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荻原 蒼介

うわ最悪……

荻原 蒼介

学校の帰りめっちゃ泣いたから目腫れてるし…

荻原 蒼介

…はぁ

荻原 蒼介

バイト行こ……

荻原 蒼介

(なんだかバイトも久しぶりな気がするなぁ)

荻原 蒼介

(美樹さんに話聞いてもらおっかな)

荻原 蒼介

あれ……

店長

お疲れ

荻原 蒼介

お疲れ様です!

荻原 蒼介

あの……なんで店長が……

店長

話は後だぞ。お客さんいるんだから

荻原 蒼介

すみません!

店長

あれ、もう客ゼロになっちゃった

「本格的に潰れるのか?」と店長はブツブツと小言を言っていた。

荻原 蒼介

あの、もう一度伺いますが…

店長

あー…矢野のことか?

荻原 蒼介

(矢野……?)

荻原 蒼介

美樹…さんのことですか?

店長

あ……

店長

うんうん!そうそう!

荻原 蒼介

(……苗字、が和樹先輩と一緒なんだ)

荻原 蒼介

(そ、それより!)

荻原 蒼介

なんで今日はいないんですか?休みですか?

店長

荻原は聞いてないのか

荻原 蒼介

は、はい……?

店長

辞めたんだよ

荻原 蒼介

えっ

店長

2週間前だったかなー?

店長

その時に言ってきて…

荻原 蒼介

(結構昔…)

荻原 蒼介

(そんな前から決めてたの?僕に何も言わず…?)

荻原 蒼介

そ、そうですか

荻原 蒼介

(美樹さんの電話番号…は、蒼の姿でも聞けないんだった)

荻原 蒼介

(水族館の時は「次会った時」っていってたけど、結局次なんて無かったな)

荻原 蒼介

(……なんか、また泣きそう)

荻原 蒼介

(僕、涙腺緩いのかな)

荻原 蒼介

(今は無になって仕事しよ……)

荻原 蒼介

……

荻原 蒼介

(この道もいつも美樹さんと歩いてたからなんだか寂しいな)

荻原 蒼介

(蒼の姿でも、元の姿でも和樹先輩には避けられてるし)

荻原 蒼介

(それだけじゃなくて、美樹さんまでいなくなっちゃった)

荻原 蒼介

……

荻原 蒼介

(なんで急にボロボロって簡単に崩れていっちゃうんだろう)

 その時、ポタッポタッと雨が降り始めた。

荻原 蒼介

最悪……

その雨はどんどん強くなって大きな粒へと変わっていった。

荻原 蒼介

…………

荻原 蒼介

……

美樹

……荻原?

荻原 蒼介

……!

蒼介は振り返った。

そこには傘をさして、目を丸くしている美樹が立っていた。

美樹

(なんでこいつ、傘さしてねーんだよ……)

美樹

(天気予報見てないのか?)

荻原 蒼介

美樹、さん……

荻原 蒼介

なんで、急にいなくなっちゃうんですか!!!

美樹

えっ!?

荻原 蒼介

バイト!僕に何も言わずやめるなんて酷いです!

美樹

……と、とにかく!荻原!傘入って

美樹は蒼介に近づいて自分の傘に蒼介を入れた。

荻原 蒼介

……

美樹

ビショビショじゃん

荻原 蒼介

すみません……

美樹

私の家、ここから近いから行こ

荻原 蒼介

……えっ

美樹

(俺の家は蒼介には知られてないから大丈夫だろ)

美樹

(俺、蒼介に今日、部活の時に酷いこと言ったもんな)

美樹

(ほんとどうにかしてた、俺…)

美樹

荻原?どうしたの?

荻原 蒼介

え……いや

荻原 蒼介

なんでも、ない、です

美樹

じゃあ玄関で待ってて

美樹

タオルとか持ってくるから

荻原 蒼介

は、はい……

美樹は急いで部屋の奥へと行ってしまった。

荻原 蒼介

(あれ、なんで)

荻原 蒼介

(なんで?おかしい)

荻原 蒼介

(ここは、和樹先輩の家じゃん)

荻原 蒼介

(僕が蒼の時に来てるから知ってる)

荻原 蒼介

(なんで…?)

荻原 蒼介

(聞きたいけど、聞けない……)

美樹

おまたせ

荻原 蒼介

あ……

美樹

ほら、タオル

美樹からタオルを貰い、体を拭いた。

荻原 蒼介

(……あ。)

荻原 蒼介

(いや、何動揺してんだ僕)

荻原 蒼介

(兄妹だ)

荻原 蒼介

(店長だって美樹さんの苗字が矢野だって言ってた)

荻原 蒼介

(そっか。2人は兄妹なんだ)

荻原 蒼介

(僕がたまに美樹さんと和樹先輩を重ねたのも、それだからか……)

美樹

あ、風呂入る?

荻原 蒼介

い!いやいや!大丈夫です!!

荻原 蒼介

(兄妹だとしたら、今この家に和樹先輩がいるかもってことでしょ!?)

美樹

そっか

美樹

風邪は引かないようにね

美樹

ほら、傘

荻原 蒼介

ありがとうございます

美樹

…うん

美樹

えーと、バイト何も言わずに辞めたのはごめんね

美樹

少し前からやめようとは思ってたんだけど……

美樹

(伊織が来てから……)

荻原 蒼介

そうなんですね

荻原 蒼介

僕もいきなり怒ってすみません

美樹

全然!

美樹

またコンビニ行くね

荻原 蒼介

はい。ありがとうございました

荻原 蒼介

……今まで、本当に

蒼介は頭を下げた。

美樹

私こそ!ありがとう

美樹

(そして、ごめん。蒼介)

荻原 蒼介

それでは、失礼しました……

荻原 蒼介

……

荻原 蒼介

(そういえば、和樹先輩も妹がいるとか何とか言ってたな……)

「俺にも一つ下の妹がいて__」

荻原 蒼介

(え、いや、ちょっと待って)

蒼介は歩みを止めた。

サッと血の気が引いてく感覚がした。

荻原 蒼介

(『1つ下』の妹…?)

荻原 蒼介

(美樹さんは高二だよね……?)

荻原 蒼介

(蒼の姿でそう聞いたことがある)

荻原 蒼介

(和樹先輩も高二のはず……)

荻原 蒼介

(なんで?)

荻原 蒼介

(こんなに、意味がわからないことになってるの)

荻原 蒼介

(あーもう頭がパンクしそうだ)

荻原 蒼介

(女装して、蒼の姿で聞き出せれば早いんだけど__)

荻原 蒼介

…………

荻原 蒼介

……あ

荻原 蒼介

「女装」___

フッと頭の中に有り得ないことが浮かび上がった。

和樹先輩と美樹さんは同じ人物だとしたら?

荻原 蒼介

いやっ

荻原 蒼介

ないだろ

荻原 蒼介

ないないない

荻原 蒼介

僕が女装しすぎて考えすぎなだけ!

荻原 蒼介

そう、考えすぎなだけだ……

女装してごめんなさい

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