椅子に座り、しばらく沈黙が続く。
颯斗
あのさ、謙信
謙信
っなに?
颯斗
…ごめん、
勘違いだったらアレなんだけどさ
勘違いだったらアレなんだけどさ
颯斗
謙信の好きな人って……
謙信
(あぁ、そっか。
颯斗さっき聞いてたんだもんね)
颯斗さっき聞いてたんだもんね)
謙信
……颯斗だよ
颯斗
そっか、ごめん。
俺謙信に永玖の話、、、
俺謙信に永玖の話、、、
そう言った颯斗の顔は、申し訳なさそうに眉が下がっていた。
謙信
いいよ、別に
謙信
わかってて聞いたの、俺だし
お互いに気まずい空気が流れる。
今日話して思ったこと。
それは、颯斗には悪いけど、きっと永玖はもう、 絶対によりを戻すつもりはないんだろうなってこと。
……そのことに颯斗も気づいてるんじゃないかな。
謙信
っ、
謙信
(……永玖)
謙信
ねぇ、颯斗
颯斗
ん、?
謙信
颯斗が永玖のことどんだけ好きか、よく分かってるつもり。
謙信
だけど、
やっぱり俺は颯斗が好きだから
やっぱり俺は颯斗が好きだから
謙信
……だから、
諦めなくてもいいかな、?
諦めなくてもいいかな、?
颯斗
…俺は、謙信のこと好きになるか分からないよ?
ここで、『好きにならない』って言い切らない 颯斗の優しさが胸を締め付ける。
謙信
いいよ
謙信
俺のこと絶対好きにさせるから
そう言えば、颯斗は少し微笑んだ気がした。
永玖ちゃんの後を追って楽屋を出ると、 外のイスに座り、手で顔を覆ってる。
玲
永玖、
永玖
っ玲くん
俺は永玖の横に腰を下ろした。
玲
ねぇ、聞いてもいい?
颯斗と何が理由で別れたのか、
颯斗と何が理由で別れたのか、
永玖は少し黙ってから、ゆっくりと口を開いた。
永玖
…あの頃はまだ、同性愛者とかに対して理解とかあんまなかったじゃん
永玖
だから、謙信にも怖くて言えなかった
玲
うん
永玖
颯斗と付き合い始めて1年経った頃、その時のマネージャーに言われた
永玖
颯斗と別れろって
玲
えっ?
永玖
俺らが付き合ってることに気づいたらしくて、
永玖
もしもの時にどうなるか分かってるのか?って
永玖
まだ知られてないから、
今のうちに別れてただのメンバーに戻れって
今のうちに別れてただのメンバーに戻れって
永玖
俺だけじゃなくて、颯斗だって傷つくことになるって言われて、
玲
(そんなの、
全然知らなかった……)
全然知らなかった……)
永玖
まぁ、結局は俺が弱かったんだよ
永玖
颯斗のこと守る自信も、批判されて付き合い続ける勇気もなかった
当時のマネージャーに脅されたことで、 俺は颯斗のことを振った。
1回、謙信に聞いたことがある。
もし、同性の人と付き合ったとして その関係を誰かに批判されたらどうする?って。
そしたらさ、なんて言った思う?
謙信
そんなの、言わせとけばよくない?
謙信
お互いに思いあってれば、
それでいいじゃん
それでいいじゃん
謙信
それに俺にはメンバーがいるしな
謙信
俺らのグループに批判するやつなんていないって信じてるし、
謙信
だからいざという時は助けてもらえばいいじゃん!ね!笑
その時に俺は、自信満々にそう言う謙信に圧倒された。
だから、謙信に颯斗が好きって打ち明けられた時は 本当に心の底から応援しようって思った。
謙信なら、スッキリ諦められるって。
永玖
あの、自信満々な謙信はどこ?ってくらい、ネガティブになってるし
永玖
あんなのらしくない
玲
そうだね、
永玖
俺さ、今でも颯斗のこと好きだけど、付き合いたいとは思わないんだ
永玖
俺は、幸せそうに笑ってる颯斗が見れればそれでいい
永玖
それが今の俺の幸せだから、
……これは本心。
だから、謙信には諦めて欲しくない。
玲
永玖ちゃんが本当にそれでいいって言うんだったら、俺は何も言わないよ
玲
自分の幸せのためにも、
謙信の背中押してあげな
謙信の背中押してあげな
……やっぱり玲くんに相談したのは間違いじゃなかった。