、好きだから、 その…良いよ。」

語彙力なんて無かったけど、思いは 精一杯伝えたつもり。

前を見ると、君は笑顔で本当に幸せって顔をしてたっけ。

勿論冷やかされたけど、嬉しさで 気にはならなかった。

毎日些細なことが幸せで。

その幸せが、絶対続くものだって、 私は信じていた。

3月。

終業式の後。

一緒に帰ってたら、彼は立ち止まった。

少しだけ、困った顔をした君。

数分間固まって、決意を決めたように、顔をあげた。

そのときの君の目は、

太陽のような大きな瞳だった。

大きな瞳は、私を真っ直ぐにとらえて、

ゆっくりと、慎重に、言葉を 選びながら、一言。

「俺と、別れてくれませんか?」

急に言われて、私は、ただ、棒立ちするしかなかった。

本当は、嫌だったけど、けど、私は、 弱虫だから、ただ、一言。

「分かった。いいよ。」

弱虫だから、言えなかった。

そのあと私の行動を覚えていない

気づいたら自分のベットの上だった。

頬を触ると、少しだけ、濡れていた。

全く実感がわかない。

まだ鼻腔に君の匂いが残っている…

そんな気がする。

数週間後

クラス替えで、私たちは別の クラスになった。

ホッとする反面、少しだけ、寂しい 気持ちになった。

あ~あ。

つまらない。

彼がいない教室は、こんなにも 静かだったのか。

私は改めて、彼の存在の大きさに、 気づかされた気がした。

別れて、数ヵ月後。

やっと彼への気持ちの整理がつき、

諦めはじめた頃だった。

いつもと同じように、私は、公園を 突っ切って学校へ向かっていた。

桜が舞い散った公園は、少しだけ、 虚しかった。

「なぁ。」

背後から、声がした。

「なに。」

振り向かずとも、分かる。

私が愛した、彼の声を、忘れるわけが ないのだから。

「やっぱり、ここを通ってたか。」

「うん。」

重たい沈黙が流れる。

「ごめん。」

数ヵ月ぶりに話したと思ったら、 謝罪なんて。

なぜ謝られているのか、なぜ話しかけてきたのか。

疑問は、募る一方だった。

「どういう意味?」

「お前を、酷いフリ方したから。」

今更すぎる話だと思う。

本当に、"バカ"だと率直に思った。

「もう、いいよ。」

忘れたくって、頭の中から追いやった 存在。

「もう一度、やり直したい。」

また、君から持ち出した話。

けど、その瞳はブラックホールのように

暗く濁っていた。

私はそんな彼を、もう、見たいとも、 思わなかった。

数ヵ月前の私なら、絶対に、頷いてた だろうなぁって、

バカらしいことを考えながら、

私は彼を見据えた。

別れを告げられたときと同じように、 次は、私が。

彼が大きな希望を抱いた、あの瞳の ようには、ならないけど、

精一杯の、感謝と、別れを込めて。

「私はもう、諦めた。私のことは、 忘れてね。」

「そっか。」

「少しの間だった。けど、付き合ってくれて、ありがと。」

「あぁ。どう、いたしまして。」

少しだけ、笑いあった。

お互いへの、感謝と、次へ進むための、

ほんの少しの、応援の表しとして。

屈託なく笑う私たちは、まるで、

恋人のようだった。

忘れられない彼の存在を、

無理矢理忘れたあの頃の私には、

虚無感しか残っていないかったけど、

それでも、

今になっては、

前を向ける。

そんな気がする。

あの出来事は、

私が前に進むための、

小さなきっかけだった。

私は絶対に、忘れないと思う。

幸せだった時間と、

"私"と言う名の確固たる自分を__。

この作品はいかがでしたか?

341

コメント

11

ユーザー

え、なんでこのストーリーだけ見てなかったんだろ?! これ、すごく好き!切なさも混じってて……私もやり直して?とか言われても絶対にやり直さないな‪w先に振ったのはお前やんってなる←

ユーザー

ストーリー面白くて、ポエムみたいで好きです!←別に俺はポエムが好きな訳では無い

ユーザー

好き。めっちゃ好き。なにこれ、 めっちゃ好きww なんだろ。 なんか、このストーリー、雰囲気 めっちゃ好きだな、、

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