テラーノベル
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昔から
我慢は得意な方だった
僕は母が大好きだった
毎日ご飯を作ってくれる
絵本を読んでくれる
自分の身を呈してまで、僕を守ってくれる
いつしか僕はとても静かな子になった
父のいない
母の唯一の安息の時間を、僕の我儘なんかに使ってほしくなかった
僕に構ってほしくないと思う反面
放ったらかしにされていると悲しくなって
笑いかけてもらえるととても嬉しかった
そんな
僕の我儘がなければ
今でも僕は、お母さんと一緒に
居られたのかな
そう言って
笑いあって
幸せで
この後
あんなことが起こるなんて
思いもしなかったんだ
なんで
今日は帰ってこないはずじゃ…
痛い
なんだ?
なにが…
そう言って腕を振り上げた父に
怯えて目を瞑って、体を固くしていた僕に
拳が振り下ろされることはなくて
恐る恐る目を開けると
母が僕に覆いかぶさっていて
お母さんの顔は強ばっていて
拳を振り上げた父に
抵抗もしない母を
どうにか助けたくて
必死で手をのばして
僕は
父の体に触れてしまった
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