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ファストフード店に着いてすぐにレジへ行き、注文を済ませた。

ここは、黒子や火神のみならず、バスケ部御用達の店らしい。

黒子 テツヤ

火神くんまたですか。

火神 大我

毎回言うの飽きねぇのかよ。

黒子 テツヤ

飽きる飽きないの問題じゃありません。体壊しますよ。

千冬の目の前には、黒子のポテトフライとバニラシェイク、火神の大量のハンバーガーという異様な光景が広がっている。

火神 大我

いつも食ってて体壊してねぇんだから平気だよ。

黒木 千冬

(それにしてもこの座る位置おかしくない…?)

ソファ席に座っているのだが、奥に黒子、向かいに火神、そして千冬は何故か黒子の隣に座らされている。

黒子 テツヤ

すみません千冬さん、いつもこうなんです。

黒木 千冬

いえ、よく食べるのは良い事だと思いますし…

黒木 千冬

(何を言ってるんだ私は…)

火神 大我

余計なお世話だよ。

黒子 テツヤ

それで千冬さん、ボク、千冬さんに聞きたいことがあるんです。

黒木 千冬

はい、なんでしょう?
答えられる範囲ならなんでもお答えします。

黒子 テツヤ

千冬さんはバスケ経験者と聞きました。ならどうして秀徳や桐皇学園のような強豪校ではなく、うちに来たんですか?

黒木 千冬

簡単なことです。

黒木 千冬

去年のウィンターカップを見た、それだけの事です。

黒子 テツヤ

!…そうだったんですね。

火神 大我

つまり、俺らが優勝したから来た…ってことか?

どうやら火神は "優勝したから来た" というのが気に食わないようだ。

だが実際千冬が誠凛に来た理由は違う。

黒木 千冬

違います。
ウィンターカップは決定打に過ぎません。

黒木 千冬

私、相田監督や日向先輩たちが1年の時、つまりバスケ部が出来たばかりの時からずっと応援しているんです。

黒木 千冬

だから木吉先輩の事も知ってます。

黒木 千冬

霧崎第一高校との試合で大怪我したことも。
なんなら、その試合見に行ってましたから。

火神 大我

今思い出してもムカムカするぜ。

黒子 テツヤ

花宮先輩を殴ろうとした時はヒヤッとしましたよ。

火神 大我

う、うるせぇな…

黒木 千冬

そ、そんなことが…
え、えっと、それで…その後も何回か試合を見に行ったりしているうちに、いつの間にか誠凛バスケ部の虜になっていたんです。

黒木 千冬

そしてその極めつけがウィンターカップでした。

黒木 千冬

洛山高校との試合、誠凛の皆さんの連携が素晴らしくて。あの赤司先輩がいるチームなのに物怖じせずに勝負を挑む…そんなところに惹かれたんだと思います。

照れ笑いで話す。 千冬からしてみれば、この事を話すのは好きな人に告白するのと同じくらいドキドキする。

黒子 テツヤ

そうですか。ありがとうございます。そんなに褒められると何だか恥ずかしいです。

火神 大我

物怖じしてなかった訳じゃねぇけどな。赤司のエンペラーアイもそうだが、それを抜きにしてもアイツらの実力は確かだ。
正直焦った。全員ゾーンとかありえねぇ…

黒子 テツヤ

でも、昔の赤司くんに戻ってくれてボクはとても嬉しかったです。
あと、荻原くんが来てくれたことも。

黒子の顔から笑みがこぼれた。 テレビでも見なかった顔だ。相当嬉しかったのだろう。

エンペラーアイや、ゾーン、昔の赤司に戻った、というのはテレビからは全く伝わらない話だ。 故に千冬には何の事か全く分からないが、2人にとっては二度と忘れられない出来事の1つだ。

黒木 千冬

ウィンターカップがきっかけという訳じゃないんです。もし優勝してなくても私は誠凛に入学して、バスケ部に入るつもりだったので。

黒木 千冬

まぁ、それも結局、"仲間" っていうのが羨ましかっただけかもしれないですけど。

火神 大我

お前、バスケやってたんだろ?なら部員全員仲間じゃねぇのかよ?

黒木 千冬

あんな人たち、 "仲間" なんて呼べませんよ。

ふと、昔の記憶が甦る。 忘れようとしていた記憶だ。

黒木 千冬

私は… "仲間" を知らない…

千冬が無意識に呟いたこの言葉は、2人にも聞こえていた。

火神 大我

あ?

