スズ
ユウヤ
スズ
明らかにこのタイミングで聞くべきではなかった。
ユウヤ
だけど--確認せずにはいられなかった。
スズ
スズ
ユウヤ
スズ
スズ
困ったような表情であさっての方向に目を逸らす立花さん。
いつもハキハキと快活な彼女にしては、歯切れの悪い感じだった。
スズ
彼女の右手のスプーンが皿に置かれ、カチャンと音を立てる。
そして心を決めたように、そう前置きして話し始めた。
スズ
ユウヤ
スズ
スズ
スズ
ユウヤ
頭の中に、過去の記憶がフラッシュバックする。
その真っ黒いものに支配されそうになった僕を見てどう思ったか、
立花さんが早口でフォローを入れてくれる。
スズ
スズ
ユウヤ
スズ
スズ
ユウヤ
スズ
彼女はそう言って、黙りこんでしまう。
そして、ポツリと呟いた。
スズ
スズ
ユウヤ
何だか、違和感の残る言葉だった。
僕は思わず、右隣に顔を向ける。
スズ
スズ
そこには、再びスプーンを手にした立花さんがいた。
いつも通りの、明るい立花さんだ。
スズ
ユウヤ
そう言って僕の皿にスプーンを入れる立花さん。
思わず情けない声を上げる僕を見て、彼女が無邪気に笑う。
その笑顔はスポットライトみたいに眩しくて、湿っぽい雰囲気を一瞬にして塗りつぶしてしまう。
だけど彼女の言ったことは、僕の心に暗い影を落としていた。
どれだけ彼女の笑顔に照らされようと、その影が消え去ることはなかった。
ユウヤ
ユウヤ
スズ
僕は、早足で店を出た。
催してきたのは事実だが、少し一人になりたかった。
ユウヤ
彼女の魅力的なところを挙げろというのであれば、簡単だ。
いくらでも思い付く。
軽く大学ノート1ページ分は埋めることができるだろう。
でも“好き”なところと言われた瞬間、その文字はかすれてしまう。
インク切れのボールペンで書かれたみたいに、内容が読み取れなくなってしまうのだ。
ユウヤ
あの日から、僕は一つの考えに支配され続けている。
ユウヤ
僕は、バスケが大好きだった。
部活中は休憩時間も惜しく、ひたすら練習した。
部活が終わった後、体育館で居残り練習した。
休みの日も、市民体育館や公園で夢中になって練習した。
毎日がきらめいていた。
全身から飛び散る汗で、キラキラと。
そして高一の春。
女バス部に憧れの『先輩』ができた。
一目惚れ。
そんな経験は、後にも先にもあの時だけだと思う。
大切な人だった。
人生で初めて好きになった“はず”の人。
その人のおかげで、僕の青春はより一層、輝きを増した。
ずっとこの時間が続けばいい。
一生続けばいい。
本気でそう思ってた。
ユウヤ
その記憶はいつまでも消えることがない。
脳みそに直接、焼印を押されたかのように。
それから、全てが変わってしまった。
ユウヤ
ユウヤ
だけど、それ以来初めて、特別な感情を抱いた女性ができた。
立花さんだ。
彼女なら、あるいは。
そんなふうに思える女性ができるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
だから散々迷った挙句、告白した。
ユウヤ
無意識にズボンのポケットの中に、手を突っ込む。
そこには、いつも持ち歩いている、母さんのお守りの感触。
それは僕の心を落ち着けてはくれたが……、癒やしてはくれなかった。
ユウヤ
ユウヤ
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