ill
lan
新学期が始まり1ヶ月くらい経った頃
文化祭まであと少しという時期
やはり校内の空気に嫌気がささないことは無かった
実行委員も、 どれだけ説得しようとしても準備に参加しない俺を諦めたようで 俺に枷は無かった
今日もいつもと同じように屋上に座り込んでいた
lan
あれ、人いんじゃん
ドアの開く音と共に聞こえた声は、あの日聞こえたあの声だった
lan
ずっとそこに座ってんの?
lan
あっちの方に椅子あるから、
lan
持ってこようか?
声は俺に向かって放たれていた
とつぜんの事で思考は鈍っていたが その声を聞き逃すことは無かった
lan
聞こえてないか
lan
椅子!持ってくるね!
ill
あ
まともに人と喋ること自体久しぶりだったからか、 返事も出来ない程だった
lan
椅子、置いとくね
ill
ありがとう
そう言うのが、精一杯だった
lan
声出すけど邪魔だったら言ってね
lan
なるべく遠くで歌うから!
ill
いや別に気にしない、
気にしない、というより
またあの歌が、声が聞きたいという 感情の方が強かったが、
そいつは手を振って離れた場所に行ってしまった
気が付けば下校時刻10分前のチャイムが鳴る時間になっていた
寝てしまっていたのか、 ゲームに夢中になっていたのか、
気付かない内にあいつも居なくなっていた
今日は歌は聞こえなかったが 声の主に会えて良かった