父
ところで、青年。
樹
はい。
父
君のご両親はこのことを知ってるん?
樹
いえ。何も言わずに飛び出てきたもので。
父
それはいけん!!
父
今すぐ家に帰って説明してきんさい。
父
春子も連れていくとええ。
春子
えぇ?
樹
わかりました。
樹
春子ちゃん、行こう
春子
え、あ、はい
春子
田中さん
樹
樹でいい。どうせお前も田中になる
春子
じゃあ、樹…さん。
樹
なんだ?
春子
なんでうちなんですか?
春子
縁談を無視するぐらいなら相当の理由があるんでしょう?
樹
そんなの美女と結婚したいからに決まってるだろう
樹
縁談の女はあまりにも不細工過ぎた。
春子
なかなかな言い様ですね笑
樹
まあ、縁談の女より松浦製品の女性と縁があった方が後々都合がいいしな
樹
美女はこの世に五万と居るが両親を説き伏せられるのは春子ちゃん、お前だけなんだ
春子
なかなかに大層なこと言いますやん笑
樹
ここだ
春子
わぁ、立派なお家ですね
樹
当たり前だ、うちは海軍だからな
樹
ただいま
春子
お邪魔します…
俊夫
どこに行っていた!!
俊夫
奈津子さん(※縁談相手)をほっぽって家を飛び出しやがって!
樹
父さん、俺はこの松浦春子さんと結婚します。
俊夫
はぁ?何を言っているんだお前は
俊夫
この小娘は誰だ!
樹
だから、松浦春子さん。
春子
松浦春子です
春子
すんません、急に上がり込んでもうて
俊夫
両親は何をしている
春子
父は松浦製品社長の松浦義彦、母は専業主婦で彰子言います。
春子
母の旧姓は松村、松村家は私営銀行を営んでおりまして…
俊夫
もういい。
俊夫
なるほど松浦製品のお嬢さんか…
春子
あかんかったでしょうか…?
俊夫
いや、私の家は海軍なんだがお宅の製品を愛用させていただいているのでね
春子
それは樹さんから聞いております
俊夫
だが樹。
樹
はい
俊夫
どこでこのお嬢さんを拾ってきた?
樹
それは半年前街中で会ったからです
俊夫
まさか、美女だったからとかそういう安易な理由ではないだろうな
樹
いえ、違います
春子
(はあ?!さっき美女が何とか言いはったやん!!)
俊夫
そうか。
俊夫
まあ、いいだろう
俊夫
春子さんのご両親には話したんだろうな?
春子
はい。なんか突然来んさったんで家族総出で話しました
俊夫
うちの息子が大変失礼した(土下座)
春子
いえいえ!謝らんといてください!
春子
うちの父なんか「これで縁談の場を用意せんでよくなる」言うて喜んどりました
俊夫
変わった方だな
春子
ま、まぁ笑
俊夫
うちの樹を頼んだぞ。
春子
は、はい!
春子
じゃあうちはこれで失礼します…
俊夫
樹、春子さんを送ってやりなさい
樹
はい。