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ここはレギアス王国。 古来より自然と共存し、 自然を神として信仰する、 歴史ある王国だ。
ノア
セミロングの髪を靡かせ、 森の中にある道を駆け抜ける。 名前はノア・ナイトレア。つい先日誕生日を 迎えたばかりの12歳の少女だ。
ノア
いつもは母親に起こしてもらっている ノアは、朝にとても弱かった。 今回は自分で起きると宣言し、 案の定寝坊をしたのだった。
森を抜けると、広大な平原が現れる。 その真ん中に存在感を露わにしている 一つの建造物。 ノアが通う、能力者養成学校 “ギルオール学園”だ。 先日入学式が行われたばかり なので、人が道を埋め尽くしている。
ノア
やっと徒歩でも間に合う 時間までに学園の敷地である 平原に足を踏み入れたノア。 人の多さに驚きつつ、 ある程度の予想も立てる。
ノアの言う“属性覇者”とは、 能力の中の八つの“属性”の内 一つの属性を極めた者のことだ。 初回の授業はお披露目の式典の 参観で、混雑する学園の 交通整理も兼ねていた。
???
ノア
人混みをかき分けて進んでいると、 視線を感じる。 辺りを見渡してみるも、 それらしい人間は居なかった。
ノア
少し不思議に感じながらも、 ノアは先に進むことにしたらしい。 再び人の波に飲まれながら、 学園の生徒棟に向かっていった。
わあああああああ・・・!!
司会者
司会者の男の声に従い、 15、6歳程度に見える少女が、 ホールの中央へと歩んでいく。 偉い人間と見られる男が、 少女へ“属性覇者”の証である 特注のマントを手渡す。
偉い人
ソラ
貰い受けたマントを羽織り 男に一礼し背を向ける。 ホールの客席に向かって もう一度礼をすると、 ホールは歓声に包まれた。
ノア
能力者であれば誰もが 憧れる地位、それが“属性覇者”だ。 身分に関係なく、能力を鍛え、 功績を挙げた者だけがなれる、 完全実力主義の選考基準だ。 普通であれば、 能力を体の一部のように使いこなし、 社会経験も豊富な人材が選ばれるが、 稀に才能溢れる若者を 採用するケースもある。
司会者
司会者の言葉で締めくくられ、 属性覇者のお披露目は終わった。 学園の生徒たちは速やかに ホールを出るよう指示され、 まとまって自分のクラスへ 移動していった。
ノア
学園生徒皆が利用する食堂。 ノアは一人で机に向かい、 昼食を取っていた。 元来人と話すのが苦手で、 友達もあまり居なかった ノアにとって、ここは地獄のような 場所だった。
ノア
ふと周りを見渡してみると、 トレーを持ったまま キョロキョロしている少年が居た。 昼食を楽しんでいる生徒たちが 多くいる食堂では、席の確保も 試練だった。 座る席がなく、困っているのだろう。
ノア
ノアは大いに迷った。 向かいの席は空いているが、 知り合いでもない人間と 向かい合って食べるのも気まずいだろう。 しかし、この様子だと席はしばらく空かず、 少年が食いっぱぐれてしまう。 こちらに座るよう声をかけるか、 このまま放置するか。
ノア
???
ノア
ノアは思い切って声をかける。 少年はどこかビックリしたような 表情で振り向くと、言葉の 意図に気付き、歩み寄ってくる。 机にトレーを置くと、椅子に座り、 ノアと向き合う形になる。
ノア
少年に顔を凝視され、 ノアは困惑する。 固まって声も出せずにいると、 少年はふわりと笑い、 ノアに感謝を伝えた。
???
間延びした口調でそう言われ、 豆鉄砲を喰らったような顔になる。 そんなノアには目もくれず、 少年は昼食を取り始める。
ノア
微笑み、味わいながら 食べている少年を見ていると、 どうにも毒気が抜かれたように感じる。 ノアも昼食を再開し、 小さな幸せを噛み締める。
???
昼食を食べ終え、学園の談話室に移動し、 少年からもう一度感謝を伝えられる。 別に良いと言うと、互いに自己紹介 をすることになる。
ノア
キラ
健康的に焼けた小麦色の肌に、 目立つオレンジの頭髪。 宝石のように輝く、丸く大きな エメラルドグリーンの瞳。 どこか既視感のある容姿だが、 そこまで気にしていなかった。
キラ
キラにそう尋ねられ、 ノアもそういえば、と思い出す。 この学園に入ったということは、 何かしらの能力を持っているということ。
ノア
キラ
“二種能力者”とは、その名の通り 2つの属性の能力を扱う人間のことを言う。 魔力量が多い人間の場合が多く、 二種能力者は二種能力者同士からでしか 生まれないため、貴重な存在だ。
ノア
キラ
キラが手を広げると、パチパチという 音と共に、黄金色の電気が現れる。 また、人差し指をライトに向けると、 照明がチカチカとついたり消えたりする。 電気を自在に操る技に、 ノアは思わず見惚れてしまう。
談笑し、外を見てみると、 いつの間にか日も落ちかけていた。 キラはなにか約束があったのか、 ノアに別れを告げる。
キラ
ノア
キラは振り向きざまに手を振り、 今日一番の笑顔でノアと別れる。 ノアもキラに手を振り返し、 また今度会った時、もう少しだけ 話したいな、と心の中で呟く。 こうして、ノアに初めての友達が 出来たのだった。