寒空の下1人歩く

ないちゃんは探さないって言ってるけど、僕は心配

まろちゃんはこのまま本当に消えてしまいそうだから

彼がどうしてそうなったのかも、彼が何者なのかも僕は何も知らないけど

ただひたすらに歩き続ける

彼が居そうな場所を

誰もいない夜道

そんな静かな場所から、鼻をすする音が聞こえてくる

音の先には橋があって、そこに身を乗り出すようにしたまろちゃんがいた

俺は飛びつくように彼を橋から離す

2人の声が誰もいない静かな街に響く

まろちゃんがうつむき、小さく言う

その言葉にまろちゃんの顔が歪む

まろちゃんは静かに話を聞きながら俺を見つめている

悲しそうな、苦しそうな彼の表情を見ていると、自分の頬が濡れていくのが分かった

まろちゃんが苦しそうに笑う

初めて見る彼の涙

しっかり者でグループをまとめていた自分より年上のメンバーが泣いている

そんな彼に心を締め付けられ、また自分も涙が出る

彼が笑う

涙を流した苦しそうな表情の奥に、彼の優しさが現れ始めていた

彼の口から出てきた言葉に驚いて変な声が出る

彼が悲しそうに答える

彼がうつむいていた顔を上げる

彼の顔は涙で濡れていて、その奥に小さな期待が潜んでいた

ボロボロと涙をこぼし、崩れるように座り込んだ彼を優しく包み込む

今だけは、歳なんて関係ない

僕の胸の中で声を上げてなくまろちゃん

彼の苦しみや悲しみが声とともに出てきて、暗い空へ溶け込んで行った

2日前に飛びでてきた部屋の扉の前に立つ

あの後泣き続ける俺を何十分でも、何時間でも慰めてくれた初兎と別れ、今俺はないこが待つ部屋の前にいた

俺は自分の顔を手でパチパチと叩き、ドアノブを握った

ゆっくりと扉が開く

するとその前には、毛布にくるまって眠るないこがいた

小さくつぶやくと、彼が目を擦りながら起きる

彼の目を見られない

ちゃんと向き合うって決めたのに、

いざとなると、あの時の記憶が蘇って僕の罪悪感を、膨らます

うつむきながら泣きそうになる

彼は許してくれるだろうか

もし避けられたら

頭の中が悪い妄想でいっぱいになる

そんなことを頭の中で考えていると、ないこが抱きついてきた

怒らない、、軽蔑しない、、怖がらない、、

意外なことが起こりすぎて脳がバグる

彼が言う

どうしてそんな平気そうなんだ

俺はあんなことをしたのに

どうして、、

たくさんの疑問が頭に浮かびながらも俺はない子に連れられ家の中に入った

彼が暖かいコーヒーを渡してくる

どうしてこんなに普通なんだろう

彼が優しく微笑む

彼の返事を聞いて安心した俺は自分がヴァンパイアだということを話した

俺が答えると、ないこがこちらを向く

そう言い彼は自分の服をのばし首元を出す

ないこの大きな声が響く

涙を溜めた目で俺を見つめてくる

俺は彼に言われた通りに、彼の首元を噛んだ

ガリッと鈍い音がして、彼の首から血が流れる

この光景を見るのは2度目でなんだか苦しかった

ないこの首から溢れ出る血を吸う

じゅるじゅると音が部屋に響く

ないこの声が漏れる

ないこの血は甘くて、俺の心を溶かしていく

ないこの首元から口を離し彼の顔を見る

俺に血を吸われたないこの顔は赤く紅潮して、息を切らしていた

彼が俺の名を呼ぶ

それと同時に唇を合わせてくるないこ

夢中で俺の唇に吸い付くないこ

彼は俺の手を握り自分の下を触らせる

困惑する俺をとろけたないこの目が見つめてくる

ないこが口を開け、言葉を発した

その言葉を合図にするかのように、俺たちは欲の海に沈みこんだ

俺にいれられてよがるないこ

あの時とは違って、俺の目を見つめてくれる

俺の目の前で喘ぐないこは、恐怖と快感を抑えるためか何度も何度もキスを求めてくる

あの日とは違う幸福感を含んだ快感が俺たちを包み込む

彼の腰を持って、激しく動かす

それを合図に奥を思い切りつく

ないこの絶頂声と共に俺の体から白い液体が飛び出しないこの体に入る

意識が飛びかけたないこがまた俺の唇を求める

唇を合わせるだけで喘ぐようになったないこは起き上がり、俺を押し倒すようにしてさらに激しいキスを求めた

2人の舌が絡み合う

ないこの下手なキス

それでさえ愛しさを感じ、幸福感におぼれそうになる

今まで喘ぎ続けた彼の喉は枯れていた

彼が息を切らしながら言う

俺に無理やり犯されたというのに

それなのに俺を恐れていない

それどころか俺を押し倒して自ら俺を求める

視界が涙に滲む

あんなことをした俺が今こんな幸福に包まれている事実が俺の胸を苦しめる

泣いてる自分はかっこ悪い

そんな自分を見せてしまっていることがものすごく恥ずかしい

俺が泣いてるのをみたない子は、まだ痙攣する体で俺を抱きしめた

彼が笑いながらこちらを見る

どうにか俺を苦しめないように

どうにか俺から罪悪感を無くすために

ないこは今日、あの日と同じことを俺にさせるよう仕向けた

俺に血を吸わせた

彼の優しさが痛いほど伝わって

彼だって怖くなかったはずがない

快楽を感じていたって、多少の恐怖はあったはずだ

それは彼の涙を見た俺だからこそ、痛いほどわかっている

それでも、ないこが許してくれるなら

まだ、一緒にいてくれると言うなら

弱々しく呟く

そんな俺をまた強く抱きしめないこが言う

彼の目から涙がこぼれる

俺が逃げた数日間

何も分からず1人寂しかっただろう

大好きな人に、恐怖を植え付けられ、起きたらひとりぼっちで

地獄のような数日間をすごしたはずだ

俺はこの罪を償いきることは出来ないと思う

だから俺の一生を君に捧げることで、君を苦しませた分、君を幸せにするよ

愛してるよ