テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
不破湊は、笑うのが得意だ
笑っていれば、空気は壊れない
笑っていれば、必要とされる気がする
問題は、
その感覚が、いつも
急に消えることだった
さっきまであったはずの居場所が
何の前触れもなく
輪郭を失う
その度に彼はこう思う
――先に切った方が楽だ
ろふまお
カメラが回れば、声は自然と軽くなる
剣持刀也
剣持刀也
加賀美ハヤト
甲斐田晴
甲斐田晴
不破湊
不破湊
剣持刀也
甲斐田晴
加賀美ハヤト
剣持刀也
剣持刀也
剣持刀也
不破湊
剣持が雑に切り出したオープニングに
不破は被せるように笑った
加賀美ハヤト
剣持刀也
いつもの並び
いつもの距離感
安心、と呼ぶにはまだ少し曖昧で
不安、というにはまだ早い
不破湊の中で、その2つはいつも同時に存在している
不破湊
Staff
Staff
不破湊
不破湊
不破湊
――今の俺良くなかった?
――俺、要らなかった?
すぐに打ち消す
考えすぎだ
そんなはずはない
そうやって自分に
何度も言い聞かせてきた
そこから収録は問題なく進み
笑いも取れた
甲斐田が理屈っぽい説明を始め
剣持が雑に突っ込み
不破が間に入って
空気を丸める
社長はそれを後ろから見守る
完璧な役割分担
だからこそ、不破湊はふと怖くなる
――もし、俺が居なくても回るなら?
収録後
廊下で葛葉とすれ違った
葛葉
葛葉
軽い調子で言われ、
不破は条件反射で笑う
不破湊
不破湊
葛葉
葛葉
そこで会話は終わる
それ以上、それ以下でもない
なのに、胸の奥がざわつく
――本当にそう思ってる?
――それとも、ただの挨拶?
答えは分からない
分からないまま、勝手に
不安だけが膨らむ
控え室では社長が誰かと電話をしていた
内容は聞こえないが、声は落ち着いている
不破湊はそれを横目で見て、視線を逸らした
”忙しい”
その事実が、
何故か”遠い”に変換される
もちさんが席に座りながら言った
剣持刀也
不破湊
と不破は即答する
即答出来ることだけが、
今の取り柄だ
甲斐田がノートを閉じて不破を見る
甲斐田晴
……一瞬だけ
すぐに別の声が頭の中で響く
――本音?
――それとも気遣い?
不破湊は笑って誤魔化した
不破湊
冗談は盾だ
軽口は境界線
それが崩れない限り、ここにいていい
帰り道、スマホを握りながら彼はふと思う
今日1日
誰かに必要とされていた感覚が曖昧になっていること
理由はない
何かが起きたわけでもない
ただ、感覚だけが、静かに消える
不破湊は立ち止まらない
立ち止まったら
その境界が見えてしまう気がしたから
――先に壊せば
――置いていかれずに済む
その考えが浮かんだ瞬間
彼は笑って歩きだした
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!