黒子 テツヤ

………………

黒木 千冬

えっ、あ、いや…

黒子 テツヤ

それってどういうことか、聞いてもいいですか?

黒木 千冬

……そのままです。

黒木 千冬

私がいた中学のバスケ部は、あまり強くありませんでした。
それに、やる気もなかった。

黒木 千冬

だから私、本気で日本一目指そうよって言ったんです。
そしたら……

"はぁ?日本一?馬鹿じゃないの?"

"そんなの無理に決まってんじゃん"

"日本一とかそんな恥ずかしいこと、よく堂々と言えるよな。"

黒木 千冬

って。

すると火神が音を立てて立ち上がる。

火神 大我

なんっだよそれ!!

黒子 テツヤ

火神くん、お店に迷惑ですよ。
気持ちは分かります。でも座ってください。

火神 大我

っ、クソッ!

火神 大我

そん時に俺がいたらぶっ飛ばしてるぜ。

黒木 千冬

日本一になったお二人にこんなこと言うのはどうかと思うんですけど…

黒木 千冬

"日本一になる" って言うの、恥ずかしいと思ったりしませんでしたか?

平然と聞いた。 その事が2人には信じられない。

だが、千冬が日々過ごした中学校では "日本一を目指すことは恥ずかしい" というのが当たり前だった。

その概念が染み付いた千冬には、彼らがどうして日本一を本気で目指し、日本一になることが出来たのか、疑問でしかないのだ。

火神 大我

お前それ本気で言ってんのか。

黒木 千冬

失礼は承知です。でもこれは日本一になった先輩たちにしか聞けないんです。

火神 大我

そんなこと聞いてねぇ。本気で言ってんのかを聞いてんだよ。

火神の拳には力が入っている。 それを見た黒子はすぐに声をかけた。

黒子 テツヤ

火神くん落ち着いて下さい。

火神 大我

お前はなんで何も言わねぇんだよ。

黒子 テツヤ

彼女は至って真面目だからです。

火神 大我

あ?テメェ何言って…

黒子 テツヤ

ちょっと来てください。
千冬さん、少し席を外しますね。

黒木 千冬

は、はい。

黒子は火神を無理矢理引きずって店を出た。 店の外で何かを話しているようだった。

火神 大我

おい!何すんだ!

黒子 テツヤ

彼女が過ごしてきた環境が、彼女にあの発言をさせたんです。

火神 大我

は?

黒子 テツヤ

彼女は "日本一を目指すことは恥ずかしいことだ" って思い込んでる。

黒子 テツヤ

周りのそういう雰囲気は、多少反抗したところで効果はありません。
なんなら…

黒子 テツヤ

"感染する"。

火神 大我

感染って…

黒子には千冬の気持ちが痛いほど分かる。自分もそうだったからだ。

変わってしまった赤司や青峰、紫原も黄瀬も。 それがおかしい事だというのは黒子は分かっていたし、何とか説得しようとした。

それでも、彼らは変わらなかった。 帝光のバスケは変わってしまった。

結局黒子も抗いきれずに深い沼に沈んでいった。 息苦しい世界に引きずり込まれた。 笑顔が消えた。

そんな黒子を救ったのが誠凛バスケ部。ならば、今度は自分が千冬を助ける番だと、1人静かに決心する黒子だった。

黒子 テツヤ

前に話しましたよね。ボクの中学時代のこと。千冬さんの境遇はボクと少し似ています。

火神 大我

……!

黒子 テツヤ

ボクは誠凛のバスケ部に救われた。
だから今度はボクが千冬さんを助けてあげたいんです。

黒子 テツヤ

だから、千冬さんを否定しないであげて下さい。お願いします。

黒子は、火神に頭を下げた。

火神 大我

お、おい、分かった、分かったから頭上げろって!

店の外で話している為、通行人が物珍しそうに2人を見ているし、店の中にいる人も、不思議そうに2人を見ていた。

それに気づいた火神は、あまりの視線の痛さに居た堪れなくなって無理矢理頭を上げさせた。

黒子 テツヤ

ありがとうございます…!

火神 大我

つーか、お前はアイツのなんなんだよ…兄貴にでもなったつもりかよ。

黒子 テツヤ

…?先輩ですよ?

