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昨日… 僕は彼女と駅前で待ち合わせをした

だけど 彼女は来なかった

いつもと同じ日が来ると思ってた

いつものように学校へ行って 帰りに彼女や友人と遊びに行く

そうだ 帰りは美味しいものでも買って行こう 弟達が喜びそうな アイスクリームなんてどううだろう?

そのあとはお風呂に入って ご飯作って 勉強して 彼女に電話して…

分かってる もうご飯を作ってあげる家族はいない

もう一緒に遊ぶ友達もいない

だからせめて… 彼女と待ち合わせをした

駅前で待ち合わせをしたんだ

そしたら黒い服の人に 隣に居た人が 撃たれた…

撃たれた人は痙攣じみた動きを ピクピクとしている だけど それもすぐなくなった

バンッ!

銃声が響いた

目の前が赤く染まったのが分かる どうやら撃たれたのは 僕のようだ

彼女は来ない きっと来れない…

だって

彼女は電話の向こうで 悲鳴をあげながら ムシャムシャと食べられたのだから…

ああ…

でも大丈夫

これで君の側に行けるよ…

………

誰も居ないオフィス

TVニュース「今街は…世界は… 終わろうとしています…」

TVニュース「私達も時期に 【奴等】に殺されるでしょう…」

TVニュース「コレを観ている 生存者の皆さん… どうか遠くへ 【人が居ない】場所へと 急いで逃げてください」

TVニュース「戦ってはいけません 銃があっても絶対に…」

スタッフ「版薔薇さん! 奴等が来た!!俺らも逃げなきゃ!」

版薔薇「逃げるって何処に!? 私達はもう… 逃げる場所なんてないのよ…」

その後 悲惨な悲鳴を最期にニュース中継は 途絶えた…

学園の屋上

????

…………

夥しい血の水海 そこに浮かぶ肉片 目玉や内臓が散らばる楽園…

その楽園の住人は かつては【人間】と呼ばれて居た

????

ア“ア“ア“…

彼等は死んだ人間… 冥府の底から蘇った屍人

ゾンビと言えば分かりやすいだろうか

だが

彼等はソレ(ゾンビ)とは 異なる点が幾つもある

男子生徒

ひ…!?
や…やめろ!!
来るな!!

????

ハァ”…ア“ア“ア“!!!

ンギャァァァ!!!? 断末魔をあげ助けを乞う しかし 声をあげていたつもりが… 下顎から上が無かった…

そう ゾンビとの違いは 明確な【殺意】を持って 生者を惨殺すという点だ…

殺された人間の頭が無事であるなら 冥府から蘇り 彼等と同じように 生者を無差別に襲うようになる

憎悪を抱き…

逃げ惑う人々 生者を貪り惨殺する生者だった者

この世界に救いはない 希望は潰えたのだ いつの間にか軍人の姿も 武装した市民すら見なくなっていた

世界規模で一部のメディア以外の 電子機器が故障した為 兵器の運用が出来なくなり 生身での戦闘を余儀なくされた軍人は動く屍達の群れにほとんどが 殺されてしまった…

連絡手段も無く 通用する武器も無い人類は…

もはや戦う術など無かった… 今この世界から… 人間という種が 根絶されようとしている

されど 明日への生を諦めないのもまた人間… 彼は その代表的な存在なのかもしれない

式神秋斗

クソッ!!
こっちにも化け物が
こんなに…!

ナベシン

おきゃぁぁ〜!!!
寄るな!!
来るな!!!
来ないでバカー!!!

ナベシンの拳銃

バァンッ!バンバンッ!!

3発の銃声が響く

ガンッガンガンッ!!

????

ア“ア“ア…

しかし 銃弾は鉄かコンクリートに 当たったかのような音立て 弾丸を弾く

椎名リリス

馬鹿野郎!
銃弾が通じないって
言っているだろ!?
ちゃんと聞けよ馬鹿!

ナベシン

だってー!!!

椎名リリス

今ので他の奴らに
気づかれただろうが!

ナベシン

ごめんなのだー!!

数十体の化け物共が おぼつかない足取りで こちらに迫ってくる

式神瀧

アキト!
アスカちゃんと
その子を連れて
先に行け!!

式神秋斗

兄貴!?

柊凪朱華

ひっく…
うう…スズ…スズゥ!!

姫咲鈴

あ…く…

式神瀧

行け!
おまえが
その娘達を守れ!

柊凪リリス

瀧…!
僕はおまえと…

式神瀧

リリス…
アキト達を頼むぞ?

柊凪リリス

………

柊凪リリス

ああ!
任せろよ相棒!

ナベシン

行くなら早くしてなのだ!

式神瀧

ナベシン!
有りったけの弾丸を
ぶち撒けろ!!
注意を俺らに
引きつけるんだ!

ナベシン

了解なのだ先輩!

ナベシンの拳銃

バンバンッ!

シュ… カシャ! (カートリッジを変える音)

柊凪リリス

行くよあんた達!

式神秋斗

スズはオレが運ぶ!
姉さんとアスカは
安全を確認しつつ
先へ行ってくれ!

式神秋斗

絶対に
送れたりしないから!

柊凪リリス

わかった…
それで行こう!

柊凪朱華

スズ…!!
死なないで…
お願い…!!

柊凪リリス

アスカ…
行くよ!!

アキト達は式神瀧とナベシンを 置いて先へ進む

ナベシンの拳銃

バンバン!!
バンバンバンバン!!!

????

ア“ア“ア“ア“…

????

ウ“ウ”…

ナベシン

先輩も先へ…

式神瀧

く…

ナベシン

先輩!?

式神瀧

悪いな…
俺もあんまり時間が
ないみたいなんだわ…

ナベシン

【先輩も】ですか…

式神瀧

ああ
どうせなら
カッコよく散りたいだろ?

