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いつだっただろう。 もう随分と昔のように思えるけれど、 私と彼の出会いは五年以上前… だった気がする。
私
にこりと笑ってみせる彼はとても楽しそうに「そうですね」と言う。
私はもうすっかり冷めてしまったコーヒーの中に映された自分自身をぼんやりと見つめたまま盛大に溜息をついた。
私以外の沢山の女に見せるこの笑顔が心底嫌いで。
純粋無垢に笑う彼の顔をまともに見る事なんてもう出来なくなってしまった。
정국
次に続く言葉はなんだろう。
정국
あぁ、思った通りだ。
先程まで屈託のない眩しい笑顔だった彼が今度は申し訳なさそうに笑って見せた。
こんな顔をさせてしまうなんて。
本当は、そんなつもりじゃないのに。
私
心の中では分かっているはずなのに、素直に喜べない私がいる。
それでも口からは、用意していたかのような嘘がするりとこぼれ落ちた。
もう、嬉しいのか悲しいのか悔しいのか正直分からなくなっているのかもしれない。
自分でも分かるくらい笑えていない顔が映るコーヒーの表面を飲み干す。
カップを持つその手は僅かばかり震えている気がする。
정국
他人行儀に敬語を話し続ける彼が、いつにも増して緊張した声音で私を呼んだ。
返事もしないまま顔だけ彼に向ければ、目尻いっぱいに雫を溜める彼が私の目に飛び込んできた。
状況を呑み込めず石像の如く固まる私だったが目の前の彼の姿にやっと頭の中は焦り始める。
정국
정국
彼が色々な事を考えていた五年間。
私はきっと不満ばかりを溜め込んでいたと思う。
あぁ、きっともう彼だって気づいていたのかな。
정국
分かっていたのに。
ずっと前から自分だってこうしたかったはずなのに。
どうして今になって楽しかった思い出が、愛おしい彼との記憶だけが蘇ってくるんだろう。
こんなの…
私
私
私
最後はきっとこんなもの。
最初から分かっていたでしょう?
熱くなる目頭。あっという間にぼやけてしまった視界。
もう彼がどんな表情をしているかなんて見えていないけれど、きっと私と同じように泣いているのだろう。
정국
震える彼の声が、 最後に私の名前を呼んだ。
ずっと大好きだった声は、多分もう二度と私の名前を口にすることはない。
負けじと彼の名前を呼べば、恥ずかしそうに笑う彼の声が鼓膜に優しく響いた。