この発言で火神は察した。

"コイツ、後輩が出来て嬉しがってやがる…!" と。

火神 大我

あー、もう分かった何も言うな。
ほら、話は済んだだろ、戻るぞ。

黒子 テツヤ

はい!

千冬が数分待った後、黒子は満足そうな表情で、火神はどこか納得がいっていないような表情で戻ってきた。

黒木 千冬

お、おかえりなさい。

黒子 テツヤ

長らくお待たせしてしまいすみません。

火神 大我

お前の聞きたいことに答えてやる。

黒木 千冬

え?

火神 大我

"日本一になる" って言うことは全く恥ずかしくねぇ。

黒木 千冬

火神 大我

なぜなら、俺ら全員の実力を信じてるからだ。
例え、それが今は分からなくても、俺らがいずれ分からせてやる。
覚悟しとけよ。

黒木 千冬

火神、先輩……

黒子 テツヤ

火神くん、たまにはいい事言いますね。

火神 大我

あぁ!?黒子テメェ喧嘩売ってんのか!?

黒子 テツヤ

売ってません。落ち着いて下さい。
それより、火神くんが言ったことに間違いは何もありません。

黒子 テツヤ

きっと、ボクたちが助けます。

黒木 千冬

助ける…?

黒子 テツヤ

はい、助けます。

火神 大我

気にすんな。ただの例えだよ。

黒木 千冬

は、はあ…。

黒子 テツヤ

そろそろ暗くなってきましたね。
帰りましょうか。
火神くんは早く食べちゃって下さい。

火神 大我

お前が外連れ出したりするからだろうが!!
お前も道連れにすんぞ!

黒子 テツヤ

無理です。お腹いっぱいなので。

火神 大我

大真面目にで返してくんな!!

火神を急かしてから約10分、ようやく火神が食べ終わり、店を出た。

3人が外に出ると、外はすっかり茜色に染まっていた。

黒木 千冬

わ、空綺麗…

黒子 テツヤ

本当ですね。

火神 大我

あんま気にしたこと無かったけど、たまには空を見んのもいいな。

黒木 千冬

……黒子先輩、火神先輩、今日はありがとうございました。

火神 大我

な、なんだよ急に。

黒子 テツヤ

ボクたちお礼を言われるようなことは何も…

黒木 千冬

火神先輩が本気で怒ってくれたこと、黒子先輩が助けるって言ってくれたこと、私は凄く嬉しかったです。

黒木 千冬

でも、1つ気になるのは…

黒木 千冬

今日初対面の私に、どうしてここまでしてくれるんですか?

黒子 テツヤ

どうして…でしょう。

火神 大我

俺はお前んとこの中学の奴らが気に食わなかっただけだ。

黒子 テツヤ

千冬さんが、どことなくボクに似ている気がしたから…ですかね。

黒木 千冬

似てる…?

黒子 テツヤ

ボクも中学時代色々あったので。
一気に話すと混乱してしまうと思うのでこの話はまた今度ということで。

火神 大我

じゃ、俺こっちだから。

黒子 テツヤ

はい。また明日。

黒木 千冬

さようなら。

黒子 テツヤ

千冬さん、家はどの方向ですか?
もうすぐに真っ暗になりますから、送っていきます。

黒木 千冬

えっ!?いやいや大丈夫ですよ!
今日だけで幾つも迷惑かけてしまったのに…!

黒子 テツヤ

迷惑?迷惑なんてかけられてませんよ?

黒木 千冬

ドリンク作り手伝わせてしまったり、昔の話を長々と聞かせてしまったり…!

黒子 テツヤ

そんなこと、迷惑の内に入りません。
それに、迷惑をかけない人なんていませんから。

黒木 千冬

や、そうじゃなくて…!

黒子 テツヤ

あ、でも送っていくのが迷惑なら無理には…

黒木 千冬

それこそ迷惑の内に入りませんよ…!

黒子 テツヤ

じゃあ行きましょうか。どっちですか?

黒木 千冬

うぅ…こっちです…

これ以上何を言っても無駄だと感じた千冬は、諦めて黒子に送られることにした。

少し歩いたあと、千冬の頭にふとある事が思い浮かんだ。

黒木 千冬

そういえば、黒子先輩のお家はどの辺りなんですか?

黒子 テツヤ

実は偶然にも、ボクの家もこっちなんです。

黒木 千冬

えっ、そうなんですか!?