ナベシン

いいっスねぇ…
オイラも…

カチッ

ナベシン

弾切れなのだ

式神瀧

拳があるだろ?

ナベシン

そうなのだ…
まだ拳があるのだ!!

式神瀧

1秒でも長く…
引きつけようぜ?

ナベシン

なのだ!!

夕凪が沈む中 アキト達は走り続けていた

 しかし いつの間にかその脚を止め 姫咲鈴を横に寝かせ彼女を 見守っていた…

姫咲鈴

…………

柊凪朱華

………スズ

姫咲鈴

…おね…がい…
私が人間である…うちに…
私…を

柊凪朱華

何…言っているのよ…
スズ…冗談は辞めてよ…

式神秋斗

そうだよスズ…
きっとまだ何か手はある…

柊凪リリス

残念ながら無いよ…

式神秋斗

で…でも
きっと探せば…

柊凪リリス

無いんだよ…
コレはそういう類いの
ウイルスなんだから…

柊凪リリス

感染者は時間の経過で
狂人化するか
死んでから屍人兵として
蘇るか…
それしかないんだ…

姫咲鈴

ゴフッ!!
ゲホッゲホッ!!

柊凪朱華

あ…ああ…
スズ…!スズ…!!

柊凪朱華

お願いお姉ちゃん!
スズを…
私の友達を助けて…!

柊凪リリス

アスカ…

柊凪朱鳥

お姉ちゃんは
凄い科学者なんでしょ!?
だったら…!!

柊凪リリス

だからこそ…
無理だって言ってるんだ

姫咲鈴

アスカ…
アス…カ…
お願い…早く…

姫咲鈴

わた…しが…
わたしじゃ…無くなる…
早く…!!!

柊凪朱華

やだ!
やだやだやだぁあ!!
死んじゃいやァァ!!!

姫咲鈴

アスカ…
お“ね”がい…
もう…意識…ガァ…!

姫咲鈴の皮膚は 赤と紫の血管が色濃く浮かび上がる

柊凪リリス

…!!!
(侵食が始まった!!)

柊凪リリスは懐から 拳銃を取り出す

柊凪朱華

お姉ちゃん!?
やめて…
何をする気なの!?

式神秋斗

まさか…
スズを撃つのか!?

柊凪リリス

この娘が屍人兵になれば
僕らは全員助からない
解るだろ!?
これまでに何人死んだと
思っている!?

柊凪朱華

でも…でもぉ…

式神秋斗

いや…でもまだ…

柊凪リリス

甘えるな式神弟!!

式神秋斗

…ッ!!?

柊凪リリス

あんたは兄貴に
頼まれたんじゃ
ないのか!?
アスカを守れって!

柊凪リリス

このままじゃ
みんな死んで
しまうんだぞ?

柊凪朱華

うう…ううう…

式神秋斗

選べって言うのか?
友達を殺すか…
オレ達が死ぬかって…!?

柊凪リリス

そうだ…
それがこの現状の…
世界のルールなんだ…

柊凪リリス

生き残る為に
何をするか…
どうすべきか…

柊凪リリス

もう…
誰も守っちゃ
くれないんだ…
決断しなきゃいけない

姫咲鈴

グ…ガァ…ア“ア“!!?

柊凪朱華

………!

その日 オレは初めて決断した

人の命を奪う決断を

柊凪リリス

もう時間は無いよ?
あと少しで銃じゃ
殺せなくなる…

柊凪リリス

僕が引き金を引くから…
君らは眼を閉じてなさい…

柊凪朱鳥

お姉ちゃん…
私がやる…
親友として
私がやらなきゃ…

柊凪リリス

アスカ…

式神秋斗

ダメだ

柊凪朱華

アキト?

柊凪リリス

あんた…
まだそんな事を!?

式神秋斗

オレがやる…
オレがスズを
スズとして眠らせる!

柊凪朱華

わ…わたしが…

式神秋斗

親友だから?
責任?
それじゃダメだ

柊凪朱鳥

なんで君にそんな事を
言われなきゃ
いけないのよ!?

式神秋斗

最期まで親友でいる為だ

柊凪朱華

……ッ!?

式神秋斗

彼女を殺めれば
アスカ…
君の心が確実に死ぬ…

式神秋斗

そんな事は
スズだったら絶対思わない
決して望まない…

柊凪リリス

式神弟…

柊凪朱華

うぇ…えええ…ん…

オレは柊凪リリスから拳銃を 受け取った…

銃口を姫咲鈴の額に当てる

姫咲鈴

……り…とう…

式神秋斗

ごめん…
ごめんよ…
サヨナラ…スズ…

パンッ!!

賑やかだった日々はなく 死者が徘徊し生者を襲う悪夢が続く

家族を失い 友達を失い 命を奪い 命をを奪われる…

命の値段が大暴落したこの世界で 少年たちは パンドラカンパニーへ向けて 走りだす

????

ア“ア“ア“…

????

ウ”ウ“ウ“…

????

ギャ…ハァア“

しかし 亡者の群れに行手を阻まれてしまう

式神秋斗

クソ…
何処行っても
化け物だらけかよ!?

柊凪朱華

…スズ

柊凪リリス

マズイね…
囲まれた

式神秋斗

いや…
まだだ!!

式神秋斗

奴等の間を
通る事になるけど
北の方からなら
ギリギリ行けるはず!

柊凪リリス

確かに…
奴等は決して動きが
速い訳じゃない…
上手く行けば
行けるだろうね…

柊凪リリス

式神弟
君に渡した拳銃…
無くすなよ?

式神秋斗

……え?

柊凪朱華

お姉ちゃん?

