ザァァァァァァァッッ
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父が死んで1年。 未だ憔悴しきっていた 母親は1週間前に自殺した。 一人暮らしになって しまった俺は、虚しさと 寂しさをどうにか 紛らわそうと、1年前に 父が殺されたお祭りに 来てみたは良いものの、 かなりの雨。
色とりどりの傘が 境内を飾る。
傘を差していると、 かなり場所を取るし、 ぶつかりやすく なっちゃうから結構嫌。
元々、人混みは 本当に嫌いなのに……
そういえば、家族3人で 来た、丁度1年前の お祭りも、雨だったなぁ…
なんて思いながら、 嫌いな人混みを抜ける為、 人の少ない所に行こうと、 俺はあの場所へと 足を運んでいた。
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カサッ
踏んだ落ち葉が、 カサリ、と音を立てる。
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1年前、家族の幸せな日々が 急に崩されたあの日。 父は、此処で死んだ。
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雨雲しかない、真っ黒で 低い空を見上げ、亡き父に 言葉を投げかける。
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必死で抑えていた涙が溢れ、 頰を伝ったその一滴の雫が 地面に落ちる。
俺は無事、志望校に受かり 4月から高校生となった。
今日ここに来たのは それを報告する為でもある。
その為にわざわざ、 祭りの雰囲気に 似つかわしくない 制服で此処に来たのだ。
そして、暫く父さんとの 思い出に浸っていると…
<うぅ…ッ……
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暗闇から聞こえてくる 小さな嗚咽。
目を凝らすと見える、 小さく蹲る人影。
雨も気にせずに 地面に座り込んでいる。
正確には人ではない。 '鬼"だ。
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桃髪だとバレれば、 自分が殺されて しまうと分かっていた はずなのに、何故か 放っておけなくて、 俺はその鬼も入るように 傘を差し、声をかけた。
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声を上げ、はじかれた ように顔を上げ、 目を見開く彼女。 …いや、男か…? 顔とか髪とかは 女性っぽい… 声高いしな…… でも体つきとか 筋肉の多さとか… 明らかに男だよな……
N
大丈夫、きっと大丈夫。 今の俺は桃髪じゃない。 金髪に染めたんだ。 周りから避けられない ように。父親のように、 鬼に殺されないように。 生贄になんて、ならないで 済むように。
Y
また涙を流すその鬼。
N
思わず不安になり、 そう尋ねる。
Y
首を何度も横に振り、 少し乱暴に着物で 涙を拭ってから 話し出す彼。
Y
Y
そう言って、えへへ、と 子供っぽく無邪気に笑う彼。 え、この子()本当に鬼なの? 天使の間違いじゃない? てかなんで?なんでだよ。 この可愛い可愛い鬼に 優しくしなかった クソみてぇな人間は()
N
Y
そう言って眉尻を下げ、 苦笑する彼。
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Y
N
Y
そう、どこか遠くを 見ているような表情で 自嘲気味に笑う彼。
感性豊かなのかな… 表情すぐ変わるじゃん。
Y
N
それはつまり、 住まわせてくれと いうことで良いのかな? 大歓迎だけど。 どうせ一人暮らしだし。
N
Y
コテン、と首を傾け 上目遣いしながら子犬の ような瞳で俺の方を 見上げる"悠佑"
そんなキラキラした目で 俺を見ないで…… え、この天使くん もしかして無自覚? まさか無自覚?
N
あまりに可愛くて 思わず笑ってしまう。 微笑ましいなぁ… (芽生えた父性)
Y
にかっ、と白い歯と鬼 特有のキバを見せて 笑う"悠佑"。 いや可愛いぃ"ぃ"ッッ!! (悶え中)
N
Y
拳を握り、天に向けて 腕を伸ばし突き上げる "悠佑"。あれ、いつ立ち 上がった?え、思ってたより 背低い…可愛ッッ… (尊死寸前)
雨にさらされて、長い髪も 着物も、全身びしょ濡れで
お祭りが開かれている 神社の境内の端に、小さく なって座り込んでいた。
俺が声をかけると、 肩が跳ね上がり、 驚いたように目を 見開いて顔を上げた。
初めて見た時、 こう思った。
"綺麗な鬼だ"と。
長い黒髪で、 毛先は明るい黄色に 染まっていて、 琥珀色の、澄んだ 大きな瞳はとても綺麗で
潤んだ瞳でこちらを 見上げる彼の姿は、 どこか子犬のようで。
無邪気に笑う幼い 顔も、苦笑する顔も、 悲しそうな顔も。 コロコロ変わる表情も、 左側の一本しかない、 白いツノも、どこか 愛おしくて。
だが、彼は鬼。 増してや、最も位の高い 黒鬼の一族。
なのに俺は、彼に 一目惚れしてしまった。
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コメント
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続きが気になります!頑張ってください!(っ`・ω・´)っフレッ!フレッ!
楽しみ!«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク