桜の下。
あの日から10年......あの時言えなかった気持ちをちゃんと伝えなきゃ...
たけし
あれから10年この街も変わったなぁ。
お!見えてきた。
寒いけど来れてよかった!
まだ桜の時期には早いけど……さくら会いに来たよ。

さくら
たけし…やっと来た!すごく待ったよ

たけし
待たせたな。さくら

さくら
なんか疲れてない?最近忙しいの?

たけし
そうだ!

さくら
なになに!?

たけし
聞いてくれよ。俺さぁ、近々すごく大きいプロジェクト任されることになったんだ!

さくら
え!?ホント!!すごーい!!どんな仕事!!

たけし
すごくやりがいのある仕事でさ…

さくら
うんうん!

たけし
海外でしばらく仕事することなってさ

さくら
え!?

たけし
日本離れるから、ここに来るの最後になりそうなんだ…

さくら
なんで!?どうして…やっと来てくれたのに!

たけし
ごめん

さくら
そんなの嫌だ!!だって...

たけし
さくら...お前が生きてたら、今の俺になんてうかな?

さくら
え......

たけし
なんで…なんで俺なんか庇って死んだんだよ!!お前がいなきゃ俺の人生なんも楽しくないよ...

さくら
たけし...

たけし
俺…昔からずーっとお前が……

僕ががなにか言いかけると、
桜の木が風に吹かれ、揺れていた
頬に何かが触れた
たけし
さく…ら?

頬に触れたそれを手に取ると、
12月に咲くはずなどない桜の花びらが
まるで頬を伝う涙のように思えた。
そしてさらに強い風が吹くとあたり一面を
覆い尽くさんばかりの桜吹雪が舞っていた
たけし
さくら!?

さくら
え?

たけし
さくら!本当にさくらなのか!!!

さくら
見えるの?

たけし
あぁ、見えるよさくら!

さくら
私…死んだんだね。すっかり…忘れてた

たけし
忘れてたって…

さくら
死んだこと忘れるなんて、私らしいね

たけし
確かに…さくら…らしいな

さくら
え!?酷くない?

たけし
ごめん……

さくら
……

たけし
…………

さくら
もう!そんなにしんみりしないでよ

たけし
……

さくら
ねー!たけし?たーけーしーくーーん!

たけし
あ…うん……ごめん

さくら
あれ?泣いてんの!?もう、なんで泣くかな…
こっちまで…泣けてくるじゃん…

たけし
ごめん…

さくら
あー!もう!!こんな空気ちょー嫌なんですけど!
それにさ…多分私もう時間ないっぽいし

たけし
え!?ど…どうゆう事だよ!

さくら
なんかさ…色々思い出しちゃった

たけし
思い出した?

さくら
私ね、すごくたけしに会いたかったの

たけし
あ…うん。ごめん

さくら
別に責めてるわけじゃないから!謝らないでよ。

たけし
うん

さくら
たけしさ…覚えてるかな?まだ私達が小さかった頃にした約束…

たけし
覚えてるよ!さくらが28歳になっても結婚してなかったら、僕のお嫁さんになってって…でも

さくら
良かった!覚えててくれて!忘れてたり…今日来てくれなかったら…たけしに会えなかった恨みで呪ってたかも…なんちゃって

たけし
ばか!洒落になんねーんだよ

さくら
あはは…ごめんごめん。
でも、来てくれたから…

たけし
ごめん…今まで来れなくて

さくら
良いよ!だって、今日こうして来てくれたから…それに…

たけし
それに?

さくら
私…たけしに会えるの今日が最後だったの!最後の日に会いに来たんだよ!

たけし
え…

さくら
だからね、今日こうして会いに来てくれてありがと!最後にあえて…良かった!

たけし
嫌だ!…さくらに…さくらに会えたのに、もう離したくない!

さくら
ねぇ。しっかりして!!私が好きだった、たけしはビビりで、すぐに泣くし、勉強も運動もなんかイマイチで、朝も私が起こさなきゃ起きなくて...でも、私が困ってたら颯爽と現れる、私のヒーローなんだから!だから、私を助けると思って、笑顔で見送って!…ね?

たけし
無理だ!

さくら
無理じゃない!

たけし
絶対無理だよ!

さくら
無理なんかじゃない!だって……たけしは、私のヒーローなんでしょ?

たけし
……

さくら
泣かないでよ?ね?

たけし
……あぁ…わかった

さくら
ありが……とう……

たけし
…さくら?

さくら
たけし…ずーっと……たよ

たけし
さくら!消えるな!嫌だ!!
俺も!俺もずっとさくらが……

さくら
たけし……それ以上はダメだよ?
私…また未練タラタラで…
成仏出来なくなっちゃう。

たけし
っ……さくら…またな!
さよならじゃないから!
また会えるから!だから!
またな!

彼女の口がまたねと動いた気がしたが
もう耳に声は届かなかった。
舞っていたはずの桜は
跡形も泣く消えていた。
しかしこれは夢ではない。
頬に触れた桜の花びらが
僕の手の中にあったから。