黒子 テツヤ

もしかしたら、家近いかもしれませんね。

黒木 千冬

ま、まさかそんなベタな…

そんなことあるわけが無い、と思っていたが、千冬の家に着いた時、衝撃の事実が発覚した。

黒木 千冬

………………………………

黒子 テツヤ

本当にこんなことあるんですね。
流石にびっくりしました。

黒木 千冬

えぇ、本当に…
まさか家がこんなに近いなんて…

黒子の家は、裏の家の向かい側だった。 分かりにくいだろうが、つまりはこういう事だ。

黒木 千冬

で、でも今まで気づかなかったなんて…

黒子 テツヤ

普通は気づきませんよ。
ボクは昔から外で遊ぶような子供じゃなかったですし。
影が薄かったせいもあって登下校もほとんど誰にも気づかれませんでしたから。

黒木 千冬

にしたってこんな本の中みたいなこと…

黒木 千冬

いや、覆らないことをぐだぐだ言ってても仕方ない。

黒木 千冬

先輩、送ってくださってありがとうございました。また明日。

黒子 テツヤ

はい。また明日。

黒木 千冬

あ、そうだ先輩!

黒子 テツヤ

はい?

黒木 千冬

メアド交換しませんか!

黒子 テツヤ

もちろんです。

黒子とメールアドレスを交換した後、軽く手を振って家に入った。

黒木 千冬

ただいまぁ〜…

おかえり。遅かったね。

黒木 千冬

あぁうん、部活の先輩とご飯食べに行ってて…

なら夕飯いらないって連絡してくれたら良かったのに。

黒木 千冬

あ、ごめんすっかり忘れてた…

もう、ごめんじゃない。今日の夕飯の残りは明日のお弁当に入れるからね。

黒木 千冬

りょーかい。

母と会話していると、先程メールアドレスを交換した黒子から、早速メールが届いた。

黒木 千冬

あ、お母さん、先輩からメール来たから部屋行くね。

あんまり遅い時間までやらないでよ。明日も学校なんだからね。

黒木 千冬

分かってるよ。

そう言って、足早に部屋へと向かい、携帯を開いた。

黒子 テツヤ

早速メールしてしまってすみません。
明日からの部活について監督から連絡がありまして。今お時間大丈夫ですか?

黒木 千冬

こんばんは。全然大丈夫です。
むしろわざわざ連絡くださってありがとうございます。

黒子 テツヤ

いえいえ。
それで実は、1年生と2年生でペアを作ることになったらしくて、ボクと千冬さんがペアに決定したそうです。

黒木 千冬

え!?ま、待ってください、私はマネージャーですよ!?

黒木 千冬

私と組むくらいなら他の1年生と組んだ方がいいんじゃ…

黒子 テツヤ

どうやら、監督はボクが千冬さんの手伝いをしているのを知っていたようで。

黒木 千冬

あ〜…成程…

黒子 テツヤ

でも、今年は2年生より1年生の方が少し人数が多いので、千冬さんともう1人教育係をすることになっています。

黒木 千冬

教育係って…(笑)

黒木 千冬

そのもう1人って誰なんですか?

黒子 テツヤ

千冬さんと同じクラスの水原くんみたいです。

黒木 千冬

そうなんですね。分かりました。

黒木 千冬

では明日からよろしくお願いします。

黒子 テツヤ

こちらこそよろしくお願いします。おやすみなさい。

黒木 千冬

おやすみなさい。

黒木 千冬

今日はまさかの連続だ…

黒木 千冬

家は近いしペア組まされるし…

黒木 千冬

まぁでも、他の先輩よりかはもしかしたらやりやすいのかも…?

黒木 千冬

って、何独り言言ってんだろ。
お風呂入って寝よ。

携帯を閉じ、風呂に入ったり歯磨きをしたり。 色々な身支度を済ませ、ようやく布団に入った。

黒木 千冬

明日も頑張ろう。

そう意気込んで千冬は就寝した。

今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
今回はベタな展開が多かったので個人的にもどうかなと思ったのですが、いかがでしたでしょうか?

まさかこんなに長くなるとは思わず…。

毎話180〜200タップ前後で書いていく感じになるかなと思っています。

どう完結させるかはまだ決まっていないのでもう少しお付き合い頂けますと幸いです。

では、また次回。

この作品はいかがでしたか?

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