鳥の鳴いた声
結露した窓
窓を開けると ひんやりした風が頬を撫でた
寒い。
そう感じる前に 勢いよく窓を閉める
そして部屋の一角に意外と場所を 取っている鏡の前に立った
昨日と全く変わらない体
少しだけ期待して眠る 自分に嫌気がさす
透き通るように白い髪に 色素の薄い青色の瞳が
こちらを睨んでいた
何か理由をつけて 休んでしまおうかな
こんな容姿で 外に出るのは大嫌いだ
他人と少し違うので 咎められるのは慣れっこで
冷たい視線と 共存するのは当たり前
それが、十四年間で得た 最大の知恵
今日も俯いて外に出る私
だけど、こんな私にも 一日の楽しみが一つだけ
辺りが闇に染まり始めた時刻
私は賑やかな商店街に足を運ぶ
ラーメン屋からいい匂いが流れてくるが私は違う所へ向かう
小さなおもちゃ屋さんの脇にある 細い小道に用があった
別に用がある、 という程でもないけれど
私は迷わず小道に入る
商店街の明るさとは反対に 少しずつ暗闇に溶けていく
そこは静かな建物と建物の隙間 抜ける風が冷たくて身震いした
あまりの寒さに独り言を呟く
誰にも聞こえないのに声が出るのは何故だろうと人間の不思議を感じる
そんな事を思っているうちに 目的地へたどり着いた
おもちゃ屋さんの裏口にある 小さな段差に腰掛けるのだ
深呼吸して
歌を歌う
昨日はロック 今日はラブソング
きっと明日は失恋ソング
詩をメロディーに乗せて 希望を歌う
一言の歌詞が胸に刺さって 一言の歌詞が胸を渦巻く
二十四時間で一番 自分を表現できている気がした
??
悲鳴にも似た声を上げて 声のした方を見ると
狐の顔をした人間が小道を 立ちはだかるように立っていた
??
??
??
彼は一瞬迷った後
??
狐之助(このすけ)
一瞬で考えたであろう名前は なんだか可笑しかった
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
久しぶりに、お腹を抱えて笑った
涙が出るほどに笑って
歌以外に気分が明るくなったのは 多分、生まれて初めてだった
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
…狐ほん
くだらないことを思ってしまった
後で土下座でもしておこうと 羽よりも軽く反省する
狐之助(このすけ)
ここは偽名を使った方が 良いのだろうか
どれだけ面白くても 彼は知り合ったばかりの男性だ
狐之助(このすけ)
彼の言葉を遮って 偽った名前を呟く
これで私達の 少し変わった関係が構成された
名前の由来といえば夜空に月が浮かんでいたこと以外何もないのだけれど。
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
いきなり何を言い出すのか 不思議でならなかった
私はこの場所でも 自分を否定されるのかと覚悟する
だが、その必要はなかった
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
「楽になってええよ」
流れるように放たれた その言葉の意味は分からなかった
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
立ち上がって逃げようとする
それが最期の抵抗だった
狐之助(このすけ)
正面に眠る少女を見て 溜息をついた
狐之助(このすけ)
誰もいない小道で独り言を呟く
早速人間味が出てきたな、と 思っては鼻で笑った
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
彼女の前で“俺”なんて カッコつけたのが面白い
最後に狐になっておこうと 全身の毛皮を出した
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
真っ白な尻尾が九つ並ぶこの姿
既視感を覚えた我は この子に近づいた
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
狐之助(このすけ)
そう言って少女の髪を撫でると 同時に彼女の肉体に入る
魂の抜けた彼女の身体は軽い
新鮮なその姿で 俺は少しだけ歌った
少女が好きだった 聞いたばかりの歌を
コメント
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とてもすごくてよかったてす
ファンタジーもいいねぇ、、 もう、なんでも好きだよ((急 その後、どうなったのかはわからないけど、2人とも幸せだといいなぁ、、
うっわぁ、関西弁は反則でっせ菜月様…🙏笑 恋愛、ホラー、ファンタジー制覇したから次はもうコメディーしかないですね(^ν^)((圧力