すみません、会議には行けません。今妊娠しています

いつも通りの朝。 ベッドから起きようとする。そういえば今日は幹部会議が…………ッ！？！？

げぼ、ゴボッッびちゃッ

突然の吐気にぞわぞわと鳥肌が立つ。 気持ちが悪い。 ぐるぐると目が回っていると、二度目の吐気。 ベッドから飛び降りて急いでトイレに駆け込んだ。

ぐったりとトイレの壁にもたれる。

気持ち悪い

気持ち悪い

きもちがわるい

最近、よく吐き気がする。 熱があるわけでもないし、ヤクの所為でもないはず………。

折角のマイキーと会える幹部会議を休んでまで病院に来たというのに 先生（闇）から告げられたのは「妊娠」。

引きとめないあたり良い先生だと思う。

家に帰った俺は脱力したようにベッドに寝転がった。

蘭？竜胆？ココ？鶴蝶？それとも望月？ 不安が身体中を巡る。 ぐるぐるぐる マイキーになんて説明しよう。 ぐるぐるぐる 子供はどんな顔してんだろう。 ぐるぐるぐる 男でもちゃんと産めんのかな。

不安や底知れぬ恐怖が身体を支配していたというのに 次に来るのはよくわからない嬉しさ。 そもそも反社の俺に子供なんて育てられんのか？ ウザくて殺しちゃいそう。

裏切り者はスクラップ。俺がいつも言っている言葉だ。 まさか自分に言う日がくるなんて。 殺されるならマイキーがいいなぁ。

薄暗い路地裏。 俺と武臣は無言で歩いていた。 「兄弟」のはずなのに距離が遠く、ほぼ他人のような存在。 イザナに「本物の兄弟」を語られた時は吐き気しかしなかった。 けれども……

ポロッと持っていたタバコが落ちる。 急いで平常心を保つために2本目をつけようとしたが動揺してなかなか火がつかない。

大事なことなので二回言った。

すり、と自分の腹を触る。 あれから腹を括った俺は病院に通い、「合法」な薬を飲んでいる。 ヤクなんてやってたら腹ん中の子供死ぬわな。先生（闇）に怒られちまった。

珍しく真剣な弟に火をつけようとしていた手を止める。 三回深呼吸をして、再び歩き始める。

嘘である。本当は産んで欲しくない。 男の出産なんて何が起こるか分かったもんじゃない。 何より相手は誰だとか身体に不調はなど色々問い詰めたい所だが 武臣はクール（）な男なので好きにしろの一言で収めてしまった。 そうゆう所だぞ武臣。

やっぱり駄目だった。