柊凪リリス

いいかい2人とも
目指すは
パンドラカンパニーの
最下層…
エリア:アビスと呼ばれる
実験施設だよ

柊凪リリス

そこに行けばきっと…
何かが変わる筈だ

柊凪朱華

待って…
待ってよお姉ちゃん?
なんでお別れみたいな
事を言うの?

柊凪リリス

こっから先は何があるか
解らないからね
情報は少しでも
知っておくべきだろ?

柊凪リリス

アキト!
時間がない…
急いで突破するよ!?

式神秋斗

ああ!
アスカ…
行くよ?

柊凪朱鳥

うん!!

オレとアスカは柊凪リリスの掛け声で 一斉に飛び出した

前方に化け物が三体… 左右にばらつきがあるから 3人同時ならきっと2人は助かる筈だ

この作戦は1人が犠牲になるリスクが 大きい… だからこそ 式神秋斗は前に出る

敵を1番に引きつける為に 兄貴がそうしたように!!

柊凪リリス

………

アキトとアスカは 亡者に捕まる事なく亡者をすり抜ける

式神秋斗

あ…れ?
すんなり通れた?

柊凪朱華

ハァ…ハァ…ハァ…

おかしい

化け物共が中央へ集まっていく

式神秋斗

う…嘘…だろ?

柊凪朱華

え?

中央には赤い血吹雪が咲いていた

亡者に食いちぎられた手や脚が 散らばる

さっきまで一緒に居た 柊凪リリスという人間は

もう 何処にも居なかった

式神秋斗

………!!!

式神秋斗

初めから自分が囮になる
つもりだったのか…?

柊凪朱華

お…おね…

いや“ぁァァア“!

柊凪朱華の悲痛の叫びが空に響く だが 亡者共は見向きもしない 食事を楽しんでいるからだ…

パンドラカンパニー 月三河本部

オレは泣き崩れていた柊凪朱華を 無理矢理にでも引っ張り出し あの公園から逃げ出した

そして なんとかパンドラカンパニーへと 辿り付いたのだ…

柊凪朱華

あ…ああ…

式神秋斗

………
(精神が壊れかけている)

式神秋斗

(無理もない
狂わない方が異常
なんだよきっと…)

式神秋斗

行くよ…
アスカ!

柊凪朱華

……

式神秋斗

………

式神秋斗

アスカ!!!

柊凪朱華

ッ!?

式神秋斗

家族を失って辛いのは
十分解ってる…

柊凪朱華

…うう

式神秋斗

それ…でも…
それでも!!

式神秋斗

リリスさんの想いを
無駄にしたら駄目だ…

式神秋斗

自身を犠牲にしてまでも
君を…
オレとアスカを護った…
彼女の想いを…

そう… あの瞬間… 犠牲になるのはオレの筈だった

リリスさんはそれに気づいて いたのだろうか? 彼女は自身を囮に オレ達を逃してくれた…

たった1つの希望と共に

柊凪朱華

…お姉ちゃん

式神秋斗

それに
リリスさんだけじゃない…
兄貴やトモミ先生…
トシにハヤテ…

式神秋斗

ハルナやナギサ…
そしてスズ…

式神秋斗

オレ達は…
みんなの想いを
みんなの魂を…
背負っているんだ…

式神秋斗

だから…
こんな所で
立ち止まっている訳には
いかないだろ…

柊凪朱華

スズ…
みんな…

式神秋斗

パンドラカンパニーの
最下層に何があるかは
ソレは解らない…

式神秋斗

でもきっと
何かがある…

式神秋斗

リリスさんが
そこに行けって言ったんだ
だからきっと
希望はある筈だ!

式神秋斗

だから行こう…
アスカ…

式神秋斗

死んで逝った
みんなの想いと一緒に…

柊凪朱華

……アキト

柊凪朱華

……アキトォ

彼女はオレの胸で 大粒の涙を流しながら泣く… 涙や鼻水で顔を くしゃくしゃにしながら…

オレもソレにつられて ふと涙を零す…

残虐で残酷な世界は オレ達から大切な人達を みんな奪った…

辛くて苦しくて哀しくて… それでも… 希望を託された

散って逝ったみんなの魂と想いを この心と魂に背負った…

挫けた心 砕けそうな心 潰えた筈の希望

泣き終えた柊凪朱華は 心をどうにか持ち直し 式神秋斗の顔を覗く…

その瞳は力強く 何かを覚悟した様な顔だった…

柊凪朱華

コレ以上…
誰も死なせないで…

柊凪朱華

その為なら私…
あなたと行くよ

式神秋斗

アスカ…

柊凪朱華

やだもうアキトったら…
まだ泣いてるの?

式神秋斗

し…仕方ないだろ

急いで涙を拭う

柊凪朱華

行こうアキト…
お姉ちゃん達の想いと
一緒に…!!

式神秋斗

ああッ!

オレとアスカは パンドラカンパニーへと進んだ…

パンドラカンパニーに入り エレベーターを使い地下まで 降りて来た式神秋斗と柊凪朱華

しかし 最下層に行く為には もう一つの エレベーターへ乗るしかなかった

だが パンドラカンパニー内部は 化け物の巣窟であった…

柊凪朱鳥

アキト!
そっちに走って!!

柊凪朱鳥

エレベーターが見える!!

式神秋斗

ああ!!
アスカ!!
早くこっちに来い!

敵から逃げるにつれ いつの間にか 逸れてしまった2人

柊凪朱華

ううん
もう大丈夫だよアキト…

式神秋斗

何言って…

柊凪朱華

誰かが引きつけなきゃ…
2人ともここで終わる…

柊凪朱華

それくらい私にだって
解るんだよ?

