コメント
2件
切ないけれど、温かい気持ちになれました...! フォローさせていただきますm(_ _)m
うま
「うま」という漢字をかけと言う問題に、クラスメイトの高橋が
鹿
と書いた
ルイ
教室が笑いで包まれる
でも、ただ1人、僕、今川ゆうとだけは笑わなかった
ゆうと
ぼーっとした僕の机の前には誰も座っていない机がひとつ
その机の上には花瓶がポツンと置かれている
その席に座っていたのは「田辺まこと」 僕の友達だった
まことは数週間前に交通事故で亡くなった
犯人は捕まったけれどまことは帰ってこない。席も空いたまま
どうしてみんな笑っていられるのか
少し前まで当たり前のように遊んでいた人がもう永遠に見られなくなったのに
もうまことのことははみんな忘れてしまったのだろうか?
僕は笑わず唇をギュッと噛みしめた
放課後
学校が終わって家に帰ると、僕は布団のシーツを半分に切り裂いた
遠足で使っていたリュックサックにシーツとロウソク、マッチ、カイロを入れる
夜になると気温はグングン下がった
午後9時、僕はこっそり家を出る
玄関を開けると一気に寒さが身に染みる
僕は夜の道を学校へ走った
学校
夜の学校
1回にある図書室の窓の前まで来る。
僕はここの窓の鍵が壊れていることを知っていた。 よくまことと一緒にここから学校内に忍び寄っていたから
僕は力いっぱい窓を開け、図書室の中へ入った
土足だとアレなので、靴を脱いで靴下の状態で下駄箱に行き、上履きに履き替えた
3階
足音を忍ばせながら3階の6年2組の前まで行く。
ドアを静かに開けまことの席を見てみる。昼と同じ。 花瓶がひとつ、ポツンと置かれていた
僕は教室のドアの前でうずくまって、 リュックサックの中からシーツを出す
シーツを頭から被り、廊下のヒューと言う風の音の寒さを耐えるためにカイロを擦って誰かが来るのを待つ
ゆうと
ゆうと
20分後
廊下の階段から物音がした。
誰かがこちらに近づいてくる
6年1組のドアを開けた後、 6年2組に近づいてきた
ゆうと
僕は息を飲み、ドアが開かれるのを待つ
ガラガラッ
ゆうと
ドアが開いた瞬間、叫びながら顔を出す。
懐中電灯を持ったその人は学年主任の藤谷先生だった
藤谷先生は大きく叫びながら逃げていった
普段は怖いイメージの先生だったが、以外にも臆病な事がしれてちょっとニヤついた
僕は満足して片付けをし、急いで家に帰った
翌日
大成功だ
学校では幽霊が出たと大騒ぎ
6年2組から出たこともあり、田辺まことの幽霊が出たと噂が広まった
これでもう、みんなまことの事を忘れないだろう
翌朝
母
ゆうと
僕は熱を出して学校を休んだ。
昨晩夜の学校にずっといたのが原因
ゆうと
ゆうと
数日間、憂鬱な日々を過ごした
数日後
僕の心配は要らなかった
僕が休んでる間にも、まことの幽霊が出たと噂が更に広がっていた
でもおかしい
幽霊は僕が演じているのに、出る訳がない
その日の夜
僕は噂の正体が気になって、また学校に忍び込んだ。
数日前と同じように、ドアの脇で身を隠して待つ
コトッコトッ…
誰かがこっちに近付いてきた。
また先生だ。そう思ったけれど、
足音は真っ直ぐこちらに向かってきた
不思議に思っている間にドアが開いた
ゆうと
恐怖を覚え目を瞑ってドアに背を向けた
すると白く冷たい手が僕の肩に触れる
恐る恐る振り返ってみると、そこにはよく見なれた人物が立っていた
田辺まことだ
ゆうと
僕が唖然としていると、まことが口を開けた
まこと
まこと
まこと
ゆうと
ゆうと
まこと
まこと
まこと
まこと
そう言うとまことは消えていった
国語の時間
千田先生
ゆうと
黒板を見ると「かくほ」という言葉の横に 「保」とだけ書かれている。 その上に漢字を書けばいいらしい
僕はチョークを持ち、黒板に 「阿」 と書いた。
「阿保」
???
教室に笑いが起きた
千田先生が僕の横に立ち「保」のにんべんを消した
「阿呆」
千田先生
更に大きな笑いに包まれた
僕もみんなと一緒に笑った
思いっき笑った。