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主
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ー城の図書室ー
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T地区で作られたいむくんみたいな人は、ごく一部の人しか知らない。 事実、僕も知らなかったわけだし、そう簡単に見つかる筈がない。 何を捜しているかというと、いむくんの無意識状態をとく キーワードに関する資料だ。
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ふぅ、と溜め息をついて、もう一度作業に取り掛かる。 …この図書室の蔵書は十万冊。 片っ端から見ていく方法で探しているけど、 そう簡単に見つかる訳がないんだよなぁ。
でも、まだ希望はある。 ないちゃんが今やっている、キーワード検索だ。 「T地区」や「unconscious」などの言葉だけで、 書籍が検索できるというとても優秀な機能。
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彼此一時間くらい、「ちょっと待って」るわ。 そう言いたいけど、ないちゃんも頑張ってるわけだし、 無論そんなこと言えない。
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それから、さらに三十分ほどして。
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ないちゃんが大声を上げた。 僕はあわてて彼の方へ向かう。 パソコンで調べてるらしいが、その画面には、 たしかにそれらしい本が映されていた。
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本の題名を覚えて、その本を見つけ出す。 こんなに近くにあったのに、気づかなかったなんて…。 そう思いつつ、その本を引っ張って、机の上に出す。
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パラッと、一ページだけめくる。 …げっ
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まろちゃんは今、犯人へ色々と聞いてるところだ。 まろちゃんもないちゃんもすごくって、僕は役に立ててないようで悲しい。 …でも、いむくんを助けたいって気持ちはたしかにあるから、 言われれば何でもやるつもりだ。
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ーいふの部屋ー
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いむくんのこと見てて、って言われてもなぁ。 unconsciousだから特に何もないだろうし…。 まぁええか、他にできることないし。 そう思った僕は、壁に横たわっているいむくんのとなりに腰かけた。
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…ん～…無意識状態をとくパスワード、か。 全然見当もつかないけど、とりあえず色々話しかけて見よう。
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「好き」は、どうだろ…？
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そもそも『いむくん』って入っている時点で、 名付けたのはないちゃんたちなんだから違うってわかるけど。
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色々試してみたけれど、何も答えてくれない。 まぁ当たり前なんだけど、やっぱりずっとやってると悲しくなる。 と、その時、
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僕であったら嬉しい、とは思う。 でも、それを確認する術はない。
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まろちゃんはそこで言いよどんだ。 いっていいのか迷っているらしい。 けれどすぐにないちゃんと視線を合わせてうなずいて、 僕に言ってきた。
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そりゃそうだったら嬉しいけれど。 話しかけても反応はないし、第一僕は少し前に、 「友達として好きだよ」 と言われたばかりだ。 もちろん、友達として大事っていう可能性も無きにしも非ず。 でも、友達か家族か、と言えば家族だろうと思う。
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まろちゃんは、またないちゃんと視線を合わせた。 まろちゃんがあごをくいっと動かす。 何かを言え、ってことなんかな
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…だけど、言葉はわからない。 いくつか大事そうに思える言葉を言ってみたけれど、 それでも目は覚めなかった。
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どうにかヒントがないか、昔のことをよく知る彼らに聞いてみる。
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「今」 と言っても、目覚めなければそれはない。
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キーワードにずっと近づけて嬉しい。 その気持ちも、もちろんあるけれど。 僕が知らないいむくんを知っていることが、 何だか嫌…。 今はそんなこと、考えてる場合とちゃうんやけど。
それにしても、いむくんが喜びそうな言葉、か…。 改めて探すと、やっぱり言葉って多い。 多すぎる、ともいえる。 …いむくん、どんな時に喜ぶかな。 どんな言葉で喜ぶかな。 …僕は、何も知らない。
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いむくんが喜ぶ言葉？ 僕がいむくんの大切な人だったとすれば。 僕が彼に伝えたい言葉、ってこと…？ そうすると…、 ……もしかして。
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愛してる
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淡い水色の瞳が開く。 まぶしそうに目を細めて、こちらを向いた彼。
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いつもと変わらない、ふわっとした笑顔を浮かべる彼。 …戻って来た、大好きな人…！！
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戸惑ってるところすら愛おしい。 「友達として好き」 そう言われたけれど、今なら伝えられる、気がする。 …ううん、伝えたい。
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何ですかその上目遣い。 これで「無理」とか言える男がいたら連れて来い、 軽く五時間は説教できる。
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愛してるよ
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主
主
主
コメント
1件
まじで最高でした！フォロー失礼します！
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