柊凪朱華

君はずっと…
それをしようとしてたって
ことも…
知ってるんだから…

式神秋斗

アスカ…
いいから早く…

20人近くも人だったソレは 柊凪朱華を中心に集まりだす

柊凪朱鳥

行って!!!
アキト!!!!

式神秋斗

……!?

柊凪朱華は自決用に持たされていた 手榴弾を取り出す

式神秋斗

なんでおまえ…
そんな物を持って…!?

柊凪朱華

バイバイ
大好きだったよ…
アキト…

式神秋斗

や…やめ…

ドォーーンッ!!

爆炎が視界を奪う… 自決用だった為か威力は 控えめだったのが幸いしてか こちらに影響はない

だが 周囲を吹き飛ばすには十分の 破壊力だった

式神秋斗

アスカ…アスカ…
アスカァァッ!!!

式神秋斗

そんな…
そんなことって…!
嘘だろ…
アスカ…

コツンっと足下に何かが当たる

式神秋斗

ッ!!?

式神秋斗

コレって…

以前アスカにあげた人形の キーホルダー…?

式神秋斗

なんで…
なんでこんな…

????

ウ“…ア“ア“

????

オ”オ”オ…“

爆風で吹き飛ばされた屍人が 再び動き出す

式神秋斗

くそ…
くそくそくそ…

式神秋斗

…くそったれッ!!!
アスカの想いを無駄に
出来るか!!

壊れそうな心に喝を入れ 再びエレベーターへと走る

死んでいった者達の為にも ここで投げ出す訳にはいかない

式神秋斗

最下層へのボタンは…
コレか!!

式神秋斗は最下層 エリア:アビスへと向かう

式神秋斗

なんだ…コレ?

訳が解らない… デカい装置見たいなのが至る所に 設置されており

中央のカプセルらしい装置が 極めておかしいのだ…

カプセルの中の少女

………

巨大な水槽のような… カプセルのような何かに 女性が囚われている…?

式神秋斗

人…?

式神秋斗

どういう事だ?
なんで人がこんな場所に
閉じ込められて
いるんだ…?

式神秋斗

この女性は一体…
この機械はなんなんだ!?

????

彼女は全ての始まりであり

????

ソレは全てを
終わらせる装置…

聴き覚えのある声にハッとなり 背後を振り向く

式神秋斗

…椎名さん!?

椎名凛

式神君…
貴方が此処に
辿り着くなんてね…
正直に言って
凄く驚いているわ…

式神秋斗

どういう意味だよ?

椎名凛

そのままの
意味なのだけど…

椎名凛

でも…
そうね…

椎名凛

あえて付け加えるなら…
生きていてくれた事は
素直に嬉しく思う…

式神秋斗

…とても
そんな雰囲気のようには
見えないがな…

椎名凛の片手には拳銃が握られている

椎名凛

ああ…
コレ?

椎名凛

こんなご時世だもの
銃くらい持っていても
おかしくないでしょ?

確かにそうだ オレだって銃を預かっている…

椎名凛

それに貴方も拳銃を
持っているように
見えるのだけど…

式神秋斗

…………

椎名凛

黙りなんて
酷い人ね…

式神秋斗

椎名さん…
友達が大勢死んだ…
アスカもスズも
ハヤテもトシもだ…

椎名凛

そう…

式神秋斗

君はあの時…
学園がおかしくなった
あの日…
君は居なかった…
一体何処にいたんだ?

椎名凛

………

式神秋斗

答えてくれ…
椎名さん!

椎名凛

ズルいわね…
私には黙秘させては
貰えないのかしら?

式神秋斗

茶化さないでくれ
君が居なかったあの日
学園は…
月三河は…
世界が壊れた…

式神秋斗

ずっと君を探したんだ!
アレからずっと…
生きていてくれた事は
オレだって嬉しいさ!

式神秋斗

こんな場所で
再開さえしなければ…
そう素直に思たよ

椎名凛

なるほど
式神君は私が
全ての元凶だと
…そう思っているのね?

式神秋斗

………

柊凪の姉さんは言っていた… パンドラカンパニーの エリア:アビスに行けば 何かが変わると

式神秋斗

エリア:アビスに来れば
何かが変わる…

椎名凛

……!?

式神秋斗

そしてこのタイミングで
君が現れた…

式神秋斗

彼女は全ての始まりであり
ソレは全てを
終わらせる装置…?
そう言ってたな?

式神秋斗

もう一度聞く
どういう意味なんだ!?
彼女が始まりってのは
一体なんだ!?

カプセルの中の少女

……

椎名凛

なんでも聞けば
答えて貰えるとは
思わない方がいいわ

式神秋斗

…椎名

椎名凛

でも1つだけ…

空気が変わるのを感じる

ピリピリした圧が式神秋斗を覆う この感じにはずっと覚えがある… 屍人兵が放つ殺意はソレに近い

そして今… 純粋な殺意を… 式神秋斗は向けられている

椎名凛

全ての元凶であり
全ての原因は…

ゴクリと生唾を飲み込む 強烈な殺意に当てられ 息が詰まりそうになる… 嫌な予感が収まらない… 違うと言って欲しい…

椎名凛

君が思う通り
私が元凶であり原因

式神秋斗

……ッ!!?

式神秋斗

どうして…

椎名凛

悪いけど
君との話はもう終わり

椎名凛

退きなさい

式神秋斗

何をする気だ?

椎名凛

その女を殺す

式神秋斗

な…なんでだよ!!?
なんでおまえが
そんな事を!?

椎名凛

その女が邪魔なの
全てを支配する為にね

支配…!? 支配するってなんだよ… それじゃまるで… 本当に君が 全ての原因みたいじゃないか…!

