『彼氏失格。』

雨の降る、朝だった。

俺は、いつも通り早起きして動画を撮って。

編集をしながら朝食を食べてた。

特に変わったことなど何も起こらず、今日を終えるはずだった。

…それなのに。

俺のもとに、とある人物から電話がかかってきた。

事故…？

ころんが？

さっきって、いつだよ。

俺が、呑気にご飯食べて編集してた時？

それとも、俺が笑いながらゲームしてた時？

嘘だろ。冗談だろ。

だって、昨日までころんはあんなに元気だったし。

ころんにそんなこと起こるわけない。

まだ頭の中が整理出来てないくせに、冷静ぶって聞く。

事実を受け入れてしまったら、泣きそうになる気がした。

俺は、どうしたいんだろう。

ころんの彼氏でいたいのか。

それとも、すとぷりであるころんを支えたいのか。

どれだけ考えようとしても、頭は真っ白だった。

だって、ころんが事故にあったという事実でさえ受け入れ難いのに。

いきなり決断を迫られても、答えを出せるわけが無い。

違うよ、なーくん。

なーくんのおかげで、俺たちはここまで来れたんだ。

だから、俺は…

嘘ばっかり。

本当は、怖くてたまらないのに。

今にも泣き叫びたいのに。

震える声を押し殺して、笑った。

電話を切った途端、俺はどうしようも無い不安に駆られた。

あんなことを言ったけれど、本当にころんは大丈夫なのか？

今も、ころんは一人で苦しんでいるのか？

ころんは、見舞いにも来ない俺の事を、どう思うだろうか。

考え出すと止まらなくて、涙が溢れた。

ー数日後ー

あれから、俺は毎日投稿を続けている。

初めの方は元気がないと心配されたりしていたが、今はそんなことも無くなった。

ちなみに、ころんは一昨日目を覚まして、話せる様にもなったらしい。

あとは、怪我の回復を待つだけだそうだ。

本当は、ころんに会いたい。

たくさん謝りたいことがある。

たくさん言わなきゃいけないことがある。

でも、俺はこうすることを自分で選んだのだから。

どれだけ会いたくても、我慢する他なかった。

ガラガラガラッ

ころんが事故にあって、二週間は過ぎた。

俺は、毎日ころんのことを思い出しては不安になる。

…ころんは、俺に怒ってないだろうか。

一度も顔を見せない俺を、まだ好きだと言ってくれるのだろうか。

俺が今やっていることは、本当に正しかったのか。

分からなくて、ころんに会いたくて、でも不安で。

そんな時、あの日のように電話がかかってきた。

ピーンポーン

やっぱり、ころんは俺の可愛い彼女です。

ーENDー