テラーノベル
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眠ってから約10時間後、コップは目を覚ました。 つまらない天井が見えたから、ここは医療室だとすぐにわかった。 何気に医療室にお世話になるのは初めてである。今まで病気をしたことがない健康体だったから。 しいて言えば、なにかよくわからない鋭い針の医療器具を頭に刺される時に来るくらいだから、最後に行ったの2年前である。 (おそと、こわかったな…。知らないおとなたちは、たぶん味方じゃないんだろうな…) そして外での景色がフラッシュバックした。初めての体験であり、初めてあんな強い力で殴られたから、脳に記憶が焼き付いて、今でも鮮明に思い出せる。 外に絵本のような青い空はなかった。 きらきらして良い匂いのお花もなかった。 あったのは、ぬかるんで重い足取りになるだけの柔らかい地面と、酷い砂嵐、赤い染みが広がった草むらだけだった。 そして、知らない大人。 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…!!!」 コップはあの光景の異常さと体験に戦慄して過呼吸になった。 (いたかった、こわかった、でも、) (そとにもういちどいきたい) 自分でもわからないくらいに外への好奇心は消えていなかった。 あんなに怖い思いをした筈なのに。 コップの過呼吸に気付いた医療室の大人が、 「コップ!!どうしたの!?」 と慌てて駆け寄った。 コップは驚いたが、逆に冷静になれて、 「あ、お、おはよう…」 と挨拶をした。 なんともバツが悪い。だって絶対にこの後怒られるから。 いつもは楽しく大人達と話すのに、なんだかその気分にはなれないでいた。 でも、 「ねえ、おそと、えほんみたいじゃなかった… どうして?なんでえほんみたいじゃないの? あおいそらは?いいにおいのおはなは? ないの?」 外が気になる。絵本と違う理由。知らない大人達がコップを襲ってきた理由。 その大人達を施設の大人が撃った理由。 (あれ…うった…?) 「あれ!?」 コップは慌てふためいた。 「じゅうは!?」 医療室の大人は驚いた。 「あっ!!」 しまった!!口が滑ってしまった!! コップは口を抑えた。 (どうしよう、じゅうをもっていったっていうの、ばれちゃいけないのに、いっちゃった!!!) 「やっぱ、持っていったんだね。だからコップのポケットの中からCOPが見つかった訳だ…」 医療室の大人が怖い顔をしている。 「あ、いや、ちが…」 必死に言い訳しようとするも、言葉が出てこない。 「ちょっと待ってて、あまーいお菓子を持ってくるから」 …へ? なんか、怒られると思ったけど、優しいぞ…? (でも、あまいおかしもってきてくれるならいっか!) 単純な思考で、お菓子を待っている。るんるんな気分だ。 数分して、医療室の大人は別の大人達を連れて戻ってきた。 でも、お菓子を持っている雰囲気ではなく、神妙な顔をしていた。
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