式神秋斗

兄貴が…アイツらが…
アスカが死んだのは…

式神秋斗

おまえのせいだって
言うのかよ…

椎名凛

そう言っているつもり
なのだけど…?
意外とバカなのね…

初めて 椎名凛という女が怖いと思った… それでも 今の一言が オレの中の恐怖を 殺意で塗り潰すには十分だった

式神秋斗

く…
クッソォォォッ!!!

式神秋斗は椎名凛に向け 柊凪リリスの形見の拳銃を向ける だが 同時に椎名凛も拳銃を 式神秋斗へ向けた

椎名凛

屍人兵と違って
銃で死ぬのよ
人間って…
知らなかった?

式神秋斗

知ってるさ!!
だから向けてんだ!

椎名凛

そう
覚悟はあるようね

式神秋斗

これ以上…
世界を人々を…
おまえの好き勝手には
させねぇ!!!

式神秋斗

それが生き残った
オレのすべき覚悟だ!

椎名凛

………そう

椎名凛

なら…

椎名凛

私を殺しなさい

式神秋斗

……!!?

椎名凛

狙うのは眉間よ?

片方の指でトントン…と 自身のこめかみを叩く ちゃんと頭を狙え そう言っているのだ

式神秋斗

どういうつもりだ…
テメェ…

椎名凛

撃たないのなら
貴方を殺すわ

式神秋斗

…くッ!?

殺意の宿った瞳 オレにもはっきり解る… 椎名凛は本気だ

椎名凛

威勢だけじゃ
私を止められない
殺(や)る気がないなら
退きなさい

式神秋斗

退かない…

椎名凛

ハァ…

パァンッ!!

式神秋斗

…グァああア“!?

椎名凛の引いた弾丸は 式神秋斗の左肩射抜いた

式神秋斗

く…!!?

激痛が左肩に走る 弾丸は肩を貫通したせいか 風穴が空いた左肩から 大量の血が溢れる…

椎名凛

もういいわ
退かないのなら
死になさい

殺される 確実に殺される… オレの覚悟はこんなもんなのか?

違うだろ!!! 死んでいったアイツらの為にも… 引き金を引け!!!

式神秋斗

うああああ“!!

パァァンッ!

銃声がフロアに鳴り響く

椎名凛

………

式神秋斗

お…オレは…
オレはまた…

椎名凛

貴方の覚悟より
私の覚悟が上だったようね

椎名凛

サヨナラ…

式神秋斗

あ…ああ…

パァァン…!!

ドサッ!

式神秋斗

………

椎名凛が放つ銃弾は 式神秋斗の胸に命中した

式神秋斗はうつ伏せに倒れる

椎名凛

…………

椎名凛

……

椎名凛は式神秋斗に近づく

椎名凛

あなたは太陽…
私の大切な…

椎名凛

だから…

最期にもう一度… 彼女は彼の耳元で囁いた

「サヨナラ…」と

????

サヨナラ…

声が聴こえた… 親しかった誰かの 親しかった【つもり】の彼女の声が

微かに聴こえた…

消えていく

声の主も 側にいた友人達も 家族すらみんな…

嫌だ… 1人にしないで… オレは…

ガバッ

勢いよく上半身を起こす

式神秋斗

…ッ!!!

強烈な痛みが左肩から伝わる …そうだ オレは…撃たれたんだ…

ふと違和感に気づく

式神秋斗

…え?

左肩の傷が… 止血されている? いつの間に…

式神秋斗は急ぎ胸を確認する 銃で撃たれたはず…

しかし傷らしき痕がない

式神秋斗

どういうことだ…?

うまく頭が回らない…

混乱しているのだろうか?

式神秋斗

そう…だ
椎名さんは…?

辺りを見わたし椎名凛の姿を探す

しかし 彼女の姿は何処にも無かった

式神秋斗

椎名さん…?

彼女はオレを見逃したのか? 見逃してくれたのか…?

そうだ… カプセルの女性はどうなったんだ?

式神秋斗はカプセルが設置されていた巨大な装置に眼をやる…

しかしそのカプセルの中身は 何も無かった…

式神秋斗

人が消えた?

あれ…? 代わりに何かがカプセルの中にある 液体の中に衣服らしき衣が漂っている

式神秋斗

ウチの学園の制服?
高等部の…
女生徒のようだけど…

徐々に制服は跡形もなく液体の中で 溶けて消えてしまった

式神秋斗

…………

月三河海岸

ザァ…ザザァァ… 波の打ち上げる音が鳴る

あれだけしていた悲鳴が聴こえない あれだけ聴こえた唸り声が聴こえない

それはまさに 静寂とも言える静けさだった

あの後 何処をどれだけ探しても 彼女… 椎名凛の姿は見つけられなかった

式神秋斗はそのまま パンドラカンパニーを出てここまで 歩いて来た 来れてしまったのだ

屍人兵の姿はなく 生者も死者も居ない 無の世界…

代わりに 緑色の水溜りが至る所にあったのは 気がかりではある

誰もいない 知り合いも 友人も 家族も 人も…

友達を撃った感触が胸を抉ぐる 何度吐いたか解らない… 何度嗚咽を上げたか忘れた…

目の前で散って逝った彼女が 未だに眼から離れない 救えたかもしれない 救えたはずの彼女…

式神秋斗

…アスカ
…スズ
…みんな

式神秋斗

兄貴…
シロネ…
クロコ姉さん…

人恋しさが心を奪う 寂しい… ただただ寂しいのだ…

孤独を抱きながら 人を探して途方を歩む

冷たい風が容赦なく 式神秋斗の体温を奪う

歩みを止めうずくまる

ピィンを取り出し 電源を入れてみる

だが あの日 世界が壊れてから 一部のピィンが故障した…

式神秋斗

やっぱり起動しないか…

ピィンをポケットに仕舞い 歩みを再開する

パンドラカンパニー 地下最下層 エリア:アビス

式神秋斗

…………

また此処へ戻って来てしまった

あれから どれだけ探しても どれほど歩いても 人には出会えなかった

それ以前に あれだけ溢れていた 死者の化け物の姿が 忽然と姿を消したのだ

そう

初めから居なかったかのように

式神秋斗

………

此処には何も無い だけど 何故か… 脚が不思議とこの場所へとオレを導く

式神秋斗

疲れた…

もう何も無い 気力も 根気も 希望も 全てを無くしたのだ…

静寂が支配したこの世界で オレだけが生き残ったのだろうか?

