鳥は蝶を得たい

彼は。私のヒーローだった。

ずっと、私の前にいた

私も。彼を追いかけていた

追いかけていれば安全だった

彼は私を守ってくれる。

そんな彼が好きだったの。

これがもう。何年も前の話。

あれから。私は転校した

新しい学校。すぐは馴染めなかった

でも。また鶴蝶が助けてくれるから

そうやって鶴蝶が言ったから

安心できた

そして、私は、高校生になって、また地元に戻る。

今日は中学校の卒業式。

みんな泣いていたけれど、私には理解できなくて。 全て。どうでもよかった

彼の元へ早く行きたい、 そう、ずっと思っていた

なにか。違うのは

違うと感じるのは……

鶴蝶の。対応の仕方だろうか？

彼女は笑っていた

顔も……性格も。

何も変わっていなかった

俺は今……何を

でも確かに……

顔は綺麗かもな……

思い出すのは。 病院の風景

そこからの記憶は……曖昧で

何も覚えていない

でも…余命があと、半年しかないことだけは 脳裏に残っていた

気が付くと廊下で

"仲間"が笑いかけてくれた

それでこれが

半年前の話

そう思うと。 飛鳥のことも、イザナのことも

まだ、まだなのに

恋しく思えてきたんだ

こうやって、彼女と笑えるのは最後だ

大丈夫。恐くない

おまえらのこころのなかに……

いる、だろ？ おれは。

次の日の朝……

幸せだった。俺の人生も終わる。 ああ、どうか

どうか

前を向いてくれ

鶴蝶 20××年 △月△日 8:30 没

💥

返事してよ。ばか

本当は。受け入れないんじゃなくて

受け入れられない

事実を

飲み込めない

真相を

どこかで生きてるんじゃないの？

お願い。帰ってきてよ

あなたが、好きなの

どんな姿も愛すから……

お願い。

鳥は蝶を得得たい 〜𝑒𝑛𝑑〜