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「ゆきむら。」
最初のしゆんさんは、僕を呼ぶ声が硬かった。
あとから憧れていたと聞いたけど、最初は知らない、ちょっとやばいやつの印象だった。
「ゆきむら。~」
一回配信でコラボをした影響か、段々とその声は柔くなっていった。
コラボを重ねるごとにしゆんさんの僕に対する気持ちがなんとなく分かったような気がして、少し楽しかった。
「ゆきむ」
いつからかはよく覚えていない。
気が付いたらそう呼ばれていた。
でも、ゆきむら。とそのまま言われるよりいくらか気分がよくて。
たまに、頭の中でしゆんさんが僕を呼ぶ声を反芻するようになった。
「…ぁ、」
ちょっと前まで裏ではしゃいでいたのに、糸が切れたのかずっと泣いているしゆんさんを見てるのがしんどくて。
思わずその頭に手を乗せた。
仔犬のような目が僕を見るのがこそばゆくて、乗せることしか出来なかった。けど、
「…。」
ほんの少しだけ、しゆんさんは嬉しそうに見えた。
ずっとこの調子で、仲良くなるんだと思ってた。
「ゆきむ、ちょっとゆきむ、」
ずっとなんてなかった。
「ねぇゆきむ」
「ゆきむっ待ってって言ってr…」
「うっさい!!」
二年しか付き合いのないしゆんさんに、いっぱいいっぱいの僕の気持ちなんて分かるわけないと思った。
「…ゆきむ。」
でも散々当たり散らしても、しゆんさんは話をしようとしてきてくれた。
結局、しゆんさんが一番わかってた。
「…ゆきむ……」
なんでカラオケに行ったのか、今でも分からない。
ただ、朝のあの時間に唐突に行きたくなった。
「…ごめん、。」
皆には話してた。でも、こいつだけは結局、卒業まで頷かなかった。
「…ごめん、ね。」
「…うんっ……」
「ありがとう。」
『一人だけ立ち止まってて』
「…ゆきむ。」
小さく、しゆんさんに呼ばれる。
「どーしたの。」
眠い目を擦ると、大きく揺れる深緑の瞳が僕を見つめていた。
「…ゆきむ、どこもいかない、?」
「もー、勝手に僕をしゆんから遠ざけないでって言ってんでしょw」
そう言って頭を撫でると僕の存在を確かめるように、しゆんさんがぎゅっと抱きしめてくる。
それで、いつものようにまた眠りにつく。
しゆんさんが寝たのを確認して、僕もそっと目を閉じる。
いつになったら、僕らは苦しまなくて済むのだろうと思いながら。