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冬乃

あ、貴方は…?

…………

彼は力強い目でこちらを見据え続けている

冬乃

(もしかして私…警戒されてる…?)

まぁ仕方も無いことだろう

とっくに消灯時間は過ぎている

そんな中で高校生が1人でこんな場所を彷徨いていたら警戒されてもおかしくは無い

冬乃

あ…え、と…私いつもベッドでしか自由な行動が許されなくて…ても今日は体調も良いし、たまには皆みたいに普通に歩いて解放されたいなって思って…

…………

冬乃

その…昼だと怒られちゃうから見回りが終わったあとにこっそり抜け出そうかなって思って…思い付くままに歩いてたらここまで来たの…

…………

冬乃

えーと…貴方は何故こんな所にいるの?

っ…………

彼は何かを言いかけたが咄嗟にその口を閉じた

もしかして……

冬乃

貴方、声が出ないの…?

…………((コクン

何かを考えるように少しの間を置いて彼は静かに頷いた

冬乃

そうなの…ごめんね。何も知らなくて色々喋っちゃって…

そう言うと彼は少し顔を綻ばせて優しく私に微笑んだ

__ドキッ

その瞬間私の頬がじんわりと熱くなっていくのが分かった

冬乃

(え…私…もしかして…)

そう感じてると同時に彼は、ペンとメモ帳を取り出し何かを書き始めた

と、さほど経たないうちに内容を書き終えたのか彼はメモ帳を私に見せてきた

『俺は菅田悠李(菅田悠李)
事情があって小さい頃から入院してるんだ
俺も君と同じ。1人の時間が欲しくて、少しでも解放されたくてたまにこうやってベッドを抜け出して、外を眺めてるんだ
特に今日は満月だからすっごい綺麗だよ』

その言葉を見ると同時に私も空高く昇っている月を眺める

冬乃

ほんとだ…すごく綺麗…
私、夜外に出たり、眺めたり、そんなことしてこなかったからこんなに綺麗な月があるだなんて知らなかった

冬乃

本当に綺麗…

そう呟いた時、悠李はトン、トンと私の肩を叩いた

悠李

『もう11時半になるけど…
大丈夫?』

冬乃

え?嘘……

月に夢中になって忘れていたが、もうそろそろ時計の針は午後11時半を指そうとしていた

冬乃

大変…次の見回りの時間になっちゃう!

悠李

『じゃあそろそろ戻ろうか』

冬乃

うん。また…会えるかな?

悠李

『きっと会えるよ
また、会おう
今度は沢山話そう』

冬乃

そっかぁ…そうだね!また、会えるよね

悠李

『うん。じゃあまたね
足元気をつけて戻ってね』

そう言い、再び優しく微笑むと月明かりに照らされていた彼は暗闇へと進んで行った

本当は…月に夢中になっていたんじゃない

時計の針の迫りくる時刻に勘づいていなかったわけじゃない

ただ…彼との時間に私は夢中になっていたんだ

彼ともっと居たいと願ってしまっていたんだ

いつもは長くて退屈なだけの夜

でも今日は違う

とても短くてとっても大切な夜の時間

冬乃

__また、会いたいな

そうポツリと呟いた私は、彼とは反対方向の暗闇へと進んで行った

そう、この夜が私と彼の…

私と悠李の長くて切ない物語の始まりだったんだ───

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