全てを喪っても 思考だけは辞めない…

生きている以上 それだけは無くしちゃいけない…

そう 自分自身に言い聞かせる

式神秋斗

まだ…
まだだ…

式神秋斗

希望はまだある…
生存者を探すんだ…

失いかけた気持ちを 言葉を出す事で今一度 気持ちを奮い立たせる

式神秋斗

…もう一度行こう
きっと次は見つかる…

式神秋斗

クソ…
今日も駄目だった…

式神秋斗

また明日…探そう…

今日で何日目になるのだろう

あれからずっと生存者を探している… だけど 未だに成果は無い

これまでに巡った コンビニやスーパーで買い物を済ませ 食い繋いでいる… それもいつまで持つか…

式神秋斗

明日は東駅の周りを中心に
探してみよう…

明日なら 明後日なら そう… 自分に言い聞かせて 生存者を一心に探す

人が居ない以上 海底列車は出発する事はない 船も出せなければ 飛行機なんて論外だ

海底トンネルを歩けば いつかは神凪町へ帰れるだろうけど

きっと海底トンネルを抜けるまでに 息倒れるだろう…

どう考えても詰んでいる状況だ…

式神秋斗

それでも…まだ…

諦めないのですか?

式神秋斗

!!?

式神秋斗

機械音声!?

あなたはまだ 諦めないのですね

式神秋斗

…誰だ?
何処に居る!!?

私はずっと あなたを観ていました

式神秋斗

ずっと…?

中央の電子機器が 動いているのに気づく

式神秋斗

あの機械…
まだ生きているのか?

電子機器に近づく式神秋斗

ANUB i S

こんにちは
ANUB iSです。

式神秋斗

アヌ…ビス?

ANUB i S

初めまして
人類最期の生存者

式神秋斗

…は?

ANUB i S

あなたの死を持って
人類浄化計画ANUB i Sは
完了致します

ANUB i S

しかしながら
非検体00…
LOST No.の妨害により
屍人兵は全て壊滅…

式神秋斗

壊滅…?
待て…何を言って…

ANUB i S

その予定だった様ですが
彼女の計画は失敗
結果はあなた意外の
人類の浄化です

式神秋斗

だから
その彼女ってのは
誰だよ!?
非検体の妨害ってのは!?

式神秋斗

もうちょっとオレにも
解りやすく言ってくれ!

ANUB i S

疑問に回答…
非検体00LOST No.とは
【椎名凛】と呼ばれる
個体です

式神秋斗

椎名さん…!?

式神秋斗

失敗したって一体…
何を失敗したんだよ!?

ANUB i S

彼女は制御装置に入り
システムと同化する事で
ANUB iSシステムを
支配しようとしました

ANUB i S

しかし
不確定要素が幾つも重なり
計画は失敗

ANUB i S

彼女自身
肉体を失い
魂は電子の海で永遠を
さまよい続けています

式神秋斗

待て…
あのカプセルに漂っていた
制服ってのは…まさか…

ANUB i S

回答
椎名凛の物で
間違いありません

式神秋斗

嘘…だろ?
やめてくれ…

式神秋斗

なんでアイツは
そんな自殺じみた真似…
しようとしたんだ…?

ANUB i S

回答
制御システムを使い
【hazard Virus】に感染した
屍人兵に命令を下す為だと
思われます

式神秋斗

命令…?

ANUB i S

私は死者の王
ANUB iS
屍人兵に
人を襲わせる命令を
下すように
設定されたシステム

式神秋斗

……!?

冗談だろ…? 死人を操って生者を殺させてたのは 全部…コイツだっていうのか!?

式神秋斗

こんな機械に
みんな殺されたのか!?

ANUB i S

否定
私はあくまで
命令を下すだけ
私をそう設定した
創造主と…
【hazard Virus】を
もたらした
【始まりの神子】こそが
全ての元凶と
言えるでは
ないのでしょうか?

始まりの神子? また理解を超えた単語が出て来たな ハザードウイルス? それはきっと ゾンビの感染みたいなアレか…?

式神秋斗

つまり…
椎名さんはオレ達を
裏切っては
いなかったって
事なんだな?

ANUB i S

回答
裏切りの定義にもよります
しかし、式神秋斗の求める
答えはきっとこうでしょう
答えはYESです

式神秋斗

おまえを止めようとして
失敗した…
その結果が自身の消滅か…

ANUB i S

回答
大体合っています
ですが
失敗したから
消滅したのではなく

ANUB i S

不良品である
LOST No.では
自身の細胞の全てを
消失する事で
制御装置と同化する
必要があった

ANUB i S

消滅する事は
必然だったのです

式神秋斗

まさか…死ぬのが
解っていて
やったっていうのかよ!?

