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とある3人家族のお話
男は朝から晩まで働き、残業また残業の日々を繰り返し、男が家にたどり着くのはいつも深夜だった。 その頃にはもう妻は6歳になる息子を寝かしつけながらそのまま一緒に寝てしまっている。 さすがにもっと家族と会話をしなくてはならないし、したいとも思っていたが、その時間さえ睡眠に当てたいほど男は疲れていた。
その日も男はいつも通り深夜に帰宅したが家の中の様子はいつもと違っていた。 ドアを開けるとパジャマ姿の息子がそこに 待っていたのである。
普段は、週末しか会話できない息子に父は言った。
寺尾 敦
息子の頭を撫でた後、父はその手を引いて寝室に連れ戻そうとした。
寺尾 隼人
男は疲れていたのもあり早く夕飯を食べて寝てしまいたいところだった。親子の会話は大切だか別段今でなくともいいはずだ、なるべく早く切り上げたい。 そう考えながら男は答えた。
寺尾 敦
すると息子は思いもよらないことを言い出した。
寺尾 隼人
寺尾 敦
寺尾 敦
寺尾 隼人
男は段々とイライラしてきていた、お金を稼ぐことの苦労なんてわからない子供に、そんなことを教えたってなんにもならないからだ。
寺尾 敦
寺尾 隼人
寺尾 敦
次第に息子は泣きそうな顔で繋いだ手をブンブンと振りながら、教えて、教えて、と懇願してきた。
寺尾 敦
寺尾 隼人
寺尾 隼人
あきらかにがっかりした息子の様子を見て男は思った。
寺尾 敦
寺尾 敦
寺尾 敦
そう言って、追い払うように息子を寝かしつけた。
翌日男が帰宅した時には、またリビングの明かりが灯っていた。 しかし、男の帰りを待っていたのは息子ではなく、妻だった。 妻は思い詰めた表情で、切り出した。
寺尾 遥風
寺尾 遥風
何か買いたいものがあるから、という訳でもなく、とにかくお金をちょうだいの一点張りだったという。 最初は言い聞かせたり、怒ったりしていた妻だったが、とうとう根負けして、いつかちゃんと返すこと、を条件に600円程貸したと言う。
しかし、妻から聞かされた驚くべき話はそれだけではなかった。
寺尾 遥風
妻も、今日初めて知ったらしい。 もちろん貰っている金額はわずかばかりらしいが、金額の問題ではない。 これではまるで、ウチが子供に不自由をさせていると近所に言って回っているようなものなのである。
寺尾 敦
息子は、眠たそうにまぶたをこすっていたが、家族が揃ったのが嬉しいのか、喜んでいるようにも見えた。
寺尾 敦
しかし、男の怒気をはらんだ声に、場の空気を読み、うつむいた。
寺尾 敦
息子は悔しそうにくちびるをかんで、目には涙を浮かべている。 悪いことをした訳では無い、と言う思いがあるのだろう。 確かに罪を犯したわけでも、嘘をついた訳でもない。しかし…
寺尾 敦
そこまで言って男はやや冷静さを取り戻した。言いすぎたかもしれない。 ついつい仕事で部下に怒鳴るような口調になってしまっていた。妻の顔をみると、妻も「もういいわ」と言わんばかりに目配せしてきた。
寺尾 敦
息子は涙を流しながら、何度も頷いた。
寺尾 敦
寺尾 敦
寺尾 敦
息子はその声が耳に入っていないかのように、勢いよくリビングを飛び出して行った。そして、戻ってきた彼の手には小さな貯金箱が握られていた。
息子から渡された、その貯金箱の蓋を開けると中からたくさんの小銭が出てきた。 この硬貨の数だけ、息子は近所のお手伝いをしたんだろう。
息子はさっきまでの泣き顔からは想像出来ないような笑顔で言った。
寺尾 隼人
寺尾 隼人
男の手からジャラジャラと硬貨がこぼれ落ちた。笑顔いっぱいの息子とは対照的に、今、涙を流しているのは、 男の方だった。