今日は月曜日。
土曜も日曜も同じことをしていたが 俺は何度もスマホを確認して 日にちを見て全身が震えてる。
スマホの日付け表記が 1日経つ度に変わることに ここまで喜ぶ日が来るとは思わなかった。
感覚的には10日ぶりの月曜だけど 現実世界の時間でいったら 俺たちにとって1ヶ月ぶりの月曜日。
日曜にはゆあんくんも俺も退院をしていて 月曜日は学校にも行けることになった。
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあんくんの視線がちらちらと 落ち着かない様子から あぁ不安なんだなとわかる。
いじめ。
俺が絶対許さないから。
今まで気がついてやれなかった分。 ちゃんと俺がケリつけるから。
だからそんな顔しないで。
不安げな彼を安心させようと 俺は強く手を握った。
「ここ外だぞ」と顔を赤くするも 振り解こうとはしない彼。
あー愛おしいったらありゃしない。
「えぇ〜!久しぶりぃ2人とも!やばぁい!大丈夫だった?まじで」
このいわゆるといった感じの 若者口調の彼女は俺たちの 担任の有村先生だった。
有村先生に「大丈夫だった?」 と聞かれて初めて自分たちがどんな理由で 1ヶ月休んでいた設定になっているのか 聞いていないことに気がついた。
じゃぱぱ
「良かったぁ!ね!皆心配してたよね! 赤城くんもさ、入院してたんでしょ? インフルの悪化で」
ゆあん
「2人とも戻って来れて良かったぁ〜!」
じゃぱぱ
散々盛り上がった有村先生も もちろんいつまでも賑やかな訳ではなく 朝のうちにやらなきゃいけ無いことを 片付ける為に自分の作業に戻った。
その一方でクラスメイトは 1ヶ月ぶりの俺たちに興味津々。
少し面倒だがその質問攻めのおかげで 自分がどんな設定で1ヶ月休んでいた のかが分かった。
ところで遠い親戚の4回忌だが5回忌だかで海外まで行っていたと言う設定を 考えた人はどなただろう。 妙に凝った設定に困惑する。
そのタイミングでちょうど台風が 来ていて欠航になった飛行機があったのを いいことに台風の影響で帰りが遅くなってしまったという設定もあったようだ。
情報収集が早すぎるクラスメイトは 置いておいて…
これだとこれからの学校生活に少々支障が出るだろうと心の中で悪態をつく。
誤魔化してくれたのは有難いが もう少し当たり障りのないものが 良かったなんて欲張りだろうか。
じゃぱぱ
いい感じで話を終わりの方に 持って行っている最中俺はゆあんくんが 側に居ないことに気がつく。
ゆあんくんはもう先に席に着いていて ゆあんくんに話しかける人はいなかった。
俺はまたゆあんくんを 1人にしてしまったのか。
情けない。
こういうところだ。直さなければ。
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
俺たちの色々あった思い出の場所を 思い描いて笑みを零す ゆあんくんが愛おしい。
俺はゆあんくんから もう二度と目を離さない。
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
行き止まりの階段の踊り場なんて 人気の無い場所に1人で 待たせるのは少し不安だ。
あそこに人が来ないのは分かっているけど 何があるか分からない。
それならまだパラパラと人が残るこの教室で待っていてもらった方がまだ安心だ。
俺は久々に2人きりであの場所で 昼飯を食べられることが嬉しくて 軽い足取りで要件を終わらせに急いだ。
「今日お前縁龍と来てたよな?笑 なんで?」
ゆあん
「普通に知りたいだけだよ。 お前らが休む前から縁龍がちょっと つれない感じだったけどさぁ」
「やっぱ赤城。 お前縁龍と随分仲良いんだな笑」
ゆあん
「いや別に良いんだけどさ? 縁龍も迷惑してんじゃねぇの?」
「お前に付き纏われてさ」
じゃぱぱ
「あっ、縁龍」
じゃぱぱ
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
誰もいない階段の踊り場で 俺たちは昼飯を頬張った。
俺はゆあんくんの頬にキスをする。
ゆあんくんは顔を赤らめた。
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
幸せそうな顔でふわっと笑った ゆあんくんがすっごく綺麗で。
羽が舞っているような笑顔だった。
掴もうとしたらひらっと綺麗に 避けて遠くに飛んでいってしまいそう だから眺めることしか出来ないけど。
俺はその羽の逃げ場を塞ぐように 閉じ込めたい。
そして触れたい。
逃がしたくない。
ぱしっ、思わず勢いよく ゆあんくんの腕を掴んだ。
ゆあん
俺の方を向いた。
羽が俺の方に向かって飛んでくる。
きらきらと窓から差し込む 光に照らされた羽は何よりも 白く綺麗に輝いていた。
彼がずっと俺の傍にいてくれるなら。
この羽を閉じこめることを 許してくれるなら。
俺はきっと全てを手放す覚悟を持ってる。
どちらからともなく 引き寄せられるように唇を重ねた。
俺の唇に触れた君の唇は まるで白くて柔らかい羽のようだった。