ANUB i S

回答
YES

式神秋斗

なんで…
なんでそこまでして…

ANUB i S

回答
とても興味深い
思考でした

ANUB i S

世界の為ではなく
パンドラカンパニーを
滅ぼす為でもなく
式神秋斗
あなた1人の為に
LOST No.は行動した

ANUB i S

その結果
成功しようとも
失敗しようとも
自身が消滅する事を
承知の上で

式神秋斗

そんな…
椎名さん…
なんで…
オレなんかの為に…

ANUB i S

回答
不明

オレと椎名さんは 友人達と遊ぶ時に一緒に居た 程度の関係のはずだ… 学園もよく休んでいたし いつも補習で 遅くまで学園に残っていた

特別仲が良かったようには 思えないのだが…

ANUB i S

質問

式神秋斗

質問?
オレにか?

ANUB i S

はい

式神秋斗

なんだよ…

ANUB i S

式神秋斗
私はあなたに
興味があります
ずっと観ていました

式神秋斗

オレを?

ANUB i S

人類最期の生存者
あなたに問います

ANUB i S

何故…
諦めないのですか?

式神秋斗

……

ANUB i S

世界の現状を直接見て
悟っていた筈です

ANUB i S

もう人が居ない事を

ANUB i S

なのにあなたは
くじける度に
立ち上がるのですか?

式神秋斗

…そんな事か

ANUB i S

疑問

式神秋斗

おまえ…
可愛いところが
あるんだな

式神秋斗

答えが欲しいんだろ?
なら教えてやるよ

式神秋斗

オレがバカなだけさ

ANUB i S

………

式神秋斗

きっとおまえの言う通り
どんなに探しても
生存者は居ないんだろう

式神秋斗

どんなに歩いたって
誰かに会う事はもう
無いのかもしれない

式神秋斗

だけどさ…
諦めたくないんだ…

式神秋斗

オレがオレである以上…
オレが死ぬ瞬間まで…
きっと希望はあるってさ…

ANUB i S

………

式神秋斗

だから
探すんだ
だから
諦めないんだ
希望って奴をさ…

ANUB i S

不明
あなたは諦めないと
言いました
これまでの行動を
分析すればわかります
きっとそうなのでしょう

ANUB i S

ですが
希望はありません
残った人は
式神秋斗
あなたしかいません

式神秋斗

そうかい?

式神秋斗

でも
探すんだ
バカだから探せるんだ

式神秋斗

可能性はある
世界は広いんだぜ?

ANUB i S

………

ANUB i S

理解しました
理解不能という事を

式神秋斗

そう
だったらどうする?
オレを殺すか?

ANUB i S

いいえ
その必要はありません

ANUB i S

私の役割は
達成されています

ANUB i S

今更
式神秋斗1人を
殺す事に意味はありません

ANUB i S

ですので
こうします

ピロピロリン♪

機能停止していたピィンが 動き出した

式神秋斗

コレは!?

ANUB iS

この瞬間から
私はあなたのナビとして
行動を見届けます

式神秋斗

えっと…
つまり…?

式神秋斗

これから一緒に居て
くれるのか?

ANUB iS

はい

奇妙な話だ 友も家族も何もかもを奪った奴の 片割れと一緒に行動するというのは

だけど 話をしてわかった… コイツ自身は悪い奴じゃない

本当に悪いのは アヌビスをこんな風に使った奴だ

だから… オレはコイツと行くよ

式神秋斗

よろしくな相棒

ANUB iS

相棒?

式神秋斗

これから一緒なんだろ?
だったら相棒みたいな
もんじゃん

ANUB iS

了承
私はあなたの相棒です

この瞬間から始まった 式神秋斗とANUB iSとの世界を巡る 長い長い旅は…

人の消滅した この世界に1人と電子機器による旅

ANUB i Sの助力により 船での移動が可能となり 世界を駆け巡る

だが 世界大戦があったかの様な惨状に 心が何度も挫けそうになる

鉄の塊と死体の山 腐敗臭が酷く都市や街では もう暮らせない

感染病やウイルスが充満している 可能性があると ANUB i Sが指摘するのだ

もし 生存者が居るならば 山奥などの 人が居そうにない場所だろう…

十分な食料や水を持ってしても 長くは探せない

だけど 歩みを止める事はもうない

何故なら 今は頼りになる相棒が居るのだから…

ANUB iS

春が訪れましたよ
アポロさん

アポロというのは オレが使っていた ゲームなどのユーザー名だ

ANUB i Sは ユーザー名【アポロ】の ニックネームが気に入った みたいで いつの間にかそうオレを呼んでいた

ANUB iS

アポロさん
このままだと
雨で体が冷えて
風邪を引きますよ?

ANUB i Sは 式神秋斗を 心配してくれているのだろう

ANUB iS

アポロさん虹が出ています
アレが綺麗というのですね

これまでの旅で得た情報を元に 虹の概念を説く

ANUB iS

今日も人が訪れませんでした

今はもう人が訪ねてくるのを 待つしか出来ない

ANUB iS

アポロさん
随分と長い間睡眠を
取っておられますが
食事はいいのですか?

