一週間と一生

午前4時15分~4時45分 ランニング(約5km)

ｶﾞｼｯ(深夜の右腕引っ張る )

私が覚えていること① バレーボール 4歳のとき幼馴染と始めてずっと続けている その幼馴染の名は柊京慈 …そう、私が唯一覚えている家族以外の人

ここで気づく人もいるだろう 一週間で記憶がリセットされるからと言って何もかも忘れてしまう訳では無い

自分の名前、生年月日等 変わらない事は覚えている 家族は勿論、自分の歳は 毎年変わるから覚えるのは結構キツい 日付けはホントに分からない

そして、 私が覚えていること② 幼馴染・柊 京慈 もう十数年彼と一緒にいる

親同士が高校からの友達で家も隣同士だったから 私が生まれてけい君と 出会うまで長くは かからなかった

今はマンションで一人暮らしをしているが、けい君は 私の住んでいる号室の隣に住んでいる

私が一人暮らしを することにしたとき、 けい君が私を支えると 言ってくれたから…

午前5時00分 リビング

ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ(ノートをめくる)

私は毎日日記をつけている 一週間で記憶がリセット されてしまうから 勉強とか学校や家のこと とか、忘れないように毎日 絶対に

月曜はノートの日 この日に記憶がリセット されるから、今まで書いた日記を読んで必要なことを確認したり覚えたりする ・・・・・・・・・・・ 今まで書いた日記全てを ・・・・・・・ 毎週読んでいる

父と母、希のことは覚えていても3人とのことは 思い出せない 思い出が 分からない

けい君のこともそう 家族と同じくらい大切な人だって分かってる でもけい君と何をして何を話したのか覚えていない 悔しい、どうしようもないくらい悔しい

だから、せめて、 誰かとしたことを 知りたい 1週間だけでも｢覚えて｣ いなくても｢知って｣いたい ｢知った｣ことを｢覚えて｣いたい

ｽﾀｽﾀ(キッチンへ)

memo 朝食 ・トースト ・目玉焼き ・サラダ 冷蔵庫 ・ヨーグルト ・毎朝トマトジュースを 飲む

ｼﾞｨｯ…(メモを見つめる)

午前6時00分 マンション前

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ、ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ…

現在、高校2年生 でも、学校へ行く道が 覚えられない だからけい君が毎日学校へ連れていってくれる そして帰りも一緒に 帰っている

電車の中ではけい君と はぐれないよう、いつも けい君の制服の裾を 握りながら音楽を 聴いている

覚えている歌なんて ないけれど、人がいっぱいの電車の中で落ち着く為に聴いてる

普通なら毎朝の電車通学で電車内が見覚えのある 人たちへと変わって いくのだろう

私にはそれが分からない だから月曜の朝は特に 不安になる でもいつも電車に入って 立とうが席に座ろうが 必ずけい君が目の前に いてくれる 安心して乗っていられる

けい君は 私のヒーローだ

ｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝｶﾞﾀﾝｺﾞﾄﾝ……

午前7時10分 ―学校到着―

ﾀｯﾀｯﾀｯ……