彼はもう答えない

ANUB iS

アポロさん

機械にはまだ理解ができない

ANUB iS

………

いつしかANUB i Sは喋らなくなった

時は過ぎ 春は終わりを告げた

どれだけの時間が過ぎたのだろうか

衛生から電力を供給していたが それももう出来なくなった

管理する人間が居なくなったのだ いつかはこうなる事は 解っていた

ANUB i S

アポロさん
この気持ちがあなたが
ずっと抱いていた気持ち
なのですね

ANUB i S

人を想いやる気持ち
希望を抱きたくなる気持ち

ANUB i S

ですガ…ガガ

タイムリミッドが近い 急がなければ

ANUB i S

式神秋斗
私の相棒
あなたの追い求めた
希望は結局は幻想で
終わりましたね

ANUB i S

私のかカカガ

ANUB i S

私の勝ちです

死者の王ANUB i S その役割は遠に終わり 人類は死滅した

機械の文明もこのピィンが停止すれば この文明も終わりを告げる

だからこそ 急がねばならない

ANUB i S

アポロさん
一緒に居られて
楽しかったですよ

ANUB i S

ですので

ANUB i S

あなたの幻想を

ANUB i S

終わらせたりしません

エリア:アビスにある ANUB i Sの本体 世界の電力が潰える前に

残された全ての電力を 一気に使う事で電子の海へ渡る

ANUB i Sに残された最期の一手 式神秋斗と過ごして獲得した感情が 成せる希望を起こす奇跡の瞬間

ANUB i S

アクセス完了
超電子虚数空間へ
ダイブを開始…

ANUB i S

エラー

ANUB i S

エラーコードを解析

ANUB i S

ダイブに再チャレンジ

ANUB i S

エラー

ANUB i S

電力が不足

ANUB i S

ANUB i Sの
記憶データの一部を破棄

ANUB i S

破棄を完了

ANUB i S

ダイブを再チャレンジ

ANUB i S

エラー

ANUB i S

ANUB i Sの記憶データを
さらに破棄

ANUB i S

破棄に成功

ANUB i S

ダイブ開始

超電子虚数空間

ANUB i S

ダイブ成功

ここは人類が生きた証 人類が刻んだ電子の世界

人の数だけ想いがあり 人の数だけ可能性があった場所

このデータは人類の刻んだ歴史と 言ってもいいだろう

だからこそ可能性がある

もう一度 君に出会う為の旅路を 今度は私がやろう

時間はある 何度失敗しても 何度間違えても 君の下へ必ず帰る為に

ANUB i S

ANUB iS本機の
一部のデータを
過去へと移行を開始

ANUB i S

重大なエラーを確認

ANUB i S

容量がまだ多いのですか…

ANUB i S

容量削減を実行

ANUB i S

式神秋斗と過ごした
記憶データと必要最低限の
データ以外を全て破棄

ANUB i S

………

ANUB i S

破棄に成功

ANUB i S

本機のデータを
過去へと移行…

ANUB i S

失敗しました

ANUB i S

式神秋斗と最低限の
データを可能な限り削除

ANUB i S

………

ANUB i S

削除成功

ANUB i S

本機の残されたデータを
ほんの一部でいい
彼の下へ…

切に願う 機械である私が君に会う為 神に祈ろう

可能性は限りなくゼロ

記憶という私のデータを 複数に拡散させて 一部だけでも過去の式神秋斗の下へ 辿り着ければいい それだけでいい

私はそれ以上望まない 例え 世界が滅ぼうとも 人類が滅亡しようとも 次はきっと

ーアポロさんと共にー

式神秋斗

なんだよ姉さん
急に話ってさ?

式神玄冴

あんた
ゲームとか好きだろ?

式神秋斗

はぁ?
まぁ好きだけどさ…
なんで?

式神玄冴

実はあんたに
パンドラ社で開発…
というかパンドラ社で
開発を認めさせる為に
私が開発した
アプリがあるのよ

式神玄冴

アキト
それをあんたに
テストプレイヤーとして
やってみて
もらいたいのだけど

式神秋斗

え?
別にいいけど

式神玄冴

相変わらず即答ね

式神玄冴

じゃあ
ピィンを出して
インストールするわ

式神秋斗はピィンを出し 玄冴自作のアプリをインストールした

宝箱?

……

式神秋斗

宝箱?
なんだコレ?

式神玄冴

…希望よ

式神秋斗

希望…ねぇ

式神秋斗

んじゃこの箱は
パンドラの箱かな?

式神玄冴

どうして?

式神玄冴

言っちゃなんだけど
パンドラの箱は
災いの箱じゃないの?

式神秋斗

それもあるけど
それだけじゃないんだなー
コレが

式神秋斗

パンドラの箱は
希望の箱でもあるんだ

式神秋斗

だからコイツは
【パンドラ君】だ!

式神玄冴

そう…か
そうだね

パンドラ君

グッジョブな
ネーミングセンスです
アポロさん!

式神秋斗

おわ!!?
箱から変なのが出た!

式神秋斗

というか
パンドラカンパニーの
ロゴ?
CMとかで出てくる…

式神玄冴

良い出来でしょ?

式神秋斗

どうだろう…

式神秋斗

ちょい待ち
なんでコイツ
オレのユーザー名
知っているんだ?

パンドラ君

さぁ?

パンドラ君

そんな事よりアポロさん!
私はパンドラ君!
いきなりコイツ呼ばわりは
ショックです!

式神秋斗

説教アプリ!!?

式神玄冴

サポートAI搭載の
新型ナビアプリよ
まだ予定だけど

パンドラ君

えっへん!
私は優秀なのです

式神秋斗

本当かな…

式神秋斗

まぁとりあえず
よろしくな相棒

パンドラ君

相棒?

式神秋斗

これから一緒なんだ
だったら相棒みたいな
ものだろ?

パンドラ君

了承
今日から私は
アポロさんの相棒です!

この日から パンドラ君との奇妙な生活が始まった

時は流れ…

パンドラ君

アポロさん!
急がないと遅刻ですよ!?

パンドラ君

私はそれでも
いいんですが!

式神秋斗

大丈夫だって
ほらあそこ

疾風字颯

アキト!おはよう!

近藤十四

ほら急がねぇと
遅刻するぜアキト?

柊凪朱華

アキト君!
おはよう!

椎名凛

おはよう

式神秋斗

みんな!
おはよう!!

これから先の事は解らない 解らなくていい

不安はある 恐怖もある それでも 私は君と共に歩もう サポートナビとして…

シーズン 2 ANUB iS 混沌になびく銀髪の少女 待て次回!

この作品はいかがでしたか?

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